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男子は根性 〜 根性があればなんでもできてしまう男の恋物語 〜  作者: しいな ここみ
根性でも背は伸びない! の巻

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30/33

根性で絶対に身長を伸ばす!

 朝、あたしは三人ぶんのお弁当を作った。


 ひとつは自分の、もうひとつはいつもの通りお母さんの──

 もうひとつはコンジョーくんのだ。初めて作った。


 本人にはまだ何も言ってないから、今日も彼は自分のお弁当を持ってくるだろう。お父さん手作りのやつだ。

 コンジョーくんはおいしそうに食べるし、量はじゅうぶんに多いんだけど、はっきりいっておかずが偏りすぎてる。

 魚肉ソーセージと肉だんご、大盛りの白ごはん、あとはせいぜい海苔かふりかけがかかってるぐらいだ。

 たんぱく質はじゅうぶんだけど、野菜がない。

 バランスよく栄養を摂らないと身長伸びないんだから!

 ゆえにあたしが作ったのは主にサラダだ。しかもカルシウムをよく含んだひじきも小松菜も、チーズも入ってる。


 彼のお父さんには悪いけど、これぐらい、いいよね?


 コンジョーくん、喜んでくれるかな──


「それじゃ行ってきまーす! お母さんのお弁当、ここ置いとくからね」


 お母さんは何も言わず、眠たそうな顔で歯磨きしながら手を振ってくれた。




「おはよ、えみ!」


 いつも通り、小さな神社の前で後ろから梓ちゃんが抱きついてきた。


「おはよー、梓ちゃん。今日も美人ですね」

えみも朝から見事にねこってるよー。あぁ……頭にねこみみのカチューシャつけたい」


 女子二人でイチャイチャしながら歩いて行くと、楽器屋さんの前でいつもならコンジョーくんと柏木くんが立ち話をしてる。

 

「あ、お二人さん、おはよう」


 開店前の楽器屋さんの前で、スマホを見ていた柏木くんが顔を上げ、手を振った。


「おはよう。あれ? コンジョーくんは?」


 あたしが聞くと──


「今日はなんだか遅くなるって。先に行っててくれって言われたんだ」


 後ろから梓ちゃんがツッコむように言った。

「じゃあこんなところで待ってないで先に行ってればいいのに。コンジョーくんがいなかったらあんたと私たち、べつに仲良しってわけじゃないんだから」


「ひどいなぁ。同じ根性部の部員じゃないか」

 柏木くんが傷ついたような笑顔で言う。


 あたしは彼をフォローした。

「そうだよ梓ちゃん。それに『苦手克服の課題』、忘れたの? 梓ちゃんはコレと仲良くならないといけないんだよ?」


 梓ちゃんはツンと横を向きながら、あたしに言った。


「フンッ! 言ったでしょ? この間、二人で買い物して、カフェ入って、30秒でパフェ食べたんだから。あれで課題クリアだわよ」


 ハハハと笑いながらあたしたちのやりとりを見ていた柏木くんが、何かに気づいた。

 それがやって来る方向を指さして、声をあげた。


「コンジョーだ!」


 朝日を背にして、「うおおぉぉ!」というセリフを頭の上に派手にくっつけながら、コンジョーくんがやって来るのが見えた。

 力強い歩き方で、でもゆっくりとやって来る。

 後ろに何かを引きずってる。

 何か、真っ赤な炎のようなものだ。彼の背中に隠れてよく見えない。


「おはよう! コンジョーくん」


 あたしが手を振ると──


「おおぉっ! 朝日奈笑! おおぉぉおはようっ!」

 何かを引きずりながら、大声であいさつしてくれた。


「何を引きずってるの?」


 あたしが聞くと、教えてくれた。


「これは『重いコンダラ』というものだ。身長を伸ばしたいと言ったら、父が『これを使え』と、物置きから出してきてくれたんだ」


「重い……コンダラ?」


 首をひねってそれをよく見ようとしたけど、なんだか謎の炎みたいなオーラがコンジョーくんの背中に漂ってて、それが邪魔でよく見えない。

 彼が手で握っている錆びた鉄の棒の後ろに、何か巨大なローラーらしきものがあるというのはわかるんだけど……


 梓ちゃんが声を震わせた。

「あ……、あれが伝説の『重いコンダラ』……」


 柏木くんが横で反応した。

「知っているのか神崎」


「えぇ……。昭和を代表するスポーツ根性ものアニメの主題歌の歌い出しに登場する伝説のトレーニングマシーンの名前よ。さすがはコンジョーくんのお父さんね、まさか実在するなんて思いもしなかったのに、まさかそんなものを所有してただなんて……驚きだわ!」


 柏木くんがうっとりした表情で梓ちゃんを見た。


「キミもすごいよ。そんなの知ってるなんて」


「──で?」

 あたしはコンジョーくんに聞いた。

「それを引きずって登下校すれば、身長が伸びるんですか?」


「これは身長を伸ばすための道具ではないんだ。ただ、これを使ってトレーニングすれば、確実に根性はつく! その、ついた根性を使って、身長を伸ばすんだ!」


 朝日にむかってガッツポーズをキメるコンジョーくんに、あたしは頭を抱えた。


 間違ってる──

 絶対、これ、間違ってる──。


 令和のスポーツ科学に基づいてやんなきゃいけないんじゃないんだろうか……。そうじゃないと、体を壊してしまうだけのような気がする。


「いいな、コンジョー! きっと身長、伸びるよ! 頑張れ!」


「いいわぁー! カッコいい! 私にもあとで引かせてね、重いコンダラ」


 柏木くんと梓ちゃんが、どうしてだかコンジョーくんを応援してる。

 なんとかあたしが正しい道に導かないと!




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― 新着の感想 ―
元ネタは巨人の星かなw
コンジョーくんは多分、朝起きた時に思いきり伸びをしたりするといいんでしょうね。(´ω`) 笑ちゃん大変そうだけどガンバレー 読ませてもらいまして、ありがとうございました♪ʕ•ᴥ•ʔ
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