表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
119/120

エピローグー4

 千恵子は、あらためて、世界大戦の最新の戦況を思い起こした。

 新聞報道に加え、義祖父の土方伯爵の話を聞き合わせてのことに過ぎず、どこまで正確なのかは、自分にも確信が持てない戦況ではあったが。


 取り合えずは、東アジア、極東においては、日米満韓軍の反攻の第一段階が成功していた。

 日韓海軍の半年余りの苦闘は報われつつあり、また、米海軍の本格的な参戦もあり、徐々にソ連の潜水艦や機雷等による海上輸送路の被害は減りつつある。

 地上戦闘においても、まずは日米満韓陸軍の手により、南満州、奉天以南を回復し、陸路で朝鮮半島と中国本土、具体的には釜山から奉天経由で、北京、南京までが連絡できるようになっていた。

 幾ら海路による連絡、補給等があるとはいえ、陸上では戦線がつながっていない、というのは、日本の国民等の多くに不安を抱かせるものがあったが、その不安が解消されたことから、米内光政内閣に対する日本の国民の支持は高まりつつあった。


 とは言え、これはまだまだ第一段階の話に過ぎなかった。

 現在、中国本土の戦線においては、完全に日米満韓軍は守勢を執っている。

 まずは、満州を回復、その後、極東ソ連領を占領することで、ソ連軍の脅威から韓国を完全解放し、満州の安全を確保するために、イルクーツクまで進撃して占領、守勢を執る。

 そして、親ソ政権である外蒙古政権を打倒し、代わりに親日米政権を外蒙古に樹立する。

 その後、中国本土の戦線で攻勢に転じ、成都を目指して、日米満韓軍は進撃していき、最終的には共産中国の打倒を目指す、という壮大な大戦略を日本の参謀本部は立案しており、それに米満韓の政府、軍も基本的に同意して動く状況となっているらしい。


 何しろ、中国本土の戦線は広大である。

 それに加え、ソ連軍という敵まで加わっているのだ。

 こうなってくると余りにもアジアの戦線だけでも広すぎると言えた。

 少しでも戦線を絞り、内線の利を生かした各個撃破を、ひたすら図るしかなった。

 米軍は、マッカーサー将軍の要請もあり、アジア戦線に本腰を入れ、陸軍本体のみならず、陸軍航空隊や海兵隊まで送り込むことになったらしい。


 一方、共産中国軍は、日米満軍に対しては、基本的にゲリラ戦に徹している。

 後方の輸送部隊等を襲撃して損耗させ、その一方で、正面の敵に対しては、敵が進めば我は引き、敵が引けば我は進む、という大戦略を取っている。

 それに対して、米軍の一部からは、ボーア戦争で用いられた強制収容所に類似した村を作ることで対処しよう、という意見が出ているらしい。


 また、ソ連軍が、日本本土の都市に対する爆撃を再開したことから、それに対する報復攻撃という事で、ソ連や共産中国の都市に対する爆撃を主張する声が、日本の国民の間から高まりつつあることも、千恵子にとっては懸念材料だった。

 そして、米軍は、自国民の犠牲を少なくするためにも、ソ連や共産中国に対する都市爆撃は必要であるという声が強いらしい。

 先にソ連軍が都市爆撃をやりだしたのだ、日米軍も報復して都市爆撃を行って当然という主張、論理も伴っている。

 戊辰戦争時に会津等で起きた軍人以外の死者が、大量に今回の世界大戦では出るのではないだろうか。

 和子を胸に抱きながら、千恵子は、そんなことを考えざるを得なかった。


 勿論、ソ連陸軍に対する対策を、日米満韓軍は怠る訳には行かない。

 何しろ、質はともかくとしても量は圧倒的なのだ。


 世界大戦が終わるまでに、東アジアでは、どれだけの血が流れれば済むのだろう。

 和子が大きくなって、和子の子、私が孫を抱く時、東アジアはどうなってしまっているのだろう。

 千恵子は、アジアのことだけでも不安が高まるのを覚えた。

 ご意見、ご感想をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ