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男子は根性 〜 根性があればなんでもできてしまう男の恋物語 〜  作者: しいな ここみ
男は根性! 女は◯◯! の巻

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33/33

新入部員!

「じゃ、辞めます」


 あっさりそう言って、入部したばかりの子が去っていった。……まただ。


 根性部に入部希望してくれる生徒は多い。

 副部長のあたしが、あの大食い大会で根性を見せて頑張ったからだ──と、いうわけではないらしい。


 はっきり言って、男子は梓ちゃん、女子は柏木くん目当てだろう。

 学校のアイドルが二人揃っているのだ。一緒に部活したいと思って入部してくるひとが後を絶たない。


 しかし、そして、みんなすぐに辞めていく。


 はっきり言って、入部テストが厳しすぎる。




「根性があれば何でもできるということを体現してみせてほしい」

 柏木くんが入部希望者に言った。

「この扉を開けてみせてくれ」


 そう言って示す引き戸には、鍵がかかっている。

 ハハハ……と、五人集まった希望者さんたちが笑う。


「冗談ですかね?」

「人間の力で開くわけが──」


「くおおぉぉ! 根性オォォ!!」

 突然、大声をあげたのは、梓ちゃんだ。

「やだやだやだ!! かわいい私が焼け死んじゃう!!」


 どんなイメージで根性メーターを振り切ったのか知らないけど、梓ちゃんが両手をかけると、ガッチリと鍵のかかっていた引き戸がスパーン! と開いた。


「に、人間じゃねぇ!」

「できるわけねーよ!」

「神崎さん、バケモノだったのか!」


 希望者たちはかわいいクモの子みたいに、バラバラの方向へ逃げていった。




 コンジョーくんが入部希望者さんたちに囲まれて、あうあう言ってる。


「そんなに言うなら見せてくださいよ」

「根性があれば何でもできるんですよね?」


「あうあうあう……」


 どうやら根性がどれほど素晴らしいものであるかをみんなに説いたあとらしい。

 人見知りのコンジョーくんがよく頑張ってた。

「根性とはッ! 人間が限界を超えるための力だッ!」とか語るのが聞こえてた。

 緊張のあまりに目をかっぴらいて、声を裏返しながら熱弁してた。

 でも「じゃあ、実演してみせて」と言われて、困り果ててるようだ。

 だってコンジョーくんは誰か大切なひとのためにじゃないと根性が発揮できず、根性を発揮しない彼は、むしろ何もできないダメ人間だから。


「な……、何にもできない!」

 頭を抱えて、コンジョーくんが苦しんでる。

「お、俺は! なんてダメなやつなんだーーっ!!」


 興醒めしたように、みんな出ていってしまった。




「コンジョーくんはなんにもできなくないよ」

 頭を抱えて床にうずくまる彼の背中を撫でて、あたしは声をかけた。

「大丈夫、あたしが知ってるから。コンジョーくんの素晴らしさは」


「あ……、あのっ……」


 蚊の鳴くような声がして、振り向くと、扉の隙間から顔を覗かせて、気弱そうな男の子がこっちを見ていた。


「あっ。入部希望者ですか?」


 あたしが聞くと──


「そのっ……」

 彼はとても小さな声で、恥ずかしそうに、もじもじしながら、でもたくさん喋りはじめた。

「よ、ようやく気づいてくれた……。さっきから何度も声、かけてたんですけど……。ぼ、ぼく……。一年の今生梨こんじょうなしはじめっていいます。ぼく、気になる女子がいるんですけど……。でも、根性なしなもんだから、なかなか告白することができなくて……。こちらの部長さんはヘタレなのに根性で告白してオッケーもらえたと聞いて、その……。こちらの部員になったら、ぼくでも勇気を出して彼女に告白することができるかと思って……。でも……」


「ああっ! そのウジウジした喋り方やめて!」

 梓ちゃんが耳をおさえて暴れだした。

「男でしょーが! ハキハキ喋れ!」


「……」

 聞こえなかったけど口の動きから察するに「すみません」と言ったらしい今生梨くんの背中に回り込むと、あたしは手で押した。


「まぁ中に入りなよっ! 話、聞いてあげよう」


「て……、天使猫先輩」

 すすり泣くような声で今生梨くんが言った。

「ありがとうございます」


「じゃあ入部テストをしようか」

 ノリノリに嬉しそうな笑顔で柏木くんが言う。


「待って、柏木くん」

 あたしが止めた。

「厳しすぎる入部テストはもうやめようよ。あれは誰もクリアできない」


「だ……、段田先輩」

 今生梨くんはコンジョーくんの前へ行くと、恥ずかしそうに横を向いて喋りはじめた。

「ぼく、根性部に入りたいです。自力で根性をつけようと思って、昭和のスポコン漫画を色々読んでみたんですが、どうもピンとこなくて……。こちらに入部すれば、根性、つきますかねぇ?」


「うーん。どうでしょう」

 コンジョーくんは反対側の横を向いて、緊張してるのか汗を額から垂らしながら、答えた。

「根性は素晴らしいものですよ。人間を動かす原動力となり、潜在能力を開花させます。でも……どうでしょう。俺ってその、君の言う通りのヘタレだから……。ダメなやつだから……。そんなダメな俺の言うことなんて信じちゃダメだと思う」


「凄い!」

 今生梨くんが目を輝かせて、コンジョーくんのつむじを見下ろした。

「段田先輩って、こんなに人見知りなのに、根性で告白して、天使猫先輩と付き合うことができあんですね!? 入ります! ぼく、根性部に、是非とも入部したいです!」


 どうやら部員が新しく一人、増えたようだ。





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― 新着の感想 ―
思わぬ形で釣り上げますねー!新入部員! そこが流石でございます! 新入部員の片想いで、新たな恋模様も広がりますねー♡(ᵔᴥᵔ)
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