●第一話 布団をめくれば
思いつく限りの薬草を調合し、途中でコンビニに何度も買い出しに行き、気づけば二十本くらいのポーションを作っていた。そこまで必要なものでもないが、久々に充実した時間だった。ハーブや紅茶でポーションを作るのもいいよね! あと、カレー味も試してみたい。思わぬところで、新しい趣味ができてしまった。
「うお、もう朝か。徹夜してしまった……」
こんなに熱中して何かに没頭したのは、小学校の頃に人気ゲームを始めてやったとき以来だ。
ただ、さすがに疲れた。
「寝るか……くぁ」
大あくびをしながら寝室兼リビングの自室に向かい、布団をはぐって、中に足を入れる。
むにゅっとした。
「んん? んんん?」
何があるのだろう? そんなもの、布団に入れたか?
明かりを付けて布団をめくって見てみたら、裸の女の子が眠っている。
「うおわっ!?」
死ぬほどビビった。
「んんー? ああ、久々津さん、お帰りなさい」
金髪の少女がむくりと起き上がり、微笑んだ。
見覚えがある。
「リリ? な、なななな、なんでここに」
「ああ、私、他に知り合いがいませんし、命の恩人であるあなたにはいろいろとお礼をしてあげなきゃと思って」
それで布団に? え? 食って良いの?
「あ、私、裸でしたね。ごめんなさい」
彼女がパチンと指を鳴らすと、Tシャツとホットパンツ姿にあっという間に変身してしまった。
なるほど、魔術か何かはしらんが、食って良い状況ではなかったらしい。危ないな!
そういう罠はやめて!
「でも、なかなか久々津さんが帰ってこなくて、場所を間違えたかと思って不安でした。良かった」
「そう。まぁ、ああいう状況なら誰だって助けるだろうし、そんなにお礼とか、気にしなくて良いよ」
「いいえ、かつてあの大広間に何人も人が訪れましたが、助けようとしてくれたのはほんのわずか。そして本当に助け出してくれたのはあなたが初めてです」
「そう。それで、リリは、……これからどうするつもり?」
「あの広間にいた前の記憶がないので、しばらくあなたのおそばにいさせてもらえればと。恩返しもまだですし」
「いや、おそばって、ここに住むつもり?!」
「……いけませんか?」
困った顔をされるとちょっと心苦しい。
「いけないってことはないんだけども」
いや、まずかろう。彼女の住むアパートを探してやらねば。でも、家賃、どうするかなぁ。
「久々津! 大丈夫!? あっ」
いきなり部屋に晶が飛び込んできたが、リリを見て硬直する。
「晶? どうしてここに」
「連絡入れても、既読が付かないし、倒れてるのかと思って様子を見に来たんだけど、へぇー、女を連れ込んで遊んでいるとはね」
「いや、今さっきリリがいるのに気づいただけで、何もしてないよ?」
「別に私にそんな焦って言い訳しなくていいんだけど。タダのパーティーメンバーだし」
「久々津さんが言ってることは本当ですよ。私は昨日ここに来ましたけど、彼がなかなか戻ってきてくれなくて。退屈で寝てしまいました」
「は? あなたね、ほぼ初対面の人の家を訪れていきなりそこで寝る? 普通」
「いやー、あはは……他に行くところがないもので」
「じゃあ、私のマンションに泊めてあげるわよ。ここはやめなさい。狭いし、部屋が一つしかないじゃない」
「本当ですか! ありがとうございます。あなた方には助けて頂いた上に、泊まる場所まで面倒を見て頂いて、感謝の念に堪えません。何か私にして欲しいことがあれば、遠慮無く言ってくださいね。あ、冒険者なら、一緒にダンジョンに潜るっていうのはどうでしょうか。私は魔術が使えますから」
「ふうん、あなた、魔術が使えるんだ」
「はい。電撃や精神魔法は得意です」
「精神魔法?」
「眠らせたり、魅了ですね」
「そう。でも、コイツや私に魅了を使ったら、即メンバーから外してギルドに突き出すから、そこだけは忘れないで」
「もちろんです。恩人のあなた方にそんなことはしません」
「恩人ねぇ」
「いいじゃないか。こうしてリリも感謝してくれてるんだし」
「久々津ってホントに女の子には甘いわね」
「ええ? そうかなぁ。あ、そうだ、ところで二人とも、喉は渇いてないか? ポーションを試飲してみてくれ。僕の自信作だ」
「わあ、是非!」
「別に良いけど、その瞳、結局毒消しは効果なかったみたいね」
「ああ。ま、【鑑定】が使えるようになったし、冒険では役に立つからしばらくこのままが良いと思ってるよ」
「【鑑定】が? 便利そうね」




