第六十五話「仕組み」
俺たちは地図作りをするべく白虎リーダーに跨り平原を進んでいった。
道中クレスと俺は会話を交わしていた。
まずは現実世界の報告。
このゲームをやめるようカードバトルオンラインのアカウントで訴えたところ。
垢BANされたこと。
そしてゲームの世界に行ったことがある人が俺に連絡をくれて、クレスにはお世話になったと言ったことなど。
クレスはそれらをフムフムと関心したように聞いていた。
「ってな感じです」
「まあまあの出来かな」
まあまあって……。
クレスはん厳しいでんな。
「とりあえず次現実世界に戻ったら友達や親戚など、周りの人にこのゲームをやってはいけないと注意を促すこと」
「……」
「いや、この際通りすがりの人にもそのことを伝えた方がいいかもしれない」
この人は俺に社会的に死ねと言ってるのだろうか。
「それは……その……」
「冗談だよ」
いや、冗談に聞こえなかったんだけども……。
クレスさん怖いなあ。
「まあ出来る範囲で頑張ってくれると助かる」
「はい」
さて、一旦話は終わった。
いや、まだだな。
この世界の仕組みについて聞いていない。
博学のクレスさんなら知っているだろう。
俺はクレスにそのことを聞いてみた。
「クレスさん」
「何だい?」
「クレスさんはこの世界についてどう思ってるんですか?」
「随分と大雑把な質問だね」
もう少し具体的に話すか。
「僕はこの世界を誰かが作ったゲームの世界だと思っています」
「根拠はあるのかい?」
うっ痛いとこ突かれたな。
根拠かあ。
うーむ。
「僕もこの世界はゲームの世界だと思うよ」
クレスが口を開いた。
「理由は四つ」
どうやらクレスには根拠があるみたいだ。
「一つ目はこの世界に来た時に流れたアナウンスだね」
この世界に来た時に流れたアナウンス?
ああ、あれか!
確か
”カードゲームの世界へようこそ”
って流れてたな。
なるほど。
最初からこの世界がゲームの世界だと言うことをあらかじめ伝えておいたんだな。
「二つ目は基本的にこの世界の防具や剣は扱うことが出来ないこと」
確かブラと武器屋に行った時にこの現象は起きたな。
ブラが木刀を買って店員さんと木刀の受け渡しをしたとき、
ブラの手から木刀が消えた。
これはクレスの言う通りこの世界ではプレイヤーはこの世界の装備を扱うことが出来ないということだ。
「まあこれはまだ確証は無くて現在調べてるところだけどね」
クレスはそう言い繕った。
「三つ目はギルドサービスの車」
ギルドサービスの車?
あれのどこがおかしいのだろう?
確かに近未来的ですごいとは思うけど。
「ギルドの受付嬢にどうやって街の外であの車を用意出来てるんですかって聞いてみたんだ」
「……」
「すると、受付嬢はその仕組みについては知らないと答えたんだ」
なるほど。
そういえばよく考えてなかった。
考えてみれば確かに可笑しい。
街の外に出れば都合よく車が用意されている。
発信機を持った人に反応してドアが開く仕組みになっていて、
非常に便利だなあといった印象だった。
しかし、今考えると不思議だなと思う。
「四つ目はこの世界には国という概念が無いということ」
国……かあ。
俺もそこまでは考えてなかったな。
図書館の本を読みあさったこともあったが国に関しての本は無かった。
「それらを含めて僕はこの世界がゲームの世界なんじゃないかと考えた」
しかし、クレスさん良くここまで根拠を見つけだしたなあ。
頭良いな。
それとも俺がただ単に馬鹿なだけか?
「ただ一つ疑問がある」
クレスは話を続けた。
「それはこの世界を作った人がいるとして、この世界をどうやって作ったか」
確かに言われてみればそうだ。
ところどころ可笑しい点はあるとは言えこの世界のNPC達は普通に生活している。
現実世界みたいにいろんな人たちがいる。
そもそもどうやってカードバトルオンラインをやった人達をこの世界に取り込んだかも気になる。
そう考えるとこの世界をただのゲームの世界と考えるのは難しい。
クレスも俺の考えと似たような事を述べた。
「さて、そろそろ着く頃かな。次はどんなところだろう」
クレスは子供のようにはしゃいだ口調で言った。
あの博学でいろんな意味で黒いクレスにも子供心があるんだなあ。
まあ俺も楽しみだ。
この世界には現実世界と同じように解明されていない部分も多々ある。
俺たちはそれを解明しようとしている。
地図作りもその一端だろう。
しかし、この世界のことが分かったからといってどうしたというんだろう?
皆が皆現実世界に戻りたがるわけじゃないし、
これからこの世界に巻き込まれる人たちも現れる。
この世界のことを知ったことでこういった問題は解決するのだろうか?
まあ今は俺に出来ることをやろう。
まずは地図作りだ!!
俺はそう意気込んだ。




