根性で新部活設立!
「ハァ……? 根性部?」
生徒会長の玉国くんが鼻で笑った。
生徒会室に四人揃って赴き、新部活設立の申請をしたのだが、どうやらあたしたち、相手にされてもない……。
生徒会長がイガグリ頭を撫でながら、面倒くさそうに聞く。
「……それは、どんなことをする部活なんですかぁ?」
「根性です」
コンジョーくんが張り切って答えた。
「根性を磨き、根性を鍛え、根性を駆使して根性根性根性! です」
「意味がわからないな……」
あたしが代わって答えた。
「腹筋を鍛える部活です!」
「……それならもうボディービルディング部があるよ」
梓ちゃんが前へ出て、説明してくれた。
「えっと……。そんなことをしながらぁ……、お茶とか飲みつつぅ……、お菓子を食べてぇ……」
「やっぱりそういうふざけた話だったか」
「昭和の時代の根性論とか、今はバカにされてますけど、今の時代にこそ根性って必要なんじゃないかなって思うんです」
三人で「おおっ!?」と頼もしく発言者を見ると、柏木くんだった。
凛々しくも爽やかな笑顔を浮かべ、生徒会長にプレゼン? みたいな感じで発言する。
「いわば精神と肉体を鍛え、日本の未来のために、明るい明日を築いていけるような人間を育成する──そんな部活です」
生徒会長がまた鼻で笑った。
そして正論を言った。
「武術系の部活とか、大抵そうだよね?」
「そうですね。しかも活動内容が具体的だ……」
あっさりうなずきながら、でも柏木くんは負けてなかった。
「ですが……、ここにいる段田紺青くんは、そのどれも武術は嗜んでいませんが、根性のスペシャリストなんです。根性でなんでも出来てしまうんです。根性部ではそんな彼を主将として、根性をひたすら磨くことを主旨とします」
「よくわからん」
玉国くんはあくびをすると、また面倒くさそうに言った。
「申請したいなら、まず部室の確保ね。あと顧問が必要」
生徒会室を出るなり、難しい顔をしてコンジョーくんが呟いた。
「……なぜ部活を新しく作るのに肛門が必要なんだ」
あたしは教えてあげた。
「顧問だよ、顧問の先生。肛門はうんこの出るところ」
「やっぱり無理じゃない?」
梓ちゃんは早々に諦めた口調だった。
「こんなわけのわからない部活の顧問になってくれる先生なんていないよ」
「いや! ダメ元でお願いしてみよう」
柏木くんが張り切ってる。
「朝日奈さんとコンジョーの愛の巣を作るため、頑張るんだ!」
なんか設立したい理由が変わってた。
「根性部……?」
数学の先生がどこの部活の顧問もやってないとこのことで、お願いしてみたのだが、やっぱり鼻で笑われた。
「おいおい……。『根性があればなんでも出来る』って、まじめに言ってるの? そんなの昭和の時代の迷信だよ。先生だって平成生まれなんだぞ?」
他の先生にもあたってみた。
でもみんなに鼻で笑われた。
昭和生まれの体育の先生にまで笑われた。
「やっぱり無理じゃない? 考えてみたら確かに何をする部活なのかも、私にさえさっぱりわかんないしさ」
帰り道、梓ちゃんがそう言うのを聞きながら、あたしもうっかり「そうだよねぇ」と言いそうになった。
言い出しっぺはあたしなんだから、あたしが諦めてどうするんだか──
うなだれて歩いてると、幼稚園児ぐらいの女の子が、なんだか空を見上げて悲しそうな顔をしているのを見つけた。
コンジョーくんがあたしに聞く。
「あれは……何をしているんだろう」
あたしは答えた。
「なんだろ……? コンジョーくん、聞いてみたら?」
「えっと……俺は……」
コンジョーくんがなんだか恥ずかしそうにうつむいてる。
なんだコレ? と思ってると、柏木くんが教えてくれた。
「コンジョーは人見知りなんだ。オレが聞いてくるよ」
そして女の子のところへ歩いていく。
「どうしたの? 何かあった?」
「ふうせんが……っ」
女の子がべそをかいてる顔で振り向いた。
「とんでっちゃったの……っ!」
見上げると、公園のおおきな木の上、その枝にピンク色の風船がひっかかっていた。
あたしは手を挙げた。
「大丈夫! あたしが取ってあげるよっ」
「朝日奈ちゃんが?」
びっくりした顔で柏木くんに見られた。
「ここはコンジョーが……いや、そうか……」
コンジョーくんを見ると恥ずかしそうにもじもじしている。
幼稚園児の女の子相手にも人見知りするようだ。
「コンジョーは大切なひとのためじゃないと根性を発揮しないからな……」
柏木くんがため息を吐く。
「木登りは得意なんだよっ。猫系の女子高生だから」
にこっと笑ってから、あたしは早速木に飛びついた。
「大丈夫! 下からスカートの中見られても、ハーパン穿いてます!」




