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二層㉓ アンタッチャブル

 意外にガードが堅い相手側を見ているとファイルが詠唱を開始した。


『偉大なる炎の御子の顎よ、ここに顕現し、目の前の災いを飲み込み給え! 

 ファイアバイト!』


 相手側の詠唱と比べると早いな。

 短縮詠唱でも使っているのだろうか。


 そんなことを考えているとバーバリアン達の上にアギトが落ちる。

 だが、戦士のバーバリアンがその直下に移動するとまた戦技を発動させたようで、奴らは消し炭にならずに火傷を負う程度で済み、すぐに白魔導士のバーバリアンが傷を回復させた。


 やはり戦士が厄介だ。

 あいつがあのパーティーの核と見て間違いないだろう。

 前衛たちが近づいて、各個撃破してくれればいいが、リっちゃんとグラシオは剣士のバーバリアンが存外にすばしこいらしく翻弄されているし。

 奴を鎧袖一触で屠れるだろうミカエルとアイリッシュは傍観を決めこむようにしてその様子を少し離れたところで見ている。

 別行動で自分達の技量を上げたいと言った俺に配慮していることはわかっているがこんな時くらい協力してほしいんだがなこいつら。


 まあ奴らの見込みでは俺たちで対処可能てことか。


 さてどうするか。


 弓を撃って牽制しつつ考える。


「僕が戦士をやって来るので、二人は白魔導士と魔法使いをけん制もしくは撃破してください」


 するとそうイルマスが進言して戦士たちの方に向かっていた。

 盗賊が戦士を撃破できるイメージがわかないが、とりあえずイルマスが走り出してしまったので、奴が魔術師と白魔導士のバーバリアンに殴られて袋叩きに会わないよう奴らに向けて攻撃を行う。


 戦士のバーバリアンは粗野な見た目な割に冷静なようで、イルマスが迫って来ても遠距離から矢と火の玉で攻撃する俺達の攻撃を防ぎ、イルマスが目前に迫るところでやっと奴に対する対処に回った。


 盾を自らの前面を覆い、盾の右側から剣を突きの構えで待機する。

 イルマスが攻撃をガードしつつ、息継ぎの時にできた隙に突きを繰り出そうと言ったところか。

 攻撃も堅実にこなすタイプか。


 攻撃力の低そうなイルマスにガードブレイクとかできそうにも無いし、奴の相手は厳しそうだな。

 俺は戦士のガードがなくなって無防備な白魔導士にヘッドショットを決めると魔導士をファイルに任せてイルマスのアシストに回ろうか、当初の予定通り魔導士を撃破しようか少し逡巡する。


 そんな俺の心配をよそにイルマスはガードをしている戦士に向かって、大きく踏み込んだ。

 奴の踏み込んだ目先にはちょうど突きの姿勢で待機している剣がある。

 死ぬ気満々かあいつと思うと、予想通り剣がイルマスに飛び出していた。

 死んだなと思うとすんででイルマスは左側に避けて、奴の背後に回ると首をナイフで切りつけた。


 その盗賊らしくないイルマスの屠り方と予想を外したことに対して、全く持って納得できない。

 敵がいなかったら問いただすか。


 周りを確認すると魔術師のバーバリアンに火の玉が迫り、剣士のバーバリアンはフィールドの隅に追い詰められていた。

 俺が手を貸すほどでもなかったようだし、ちょうどいい。


「イルマス、ほんとに盗賊かお前? アサシンかなんかだろう。虚偽申告なら今なら許すぞ」


「いえ、いえアサシンから盗賊にジョブチェンジしたから、アサシンの時の癖が抜けてないからそう見えるだけですよ」


「確かにそれなら理は通るけど、なんかお前胡散臭いな。というかなんでアサシンから盗賊に変えたんだ?」


「それは……」


「ユースケス、あんた踏み込み過ぎよ。本人が語らない詮索をしないのが冒険者のマナー。あんたもこの攻略での身分は一応冒険者なんだからこのルールには従ってもらわないと。今回は知らなかったかもしれないから特別に許した上げるけど、次はないからね」


 イルマスはあからさまに目を泳がせ始め、俺の中での奴への信用度が暴落し始めるとミカエルがそう言って止めに入った。


「虚偽があるかもしれないのに、詮索しないて一体全体冒険者はどうなってんだよ?」


「世間では常識じゃなくともこの界隈では素性不明だろうがなんだろうが、役割だけ果たしてればそれでいいのよ」


「むちゃくちゃだな」


「むちゃくちゃな人間が集まって運営してるんだから、そりゃそうでしょ」


「まあ、それで問題が起こらなければ俺はそれでいいんだけどね」


 ミカエルは俺がそういうと手のひらを空に向けって、若干腹の立つポーズをとると剣士を倒したグラシオ達の下に向かっていた。

 言葉を濁したあの反応から見て、問題は起こるがアンタッチャブルてところか。

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