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第十八話「進歩」

「俺は他のプレイヤーと会ったことがある」


 ブラのその言葉に俺は驚きを隠せなかった


「どういうことだ? ブラ!」

「どういうってそのままの意味だよ」

「何でもっと早く言ってくれなかった」

「いや、別に言う必要はないかと」


 アホかこいつは

 こんな重要な情報を言う必要がないだなんて……


「それで、そいつとフレンド登録したのか?」

「え? してないけど」

 

 馬鹿かこいつは

 呆れて言葉も出ないほどだ


「名前とかそのプレイヤーの情報について何か分かるか?」

「名前はクレスとかいったな、黄金の鎧を来ててエレーナという超絶美人な人と共にいた」

「どこで会った?」

「ドラゴンが住んでいる洞窟」

「ちょっと待て、お前一人だけでドラゴン討伐に行っていたのか?」

「ああ、そうだけど」


 ……もう何も言うまい


 しかし、ブラがほかのプレイヤーに会った以上

 状況は大きく進展しつつある

 ん? 待てよ


「ブラ」

「何だ?」

「このカードを受け取って欲しい」


 俺は適当にカードを手のひらに出現させた


「いらないよ、こんなゴミカード」

「いいから受け取れって」


 俺は強制的にブラにカードを手渡す

 俺はゲームのメニュー画面でカードの所持数を確認する

 ……減ってる


「なるほどなるほど」


 カードバトルオンラインでは他のプレイヤーにカードの譲渡や交換はできない仕組みになっている

 だがこの世界では違うようだ

 つまりブラのマジックナイトリーダーがLVMAXなのはブラがそのプレイヤーから餌カードをもらった可能性が高い

 そう思うと辻褄が合う

 餌カードはそのままカードの合成に使ってモンスターのレベルを上げるものだが

 中には効率良く経験値をモンスターに与えるカードもある

 そのカードはニコちゃんマークをしている


「アダム」

「何だ?」

「前々から思ってたけどその一人で分かりきったような面するのやめてくれない?」

「何だ? ブラも知りたいのか?」

「いや、別に知りたいわけじゃないけどさ」

「じゃあ何だ?」

「いや、少しムカつく」


 ……ショックだわ

 ブラにそういうこと言われること事体ショックだわ


「いいだろ、別に」

「その性格直したほうがいいぞ、嫌われる」


 お前に言われたくない

 しかし、これで一歩元の世界へと戻る道筋が開けたわけだ

 そういやゲームメニュー画面のフレンドリストを見ていなかったな

 俺はそれを確認する

 その途端アナウンスが流れた


 ”フレンドリストにフレンドを追加するとそのフレンドの居場所が分かるようになります”


 ふむ


 ”居場所を知りたい場合はそのフレンドを直接クリックしてください”


 俺は試しにブラの名前をクリックしてみた


 ”ザルガダガナ 宿屋”


 なるほど

 このアナウンスのおかげでさらに一つこの世界の情報を手に入れることができた

 これは大きな進歩だ


「そういやブラ、お前は本当に元の世界へ戻る気はないのか」

「ないよ」

「どうして?」

「どうせ俺は戻ったところで何も変わらない」

「……」

「それに元の糞みたいな世界よりはこの世界のほうが何億倍もマシだ」


 確かにブラの言うことも一理ある


「そういうアダムは元の世界に戻りたいのか?」

「ああ」

「どうしてだ?」

「母ちゃんに心配かけてるんじゃないかと思ってね」


 正直この世界の出来事は夢としか考えようがない

 だけど万が一この世界に実際に紛れ込んでしまっていたら

 元の世界の自分はどうなっているんだろう?

 考えただけで怖くなった


「お前はまだ中学生だし、未来はある」

「……」

「俺は戻るつもりは無いが、お前を元の世界へ戻す手助けはしようと思う」

「本当か? ありがとう」

「それじゃあ俺はミリーユちゃんに用があるんでこれで」


 まーたミリーユか

 あの尻軽女のどこがいいんだか

 まあ俺はあの二人の仲を応援しているわけだが


「さてと」


 俺はいつもどおり夜の街を歩きギルドへ向かうのだった

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