表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?  作者: ぽんぽこ狸


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/306

前途多難……。3




「……サディアスって結構しっかりしてたんだね。あんな色々役割があったなんて初めて知ったよ」

「うふふっ、私もです!自分のことばかりに夢中になっていて、迷惑をかけているだなんて思いませんでした」

 

 チェルシーと二人でゴミ箱を持って廊下を歩く。

 私達は一年生であり、校舎の一階に教室があるため、すぐに校舎の出入口へと到着する。

 

 昼休みのため、それなりに人が出歩いていて、たまにぶつかりそうになりながら大きなゴミ箱を運ぶ。


 学園生活だと言うのに、私はすっかり掃除当番や色々な事を失念していた。確かに学生時代にはこうやって教室のゴミを捨てに行く係や放課後の掃除なんかがあったと思い出す。


 そうだよね、いくらファンタジーだと言っても、大勢の生徒がここで暮らしているんだ、それぞれが学園のために仕事を請け負っていて当たり前だ。


 校舎を出て、裏手の焼却炉に続く道を歩く。


「でも、学校って感じがするよ、こうやって友達とごみ捨てに行くとかさ」


 ヴィンスが私の仕事を変わろうとしたが、さすがに却下して、サディアスと共に食事をするように伝えてきたのだ。やはり自分の仕事は自分でやらなければ。


「……」


 私の言葉にチェルシーは返事を返さない。

 

 ……友達は急すぎたかな?!


 二人の間を沈黙が包んで、持っているゴミが歩く揺れに合わせてガサガサと音を立てるのがよく聞こえる。


「あ、や、そのね、これから」

「クレア……私たちが友達だと言ってくれるのなら、私っ!聞きたいことがあります!」


 なんとか自分の発言を良い方向に持っていこうと考えていたが、私の考えは杞憂だったらしく、チェルシーは顔を私の方へと向けて、ずいっと近寄ってきた。


「うわっ!」


 それに驚き足を一歩引くと、鈍臭いことに躓いてしまい、ゴミ箱を持ったまま転び、中身がバラバラと飛び散ってしまう。


「あっ、ごめんなさい!私ったら急に驚かせるような事をして」

「うん、……平気平気。大丈夫だよ」


 そう言って、ゴミ箱を立てて、ぐしゃぐしゃのプリントやら謎の紙ゴミを集める。

 その中で、ふと、私は見覚えのあるものを見つけた。ローレンスから与えられたペンによく似ているものだった。


 何となく、制服のポケット中へとしまい込み、チェルシーにはバレないようにしてまたゴミを拾い集める。チェルシーは、自分の持っていたゴミ箱を置いて私を手伝ってくれる。


「その……クレア、ヴィンスとクレアはどういった関係なんですか?」

「……私とヴィンス?」

「そうです。……初めは、まったく貴方の事を知らない時は、すごく意地悪な人だと思ったのですっ!気の弱そうな彼を無理やり付き従わせて」


 言われてみれば、そう見えなくもない……というか多くの人がそう見えているのだろう、同じ家名なのがこれまたややこしいんだ。


 家庭の事情は数あれど、こんなに主従関係をきっちり示す私たちの関係は、同じ家族と言うだけで、長年虐げていじめて、逆らえなくなった兄弟に従者の様な振る舞いをさせていると他人から見えるのだろう。


「でも、今だってこうして、ちゃんと自分の仕事をクレアはしますし、よく思い出すと、クレアがヴィンスに強要しているところを見たことがありません!……私たちがお友達だと言うのなら教えてくださいませんかっ」


 そう、決意したように言われて私は、なんと説明したらいいのか考える。


 今まで聞かれなかったのは、込み入った事情があると察されていたからだろう、だから踏み込んで来る人はいなかった。でも、チームになった以上、私もヴィンスも同じチームメイト、ヴィンスと私の関係を知らないままでいることは確かに望ましくない。


「……具体的には言えない事が多いんだけどいいかな?」

「はい、構いませんっ」

「私とヴィンスは元々は……」


 原作のクラリスとヴィンスを思い出す。二人の関係性、前にヴィンスの言っていた自分は慰みものだという言葉。これから察するに、多分ヴィンスには帰る場所とか、家族がいないのではないかと私は考えている。


 クラリスが登場するシーンでは、ピッタリとヴィンスが必ずそばに挿絵でも描かれていて、けれど彼は、意見をすることもないし、勝手に何かをしている様子もなかった。


 あまり詳しく無いが、普通は身分の高い人につく付き人や従者という職業は、貴族の爵位を継承しない人、良家出身の次男なんかがなるのだと思う。

  

 当たり前に仕事を募集して、誰でも偉い人の従者になれたら、それこそ身分が高い人は危険な目にあう可能性がある。だから出来るだけ周りに着く人間を身元がはっきりしていて、帰る場所、守る場所がある人を雇うのだ。それも多分、同性を。


 でも、ヴィンスは男の子で、従者でいるということに固執している。これだけ一緒にいるのに、彼は自分の情報を一切出さない。それは、出さないのではなく彼は、彼だけの情報というのがないからなのではないかそう……思っている。


 でも、本人には聞けないし、これはクラリスに聞くしか無いんだよな!とにかく今は関係性だったけ?

 

「私がある高貴な身分だった時からの従者なんだ、今はまったく権力のない平民だから気にしないで欲しいんだけど、でもヴィンスは身分は変わっても同じように仕事をするつもり……みたいで」

「では、腹違いの兄弟ということでも無いのですね!過去の事情は様々ですけど、ヴィンスと距離を置くという選択肢はないんですか?」

「距離を置く……か」


 ……そんなことを言ったら、また捨てられた子犬みたいな顔をするんだろうなぁ。それに実際、距離を置くと言っても、それじゃ私がヴィンスを拒否したという事実だけが出来て、ヴィンスが他のチームメイトと仲良くしたり友達を作ったりするきっかけには正直ならないと思う。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ