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男子は根性 〜 根性があればなんでもできてしまう男の恋物語 〜  作者: しいな ここみ
根性で大食い! の巻

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20/23

優勝は……

 テーマが『中華料理』と聞いて、悪い予感はあった。


 あたしの目の前に青椒肉絲チンジャオロースーの入った白いお皿が置かれる……。


 美味しそう!


 ピーマンがなければ!


 大丈夫、二皿目の酢豚にもピーマンは入ってた。

 目をつぶって、豚肉と一緒に口に入れたらわからなかった。ピーマンがどこにあるかなんてわからなかった。誤魔化せた。


 だからこれも大丈夫だと思いながらお皿の上を見るけどハンパない…。


 ピーマンの量がハンパない!

 はぼ半分ピーマンじゃないか!


 つまりはここがあたしの根性の見せどころ──


 根性で大の苦手のピーマンをやっつけてやる!


 あたしは叫んだ。


「根性ーーー!!!」


 体育館じゅうにその声が響き渡ると同時に、ゴングが鳴った。


 お箸で大量に繊切りの豚肉、たけのこ、そしてピーマンをまとめて掬い上げると、勢いをつけて、口の中に詰め込んだ。


 苦い!

 にょろい!


 ピーマンのあのいやぁ〜な食感が口の中を満たす!

 へんなにょろにょろさがあるのにシャキシャキしてる! そのコンビネーションが気持ち悪い! そして緑色が濃い!

 

 あたしは負けじと「根性ーーーっ!」と言おうとして、へんな言葉になった。


「ふんにょーーーっ!!!」


『おぉーっと! 根性部の朝日奈さん、食事中の禁句を叫んでしまったぞ!?』

 玉国生徒会長が小馬鹿にするようにマイクで実況する。

『すごい顔だ! まるで子どもみたいに「だいっきらい」が顔ににじみ出てる! どうやら朝日奈さんはピーマンが大の苦手のようですね。おいおい……幼稚園児じゃあるまいしw』


 なにくそ!


 負けるか!


 根性だ!


 勝つんだ!


 根性部のために!


 コンジョーくんのために!


「朝日奈笑ーーーっ!」

 観客席からコンジョーくんの声が聞こえた。

「無理しないでくれーーーっ!」

 するわよ、無理するんだから、あたし、優勝して、コンジョーくんに笑ってもらうんだからっ!


『うわーっ、女子とは思えないみっともない顔ですね』

 玉国生徒会長の実況の声が耳にうるさい。

『目をひんむいてるぞ? それでいて目には何も映っていないような……。まるでホラーだ! 朝日奈笑さん、これは人気を落とすんじゃないかな?ww』


 うるさい。

 うるさいけど、うるさいだけ。

 生徒会長を見返してやるなんて気持ちは起こらなかった。

 根性とは何か?

 なんとなく聞いたことはある。それは他人を見返す『なにくそ根性』だと──

 でもそんなことはどーでもよかった。

 玉国生徒会長はコンジョーくんの素晴らしさを知らない。あたしは知ってる。


 コンジョーくんのために、根性の素晴らしさを世に広めるために、あたしは頑張る!

 根性でにょろにょろ苦いピーマンをおえええっ! ……いや耐えろ耐えろ!


 大丈夫だ! お腹がいっぱいすぎて、もう味なんか感じないから!


 あと少し!

 あと少しだ!

 根性さえあればなんでもできるんだ!

 不覚にもピーマンばっかり残ってしまったけどあと少し──!


 カァーン……


 ゴングが鳴った。


 何?

 何のゴング?


『終了でーす』

 玉国生徒会長の嬉しそうな声が聞こえた。

『完食できずに脱落するのは根性部の朝日奈さーんw』


 あ……


 あたし、脱落しちゃった……。


 こんなに頑張ったのに──


 ごめんなさい。


 コンジョーくん、ごめ……


 パチ、パチ、パチと拍手が起こった。


「よく頑張った! 天使猫!」


 顔を上げてみると、いつもあたしのファンだと言ってくれる陰キャさんたちだった。

 みんなで立ち上がって拍手してくれてる。

「凄かったよー!」

「根性見せてくれたね!」


 見るとコンジョーくん、梓ちゃん、柏木くんも立ち上がって、笑顔で拍手してくれてる。


 釣られるように他のひとたちもみんな立ち上がって、拍手をしてくれはじめた。


「朝日奈さん、すごーい!」

「あたし嫌いなもの、あんな勢いで食べられないよー」

「根性ってすごいんだねぇ!」


 みんなの拍手で体育館が『割れんばかり』になった。

 その中を、ぺこりと頭を下げて、あたしは退場していった。


 あたしの顔は恥ずかしさで真っ赤になってたか、それとも食べすぎた気持ち悪さで真っ青になってたか──

 なんにもわからなかったけど、何かをやり遂げた感じはあって、涙と笑顔が止まらなくなった。




「大丈夫? 保健室、行く?」


 そう聞いてくれる梓ちゃんに、あたしはお願いした。


「……いい。お膝貸して?」


 梓ちゃんの膝を枕にして、横になりながら、大食い大会を最後まで見届けた。

 優勝したのは『沖縄部』の主将、三年の内名口うちなぐち先輩だった。

 日焼けした顔を爽やかに笑わせて、余裕たっぷりに「なんくるないさー」と勝利のインタビューに答えてる。


 ふぅ……。


 負けた……。


 疲れた……


「朝日奈笑」

 コンジョーくんが言ってくれる。

「根性を見せられたな。よかったぞ」


 顔をあげると、親指を立てて『いいね』してくれてた。

 あたしも笑って、『いいね』を返した。




作者はピーマン平気ですけど、青椒肉絲の半分がピーマンだったら、ちょっと嫌かな……(*´ω`*)


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― 新着の感想 ―
頑張って偉いです!無理に食べるって大変なことですよね。 私はピーマンは平気なのですがキクラゲが苦手です。アレでいてクラゲでもなくて山に生えてるキノコって……もう存在が詐欺……(-᷅_-᷄๑)(好きな方…
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