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第6章ー19

 4月11日夕刻、ベルゲン港の確保という戦果を挙げたことから、港湾設備を活用しての揚陸作業が、日本海兵隊は可能になった。

 この影響は極めて大きかった。

 なぜなら、これによって、日本海兵隊2個師団を重装備も含めて、完全にノルウェーの戦場に投入することが可能になったからである。


 皮肉なことに、(ある意味、順調に自動車化を進め過ぎていた)日本海兵隊には、弱点があった。

 それこそ、独とかでは、ある程度は人力搬送を前提としている対戦車砲等でさえ、自動車で牽引するのが必須と化していたのである。

 だから、自動車等を速やかに揚陸させないと、海兵隊の機動力、火力を本格的に発揮できないという状況に逆に日本海兵隊は陥ってしまっていた。


 そういった状況下に、日本海兵隊はあったのだが、ベルゲン港を確保して、そこからの揚陸作業を展開できる戦況になったことは、日本海兵隊にとって明るい情報と言えた。

 そして、実質丸二日という時間は掛かったが、ベルゲン港から陸続と揚陸される兵員と物資を、日本海兵隊は活用することで、4月14日朝には、ベルゲン周囲の独軍は駆逐されて、オスロ方面へと敗走した。

 逆にベルゲンの周囲に展開する日本海兵隊は、オスロへの進撃準備を整えることができた。


 そして、独巡洋戦艦2隻撃沈という戦果を挙げた日米機動艦隊も、この時までには、日本海兵隊の支援に駆けつけてきており、英本土に交替で物資補給に赴く必要はあるものの、日英米の機動艦隊は、総力を挙げての日本海兵隊支援の任務を務められる状況になっていた。

(ちなみに、本来の日本海兵隊支援という任務を放り出して、2日間、独巡洋戦艦2隻を追い回したハルゼー提督はキング提督から、角田、山口の両提督は堀海相から、本来の任務を放り出して、独巡洋戦艦を追い回すとは何事か、と叱責されたそうである。)

 ここに、ノルウェー奪還作戦の準備は、完全に整ったといっても良かった。


 なお、ここまでの間、ノルウェー政府、軍は何をしていたのかだが。

 ノルウェー政府、軍に対して、英仏米日が情報漏洩を恐れるあまり、独のノルウェー侵攻作戦の機件について警告を発しなかったのは、既に述べた。

 また、独が律義にノルウェーに対して、侵攻作戦を行う、と事前に言う訳が無かった。

 従って、ノルウェー政府、軍にしてみれば、独のノルウェー侵攻作戦は、本当に奇襲だったのである。


 そのため、情報が錯綜する余り、一時は、英仏米日が侵攻してきたという情報が、ノルウェー政府に飛び込む有様で、ノルウェー政府は王室と共に、内陸部のハーマルにオスロから慌てて脱出する有様だった。

 そして、ノルウェー軍は慌てふためく余り、独の侵攻作戦に対処するための予備役兵等に対する動員命令さえ、郵便で送る有様だった。

(これらを後で聞いた石原莞爾中将は、ノルウェーの平和ボケもここまで来ると見事としか、言いようがない、と喝破する羽目になった。)


 だが、時間が経つにつれ、正確な情報をノルウェー政府は把握するようになったし、ノルウェー軍の予備役兵等も、予め定められていた駐屯地に自発的に駆けつけるようになった。

(最も、ノルウェー戦終結時までに、文字通り三々五々予備役兵は駆けつける有様で、ノルウェー軍は準備が整った部隊から、戦場に投入する有様だった。

 そのため、兵力の逐次投入という状況に、ノルウェー軍は陥ってしまう。)


 こうして、4月14日朝には日本海兵隊2個師団は、ノルウェー軍の協力を得て、独のノルウェー侵攻を跳ね返し、ノルウェーを英仏米日の下に取り戻す作戦を発動した。

 また、こういった戦況に鑑みて、英陸軍もノルウェー救援のために兵力を差し出そうとしていた。

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