表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/120

第3章ー25

 12月上旬、日満軍は、遼河以西、金州以西を失陥し、遼河、鴨緑江を防衛線にして、ソ連軍の攻勢を凌ぐ状況になっていた。

 とはいえ、ソ連軍も、実際には日満韓軍に引き込まれただけだ、と分かっていた。

 実際、ソ連軍の想定していた戦果は、挙がっていたとはいえず、逆にソ連軍の被った損害は大きかった。

 40個師団を投入して行った満州への侵攻は、現在、20個師団以上が再編成が必要な有様となっていた。

 航空隊の損害も大きく、開戦当初よりも、保有機数を減らす現状があった。


「余り新聞が騒いでいないのが助かるな」

 旅順にまで後退した関東軍司令部で、幕僚達を前に小畑敏四郎中将は述懐していた。

「全くですな。それなりに戦果が挙がっているので、表面上の後退に注目が集まらずに済んでいます」

 幕僚達も、それに肯いた。


 金州まで接近してきたソ連軍の先鋒部隊は、「扶桑」以下の戦艦まで投入した日本海軍の艦砲射撃の前に大損害を被って一時、退却する羽目になった。

「「扶桑」と「山城」の艦砲射撃の威力は、10個師団以上の威力がある」

 当時の新聞に載った連合艦隊司令部の発表である。


 そして、米陸軍航空隊が駆けつけたことや、日本空軍の操縦士育成や軍用機の製造が順調なこともあり、日米満韓の航空隊が、数的優勢を確保するようになったことも大きかった。

 9月に行われた最初の空襲の後、数回にわたり、帝都空襲をソ連空軍は試みたが、その度にソ連空軍は甚大な損害を被ったことから、11月以降、帝都空襲は無くなっていたこともあり、帝都防空のみに当たっていた99式戦闘機を割いて、満州へ派遣できるようになったこともあった。


(ソ連空軍の失策として、帝都空襲に重爆撃機部隊を使うことに力を入れ過ぎた、というのも挙げられる。

 重爆撃機部隊を、帝都以外、例えば、大阪方面の空襲に使ったり、また、重爆撃機部隊を空中からの機雷投下任務に使ったり、ということにも使えば、日本空軍としては、それらの対策に戦闘機部隊を割かざるを得ず、戦力を帝都近辺に集中させることは困難だったろう。

 しかし、帝都という単一目標に絞ったことから、確かに日本空軍は、満州に最新鋭戦闘機部隊を暫く派遣できなかったかもしれないが、その代り、戦闘機の支援を得られないソ連空軍の重爆撃機部隊は、甚大な損害を続出させることになり、日ソ開戦時には、300機程はあったソ連極東部の重爆撃機は、10月末頃には、100機以下にまで損耗し、更に補充や補給もままならなかったことから、ソ連空軍による帝都空襲は中止される羽目になったのである。)


「日ソ開戦以来時にいた日本陸軍6個師団は、全て要補充再編成状態なのは痛いが、ソ連軍に遥かに多くの損害を与えているのだから、よく勇戦敢闘したといえるだろう。春までの間に補充等に努めよう」

 小畑中将は、幕僚達とそう話し合った。


 小畑中将は想いを巡らせた。

 米国陸軍6個師団が、取り合えず遼河以西に展開した。

 春までには、更に10個師団が駆けつけるとのことだ。

 更に、日本軍も機甲5個師団が駆けつけており、当初から満州にいた6個師団に加えて、11個師団が金州以西の遼東半島の突端部と鴨緑江に展開しつつある。

 韓国軍12個師団は、ウラジオストク進撃を目指す態勢を整えつつある。

 満州国軍20個師団も、開戦以来の甚大な損害を、補充で埋め合わせ、再編成されつつある。


「戦は、まだまだこれから、といったところだな。我が方の補充と再編成が完結するのには、春にまでかかるだろう。そして、ソ連軍は損耗している。多分、5月以降、日米満韓の連合軍は、ソ連軍に対する大反攻を開始することになるだろう」

 小畑中将は、そこまで考えていた。

 第3章の終わりです。

 次話から幕間として、1940年正月の土方勇達を、5話、描きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ