第七十五話「うざかわいい」
俺たちは難易度2の依頼を受けて、ギルドサービスの車に乗った。
ラーラはその車を見た瞬間、この世界は進んでるだのどうのとはしゃぎだして、
正直うざかった。
この子、顔は可愛いのに性格で損している気がする。
まあウザ可愛いというジャンルもあることだし、
そこら辺のマニアの方々には受けるんだろうけど、
俺にとってはただただウザイ存在でしか無かった。
早くクレスに押し付けてやりたいくらいだ。
彼女のウザさは止まらない。
目的地へ辿り着いた時。
彼女はモンスターを召喚したわけだが、
そこでもはしゃぎだした。
いや、俺も初めてモンスターを召喚出来た時は結構嬉しかったよ。
でも彼女ほど騒ぐことは無かった。
こりゃウザさ選手権優勝は間違い無しだな。
どうやら彼女のモンスターは現実世界のカードバトルオンラインから持ち越されてるようで、
レア度4のモンスターとか召喚してた。
「ねえ、アダム。私すごいでしょ!?」
「ああ、はい、すごいと思いますよ」
「そうだよね!? そうだよね!?」
はいはい、分かりましたからとりあえず落ち着け。
うるさすぎて耳の鼓膜が破れる。
さて、彼女のモンスターのおかげ(俺のスライムちゃんでも充分だが)で無事依頼をこなすことが出来た。
ギルドの受付嬢から報酬を受け取る。
いやあ、この依頼の報酬でも俺とブラがこの世界に来たばっかりの時は結構美味かったなあ。
今じゃコミクズみたいな金額だが。
さすがにゴミクズは言いすぎか?
「この金、全部あなたに差し上げますよ」
「いいの!?」
「ええ! さっきの依頼はあなただけでこなしてましたからね」
「やったあああ!!」
彼女はまたはしゃぎ出した。
頼むからやめてくれ。
周りの視線が痛い。
辺りはすっかり夜になった。
俺たちは宿に泊まることになる。
もちろん、彼女と俺は別の部屋だ。
え? こんな美少女と一緒に寝ないなんてどうかしてる?
冗談はよしてくださいよ。
俺の安眠が崩れるじゃないですか。
ちなみに彼女、睡眠欲もあるみたいだ。
欠伸とかしてたしな。
俺は睡眠欲があるわけじゃないが、
この世界の宿で数分目を閉じて休むだけで現実世界に戻れるようになってる。
俺は現実世界に戻ることになっ……。
「アダム、起きて!!」
あれ? 本当なら現実世界の朝7時に目を覚ますはずなのに……。
「アダム、起きてってば!」
聞き覚えがある声。
「ダイビングスマッシュ!!」
「ゲホッ!!」
彼女の頭が俺の腹部におもいっきり直撃し、
大きな痛みが俺を襲った。
何してくれてるんじゃゴラああああ!!
と叫びたくなるほど痛かった。
この世界の時計は現在朝の6時を回っている。
本来ならばこの世界で目覚めるのは現実世界と同じ7時なはずだ。
ん?
……そうか、分かったぞ。
つまり、誰かに睡眠を妨害された場合。
現実世界には戻れない仕組みになっているのか。
せっかく、現実世界で友達と楽しく遊ぼうと思ったのにい、
彼女のせいで台無しだ。
「あのー何でしょうか?」
とりあえず、何の用か聞いてみる。
「腹減ったあ」
はあ!?
この時間に空いてる店なんてないっつーの
宿の食事も最低7時からだし
「あと一時間我慢してもらえないですかね?」
「我慢できない!!!」
……。
不幸だな俺。
しみじみそう思う。
こいつと比べるとブラやグレなんて可愛いほうだな。
俺は一時間彼女を宥め続けた。
やっと時計が7時を回ったので、一階で宿の食事を取る。
彼女はあっと言う間に食事をたいらげた
「ふう、美味しかった」
「それは良かったですね」
「ねえねえ、それで今日どうする?」
「とりあえず次の街に移動しましょう」
「ええ! もうちょっとこの街を冒険したい!」
「昨日、散々冒険したじゃないですか!」
「したいと言ったらしたいの」
マジで……勘弁してくれ。
俺の地獄の生活は終わらない。




