第六十九話「クレスの頼み」
「アダム、頼みがある。君にしか出来ないことだ」
何? 俺にしか出来ない頼み?
いいじゃん!
今俺、何ていうか、スゲー使命感バリバリなんですけど。
もしかしてこの世界を救えってか?
それじゃあ俺勇者じゃん!
くぅ~どんな依頼か知りたいぜ!
「ってのは冗談だけどね」
……あのー、クレスさん。
冗談キツくないっすかね……。
「あっ、でも頼みごとがあるのは本当だよ」
はあ……。
「君はガサーリア方面、いや、シャイリア方面から来たんだよね」
「はい」
「君にはシャイリアの平原まで向かって欲しいんだ」
シャイリアの平原。
俺とブラがこの世界に迷い込んだ時に最初にいたところか。
「別に構いませんが理由を聞いてもいいですか?」
「全ての人がそうと決まったわけじゃないけど」
クレスが話を続ける。
「僕が調べた結果、大抵の人は依頼の難易度が低い街の近くに転移するみたいなんだよ」
ほお。
「それで君にはそこに向かって迷い込んだ人を僕のいるグランガの町まで案内して欲しいんだ」
「あのークレスさん」
「何かな?」
「スゲー重大な疑問なんですけど」
「……いいよ。話して」
俺は重大な疑問をクレスにぶつける。
「スライム育成はどうするんですか?」
「何かと思えばそんなことかい」
そんなこととは何だ! そんなこととは!
俺にとってこの世界でのスライムの育成はとても重大なことなんだぞ!
クレスさんそこは分かっておかないと!
「それならパーティを組めば何とかなるんじゃないかな」
「パーティ?」
「ああ、どうやらこの世界ではパーティを組めば、どれだけ遠くにいても」
クレスは説明してくれた。
この世界でパーティを組んだ場合。
どれだけ離れた場所にいてもパーティが解除されることはないらしい。
つまり、俺がシャイリアの宿で呑気に寝てても、
パーティを組んだクレスが地獄界で狩りをすれば、
その報酬は俺にも手に入るという。
まさに乞食にとってはとても美味しいやり方なのだ。
「ってな感じだね」
これで俺の不満は解消された。
これからも俺のスライムちゃんはさらに強くなることだろう。
スライムちゃんを最弱モンスターとは言わせない!
「分かりました。その依頼、承りましょう」
「ありがとう。助かるよ。ただ、僕も地図作りで忙しいから毎回地獄界には行けないのでそこら辺は勘弁してね」
「はい! 大丈夫です」
ってな感じで一段落ついた。
俺はクレスのいるSSS本部に行き、クレスとパーティを組んだ。
この世界に迷い込む人間が皆スライム好きならいいのに。
そんなことを思いつつ、俺はシャイリアに向けて旅立った。




