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男子は根性 〜 根性があればなんでもできてしまう男の恋物語 〜  作者: しいな ここみ
根性で大食い! の巻

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17/23

部活対抗大食い大会

「おいっ! こんなの開催されるらしいぞ」


 そう言いながら柏木くんが、チラシを見せながら部室に入ってきた。


 チラシにはこう書いてある。



 『部活対抗大食い大会


  ◯月◯日、第一体育館にて、毎年恒例の部活対抗大食い大会を開催します

  各部から選手一人が出場し、大食いを競います

  優勝した部には予算が大幅アップされます

  今回のテーマは中華料理

  珍珍亭のシェフ珍さんが来校して料理を作ってくださいます


  参加を希望する部活は学校のホームページよりお申し込みください』



 なんだこれ……。


 こんなイベント、去年もあったっけ? 帰宅部だし興味なかったから覚えてない。


「いいな!」

 コンジョーくんが飛びついた。

「部費増額などどうでもいいが、根性の素晴らしさを世に知らしめるいい機会だ! 参加するぞ!」


「根性部のいい宣伝になるね」

 梓ちゃんが賛成した。

「コンジョーくんが出れば、根性で優勝間違いなしだよ」


 あたしはちょっと戸惑った。


 学校がこんな、生徒の健康に害があるかもしれないイベント、許していいの!?


 何よりコンジョーくん、根性で食べすぎちゃったら……


 根性で大食いはできるかもしれないけど、カラダはちっちゃいんだよ? 優勝しても、カラダ壊しちゃったら──


「よし、早速参加希望に登録するぞ?」


「待って!」


 スマホで参加登録しようとする柏木くんを、あたしは手で制止した。

 

「どうしたの、朝日奈さん?」


 不思議そうにあたしを見る柏木くんに、あたしは熱弁した。


「ちょっと考えようよ? コンジョーくんはもちろん根性で優勝するとは思うけど、そのあと病院送りとかになったらどーすんの? コンジョーくん、根性はあるけどカラダはチビなんだよ? 彼のカラダの心配もしようよ」


「朝日奈笑……」

 コンジョーくんがあたしを安心させようと笑う。

「心配してくれるのはとても嬉しい。しかし、これは根性の素晴らしさを世に知らしめるチャンスなのだ。俺は大丈夫だから、根性で胃袋もなんとかするから──」


「だめだよっ! 胃袋は根性ではおおきくできないんだからっ」


「彼ならできちゃうんじゃない?」

 梓ちゃんが呑気なことを言う。


「ハハハ。コンジョーの弁当箱、見たことあるかい? とんでもなくデカいんだよ?」

 

 柏木くんの言葉にあたしは質問をぶつけた。


「とんでもなくって、バケツ何杯ぐらい?」


「いや……ふつうに弁当箱だけど、ふつうに大型サイズってだけの……」


「ほら! コンジョーくんだって人間なんだから──」


「心配するな、朝日奈笑」

 コンジョーくんがあたしの肩をぽんと叩いた。

「やりたいんだ、俺は。きっと誰もが『根性部って何?』とか『そんなおかしな部活あったのかよw』とか、揶揄することと思う。そんなやつらにアピールしたいんだ。根性があればなんでもできるということをな」


「うん……」


 あたしはうなずいてしまった。


 コンジョーくんの夢だもんね。

 夢は見るものじゃなくて、叶えるものだもんね。あたしが邪魔しちゃ……


「じゃ、参加登録するよ?」

 柏木くんがスマホを操作した。

 

「これで部費大幅増額だね!」

 梓ちゃんが無理やり仲良くするように柏木くんの肩に腕を乗せ、目を¥みたいにしてる。


「楽しくなりそうだ」

 コンジョーくんの目が燃えてる。

「俺の根性を全校生徒に披露する時がやってきたようだぜ」


 心配で、不安で、心細くなってるのはあたしだけのようだった。







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