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第6章ー18

 石原莞爾中将が、ノルウェー救援のために立てた作戦は簡明極まりないものと言えた。

「あきつ丸」等、上陸作戦用の特殊船舶から、日本海兵隊が上陸作戦を展開できるのは、1個海兵連隊を基幹とする諸部隊が精一杯だが、それでも零式重戦車18両を含む約3000人の部隊である。

 これによって、ベルゲン港をまずは確保し、その後、後続部隊を順次、ベルゲン港に揚陸させ、2個海兵師団を駆使して、ノルウェー南部を奪還。

 ノルウェーの中北部のナルヴィク、トロンヘイムに上陸した独軍部隊は、これによって孤立してしまい、投降の止む無きに至らざるを得なくなる。

 そして、ノルウェーを、英仏米日の勢力圏として完全確保し、北から独に圧力を加え、独を北と西から英仏米日が攻撃できる態勢を確立する、というのが、石原中将の作戦の基本案だった。


 勿論、ノルウェー北部国境は、ソ連と直接に接している以上、こういった状況になった場合、ソ連がノルウェー侵攻作戦を展開する可能性が無いとは言えない。

 しかし、ソ連海軍北方艦隊の水上艦艇は、独海軍以下の規模に過ぎない。

 ということは、北大西洋でソ連が輸送船舶を活用できる可能性は、ほとんど無く、陸路からの補給に頼った状況での、ノルウェー侵攻作戦をソ連は行わざるを得ない。

 そして、ノルウェー北部の地形を考えるならば、ソ連がノルウェー侵攻作戦を陸路のみの補給で断行するということは、自殺行為といっても過言ではない話だった。

 だから、ソ連がノルウェー侵攻作戦を展開することはあり得ない、というのが、石原中将の考えであり、多くの英仏米日の将官の同意を得る考えでもあった。


 石原中将の指揮の下、第1海兵師団の先遣部隊は、相次いで、上陸作戦を展開していた。

 ガリポリ、営口等、数々の上陸作戦を実施してきた日本海兵隊の面々にしてみれば、また、やることになったか、というレベルの話であり、「あきつ丸」等の特殊船舶も、当然、準備しておく船舶であった。

 だが、英米の軍人からすれば、目から鱗が落ちるレベルの上陸作戦だった。


「これが、「あきつ丸」等の実際の上陸作戦の際の姿か」

 自軍の偵察機が、実際の上陸作戦を展開している「あきつ丸」等の姿を撮影してきたのだが、その写真を見た瞬間、米海軍のフレッチャー提督やその幕僚達は、感嘆とも称賛ともつかない唸り声をあげると共に、上記のような声を挙げた。

 ちなみに、英海軍の軍人も、米海軍と同様のことをし、似たり寄ったりの反応を示している。


「すごいな。上陸作戦用の舟艇が、船尾から次々と発進していく」

「更に、空港を確保次第、航空機を発艦させて、空港に展開させることもできるとは」

「一応、日本海軍から聞いてはいたが、実際にやられているところを見ると、インパクトがあるな」

 英米海軍の多くの軍人が、驚嘆の声を挙げた。


「我々も作らないといけないな」

「全くですな。色々と使うことがありそうですし」

「確かに色々とな」

 英米海軍の軍人は、更にそう語り合い、本国に対して、働きかけを行うことになる。

 そして、第二次世界大戦後半、日英米は、こういった特殊船舶を活用することになるのである。


 少なからず話がずれたので、話を本題に戻す。

 土方少尉以下、先遣部隊の日本海兵隊員約3000名は、あきつ丸等の活用により、ベルゲン近郊での上陸作戦を成功させた。

 零式重戦車18両を先頭に基本的に立て、まずはベルゲン港確保に向かう日本海兵隊に対し、独軍は懸命に抗戦したが、航空支援、艦砲射撃の支援に事欠かない日本海兵隊に対し、兵力に劣り、重装備も不足している独軍の抗戦には限度があり、4月11日夕刻にはベルゲン港を日本海兵隊は確保することに成功した。

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