第二十八話
今日は皆んなで川で遊んでバーベキューをする日だ。私は出掛ける準備を終えると、暑そうな街の景色を窓から見ていた。
「準備オッケーかな。あ、椎名さんに連絡しとかなきゃ! 今日は皆んなで川にバーベキューに行くから帰りは遅くなるねっと」
椎名さんにメッセージを飛ばすとすぐに返事がきた。
「気を付けて楽しんできなさい。あんまり遅くなるようだったら迎えに行くからね……か、ほんと優しいな椎名さん」
私はありがとうと返して家を出て行った。
集合場所に向かうと松岡君が1人で待っていた。その姿を見た時、私は嬉しくなって小走りに近づいていった。
「松岡君おはよう!」
「あ、上条さんおはよう」
ニコッと笑う彼の笑顔は私にだけ見せてくれる顔だ。
「上条さんの服凄く可愛いね」
「ありがとう。椎名さんに選んでもらったの。似合ってる?」
「うん! とっても」
何か幸せな気持ちだった。心があったかくて安心する。
「よう! 周りが見えないイチャイチャカップルかと思ったぜ!」
「あはは! それな!」
向こうから新田君と藍沢さんが歩いて来ると、いきなりそんな事を言われて恥ずかしくなった。隣の松岡君も珍しく赤い顔をして恥ずかしがっているようだった。
「松岡君、上条さんおはよう」
「おはよう真田君」
最後の1人、ふたりの後ろにいた真田君と挨拶を交わすと駅に向かって行った。
目的地に行く途中も楽しかった。皆んなで談笑しながらだとすぐに時間が経ってしまうのが不思議だ。
「まずは川で遊ぼうぜ!」
新田君は川に着くなり泳ぎたいのか、急かすように言ってきたので亜衣ちゃんと水着に着替えに向かった。
「わぁ! 可奈ちゃんの水着可愛い! やっぱりスタイルいいから羨ましいなぁ〜」
「ありがとう。亜衣ちゃんも水着似合ってるよ!」
「ありがと。この前可奈ちゃんに選んでもらったやつだもんね!」
着替えが終わり、外を歩いていると周りの様子が少し気になった。じろじろ見られて恥ずかしい。
「あら〜 可奈ちゃんの人間離れした姿に周りの男どもが気付き始めたわね。これは私がちゃんと守らないと!」
「どういう事?」
私の言った言葉に亜衣ちゃんは呆れた顔をしている。
「ほんとに可奈ちゃんはー! 自分をもっと知りなさい! あなたは可愛すぎるの! 女の私でも抱きついてすりすりしたいくらいだわ!」
興奮している亜衣ちゃんが少し怖かった。そんな一歩引いた私の手を取った亜衣ちゃんに引かれ、松岡君達の方へ向かった。
「はぁ〜 こいつらも水着の可奈ちゃんに何も言えんか……」
目の前にいる松岡君達は亜衣ちゃんの言葉にも反応せず顔を赤くして私をじっと見ていた。
そんなに露出が多い水着じゃないと思うんだけど……。
「何か変?」
少し心配になりながら松岡君に訊く。
「ううん! 凄く可愛くて驚いちゃったよ!」
松岡君は焦った様子で首を大きく横に振って可愛いと答えてくれて良かったと安心した。
「ほら! 行くわよ!」
亜衣ちゃんに大きな声で言われた松岡君達がやっと我に帰ってくれると、私に謝りながら歩き出した。
最初は周りの目が気になったけどいつの間にかそれも忘れて夢中で遊んだ。お昼のバーベキューも美味しくて、ずっと皆んなで声を上げて笑っていた。凄く楽しかったけどどうしても寂しさを感じてしまう。
ずっとこの時間が続けばいいのに……。
遊び疲れた私達は近くにある見晴らしのいい公園でのんびりと景色を見ていた。風が吹いて気持ちがいい。
「あー楽しかった! また来年も来ようよ!」
亜衣ちゃんの言葉に皆んな頷いていたけど私はできなかった。
「ね? 可奈ちゃん?」
私は亜衣ちゃんの言葉を聞いた時、ここしかないと思った。
「あのね、皆んなに話しておきたいことがあるの……」
顔を上げると皆んなの視線が私に集まっていた。辛かった。どんな反応をされるか不安が襲ってくる。
でも、言わなきゃ。
「私ね……転校するの……」
私の話を聞いた瞬間皆んなの顔から笑顔が消えた。私は申し訳ない気持ちが大きくなると皆んなの顔が見られなくなって顔を下に向けてしまった。
「ごめんなさい……」
帰り道は皆んな静かだった……誰も話さないから行きとは違って長い時間に感じた。私はただ申し訳ない気持ちでいっぱいで最後まで誰とも目を合わせることができなかった。




