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第4章ー12

 これまた、知る人ぞ知る第一次世界大戦時の逸話だった。


 1917年、カポレットの戦いに大敗した伊政府や軍は、この大敗の原因は、日本軍(その主力は、日本海兵隊)が独善的態度を執り、伊軍との協力を拒んだからだ、と強弁した。

 なお、この戦いの前に、日本軍は、独墺軍の攻撃の危険性があると警告したが、伊軍は、そんな筈はない、とその警告を間違っていると言い張り、戦いの後には、日本軍が、同盟軍の伊軍に警告せずにいたために、独墺軍の奇襲を伊軍は受けた、とまで、一部の伊軍の軍人は言いつくろった。


 この伊軍、政府の嘘の発表に、さすがに腹に据えかねた、とある英の大衆紙が、「いっそのこと、江田島(日本の海軍兵学校)で、伊陸軍の士官は再教育を受けた方がいいのではないか」と社説に書いたのだが。

 伊軍は猛反発して、伊軍の名誉を汚すものだ、とその大衆紙を非難した。

 そうしたところ、その非難をきっかけに、他の新聞まで、この騒動を取り上げ、真実を報道して何が悪いと抗議する始末になり、伊軍にとっては、逆効果になってしまったのだ。


 マッカーサー将軍にしてみれば、現在のような米陸軍の体たらくでは、かつての伊軍と同様に、米陸軍が非難されるのではないか、という取り越し苦労をしてしまう有様に、米陸軍は見えていたのである。

 そして、それは、決して杞憂というのには、言い難い状況に米陸軍はあった。

 前述のように、米陸軍の軍拡は、質的な面で中々進んでいるとは言い難い有様だった。


 例えば、米軍が当時採用していた戦車、M1軽戦車.M2軽戦車,M2中戦車全てが、日本陸軍の97式戦車どころか、89式戦車より下手をすると見劣りする有様だった。

 日本海兵隊が開発を完了し、量産を開始し始めた零式重戦車に至っては、米軍が現在、採用している戦車の後継として開発を始めたばかりのM3中戦車を、最初から格下扱いにする有様だったのである。

 マッカーサー将軍が、血相を変えて、幕僚を叱咤するのも無理は無かった。


 だが、幾らマッカーサー将軍が、幕僚を叱咤し、また、本国に米陸軍の惨状を訴えても、すぐに軍拡が進むものではない。

 英日軍のアイデアを活用し、自国流に咀嚼した上で、兵器の開発、量産を米軍は行わざるを得なかった。

(例えば、第二次世界大戦の米軍の主力傑作戦車として知られているM4中戦車は、日本海兵隊の零式重戦車を参考にして開発(口の悪い日本人のある評論家に言わせれば、パクリ開発)した戦車である。)


 1940年1月のこの頃は、米軍の準備が色々な面で進んでおらず、マッカーサー将軍が、一番、フラストレーションをため込んだ時期に当たっていたと言っても過言ではなかった。

 とはいえ、不満を吐き出すだけ吐き出すと、マッカーサー将軍も、現実的かつ、それなりに有能な軍人だけあって、頭を冷やし、冷静にはなる。

 サザランド少佐は、それを見計らって、マッカーサー将軍に声を掛けた。


「お気持ちは、よくわかります。しかし、我々が、日満韓軍と共闘して、ソ連軍を満州から追い出し、勝利を収めねばならないというのが、現実です」

「不愉快だが、その通りだな」

 サザランド少佐の声かけに、マッカーサー将軍も、頭が冷えたので冷静に返した。

「その現実に沿って、我々は行動しましょう。日本軍からは、ソ連軍の包囲殲滅を図る計画が提案されており、満州国政府からも、それに協力してほしい、という要望が出されています」

 サザランド少佐の言葉に、マッカーサー将軍は黙って肯いた。


「この3月の攻勢で、米軍が精強であることを敵味方に知らしめようではありませんか」

 サザランド少佐は、マッカーサー将軍を口説き、マッカーサー将軍も得心した。

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