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十層1 雪

 この世にあるものを停滞させるように視界を覆う白。

 その小さな粒子が舞うたびに視界が塞がれ、どこに行けばわからない道筋がより不確かなものになったように思える。

 周りに広がる銀世界を見てしまうと、この層にいる間は厳しい寒さに身を捧げることは避けられそうにもないし、億劫なことこの上ないしと言った感じで気を病みそうだ。


 カン!


 しかもこの見通しの悪い環境を使って、何事かことを起こそうとしている輩がいるのだから参ったという言葉しか出ない。


 今までの様子からしてリッチャンの方が二枚も三枚も上手なので、イルマスにやられることはないと分かっていても、こういう風にまめに奇襲を行っているところを見ると少し不安になってこないこともない。


 頻度としては普通にイルマスのナイフから生じる金属音で一つの曲を弾けそうなくらいなのだから逆に思わない方がおかしい。


「カン……!? かん……! CAN……?」


 アイリッシュに至っては不安になりすぎた挙句の果てにポジティブシンキングするに至っているし。

 過ぎたるネガティブは逆に前向きな思考を生み出すことを俺は始めて思い知らされる。


 とにもかくにもこのままでは、ニッチもサッチもいかないので早急に雪をしのげる場所で一時休止を挟むか、大体教会がありそうな場所に目星をつけて強行軍をするかどちらかしなければいけない。

 個人的にはここから新たに攻略手当がつく、11層に移層したいので後者がいいが、そんな都合よく教会がポンと出てくるわけがないからな。


 変な欲を見せず、比較的見つけやすく凌げる場所を見つけて、そこで休憩するのがいいだろう。

 そう心の中で決を出すと吹雪で不明瞭になっていた視界の端に、黒っぽいものが映った。

 この真っ白な世界で異質である黒を体現していたそいつを見ると、洞穴だった。


 おあつらえ向きなのでその中に歩を進めていく。


『許さない』


 すると鼓膜を通さずに声が頭の中で響いた。

 脚の神経を何かドロリとしたものに包まれるような感覚に襲われ、足を止める。


 だが異常が生じた踏み出した方の足――右足を見るがそこには何もありはしなかった。

 何者もいないというのに心の声が聞こえ、何もされていない足が異常を訴えた。

 何かがありそうな気がする。


「この匂い……! この感覚……!」


 俺がそう心配するとリッチャンが何かに気づいたようにそう呟き、目をカッと見開いた。


「間違いない! オークの巣じゃ!」


「何ですって!」


 彼女の呟きにイルマスが驚愕した顔で見つめる。


「全員ここから早く脱出をする――」


「おお、皆来てたのか」


 リッチャンがそう呟くと奥から眼鏡をかけた緑色の大男が現れた。

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