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第1章ー5

 ポーランド軍内部で、そのような会話が交わされている頃、それ以外の国の軍や政府内でも、思い思いの会話が交わされるようになっていた。


「最早、第二次世界大戦は避けられまい。問題は、我が米国が、速やかに参戦できるか、だ。幾らポーランドの独立を、我が国が保障しているとはいえ、ポーランドが先に軍の総動員を始めた、だから、開戦責任はポーランド側にあるという独政府の宣伝を、多くの議員が、少なくとも信じるふりをしている。確かに米国民の多くが、ミュンヘン会談や、独国内のユダヤ人迫害等があるとはいえ、外国に派兵はしたくない、と考えているからな」

 米国のルーズベルト大統領は、ハル国務長官に、そう話しかけていた。

「確かに、その通りですな」

 ハル国務長官も、心持ち渋い顔をせざるを得なかった。


「とはいえ、ポーランドが独ソ両国の侵攻に晒されれば、英仏日は動かざるを得ますまい。そうなると、日ソ関係から言っても、ソ連は、日本の背後にいる米国も攻撃せざるを得ない。問題は、ソ連の攻撃が、どの程度のものになるかです。大手を振って、米国が参戦できる程度のものになればいいのですが」

 ハル国務長官は、そう、ルーズベルト大統領に語り掛け、ルーズベルト大統領も無言で肯いた。


 英仏両国の政府内では、ポーランドの総動員を受け、来るべきものが来た、いよいよ第二次世界大戦に突入する時が来たか、という想いをする者が大半だった。

 英仏両国の政府内で、先が見える者の多くにしてみれば、ミュンヘン会談の時点で、これは独ソ両国及び自国民に対する時間稼ぎ、いやアリバイ作りに過ぎないことが見えていた。

 それから考えると、よくここまで平和が維持できたものだ、という想いをする者さえいる有様だった。


「スペインから、ペタン元帥を呼び戻したまえ」

 仏では、レイノー首相が、秘書に命じていた。

「ペタン元帥を副首相として、内閣に迎える」

「よろしいのでしょうか」

 秘書は、疑問を呈した。

「差し出がましいようですが、ペタン元帥は、性格的に難がある気がします」


 ペタン元帥に関する評価は、現在に至るまで、色々となされている。

 そうした中で、多数とされるのが、いざという際に悲観的になりやすい、折れやすい、という性格上の難点だった。

「大丈夫だ。日米が支えてくれる。特にサムライが来てくれればな」

 レイノー首相は、努めて明るく言った。

「確かにそうですね」

 秘書も、その言葉に肯いた。


 英仏米日各国政府、軍の上層部のやり取りにより、第二次世界大戦が勃発した際には、米軍が、日満韓の救援に大量に赴く代償として、日本軍、特に海兵隊、サムライが、英仏救援のために欧州に赴くことが約されている。

 第一次世界大戦の際、サムライは勇戦し、英仏等を救った。

 その記憶、伝説が、英仏の国民を心理的に支える力になる、とレイノー首相らは考えていた。


「何しろ、獅子身中の虫が多いからな。我が国には」

 レイノー首相は、(内心で)嘆かざるを得なかった。

 旧人民戦線政府支持者の中には、共産主義者が多い。

 彼らは、対独戦ならまだしも、対独ソ戦となると、積極的に独ソに味方して、テロ等を引き起こしかねない、とまでレイノー首相は、睨んでいた。


「しかし、第二次世界大戦開戦に伴い、日米軍が駆けつけ、ポーランド軍まで、フランスに集結すれば、独ソの侵攻に対処できるだろう」

 レイノー首相は、そう考えていた。


 似たようなことを、英国のチェンバレン首相らも考え、対独ソ戦争、第二次世界大戦開戦へ道を決意しつつあった。


 こうなっては、最早、誰も引き返せない。

 9月1日、独は自衛のために、ポーランドに宣戦。

 英仏日は直ちに対独宣戦し、第二次世界大戦は始まった。

第1章の終わりです。

次から第2章になります。


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