三層㉝ 因縁
「……降魔の門の時以来ですね。僕のことは覚えていますか?」
「先ほどまで忘れていたが、思い出した。屋敷の中でわしを見上げていた幼い子供じゃろ?」
「そうです。あなたが殺した奥様を発見したあの子供です。合縁奇縁という奴でしょうが、不思議なことも在ったものですね。被害者と加害者が共だって旅をしてたなんて……」
イルマスは穏やかな口調とは裏腹に、握りしめた手から血を流し、禍々しいオーラを更に強めた。
抑えているからまだセーフだが、リッチャンの発言いかんではすぐに爆発しそうだ。
周りの人間のことを考えずに宿屋に大剣をぶん投げたことを考えると、その時はすぐだろう。
「降魔の門の加害者てことは魔人ってことですよね。じゃあリッチャンさんは私たちのところに潜伏していた敵だったてことでしょうか?」
「いやまて、まだ確証がない。今まで接してきた感じのリッチャンとの齟齬がデカすぎるし、敵だっていうんなら同士討ちになろうしてたのに、わざわざそれを仲裁に行く理由が分からないし、第一にこのパーティーに潜入するメリットがわからない。まだ決を出すには情報が足りない」
「そうですけれど……」
アイリッシュは不安そうな眼でリッチャンを見つめ始めた。
相手はもしかしたらこちらをひどく憎んでいる上に強大な力を持つしかない魔人だ。
臆病いかん関係なくこういう態度をとってもしょうがないだろう。
俺も第一に敵だと思いたくないくらいには奴らの事は警戒している。
噂によると魔人は人の十倍はスペックを持っているとか言うことも在るし、寿命が長く大昔の戦いの当事者が恨みを募らせたまままだ生きているのではないかということらしい。
リッチャンがそれとまったく同じタイプの魔人だとしたら最悪としか言いようがないがどうだろうか。




