表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?  作者: ぽんぽこ狸


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/306

なんでこう毎日、忙しいかな……。8




 あれってソレか。嫌である。信用できない相手には、やはり貴重品は渡すべきではないな。うん。


「ごめん、苦手だからやめとく。でも、ちょっと人に相談したいとは思ってたから、見ててくれる?私の魔法玉がどうなってるのか分かったら教えて?」

「うん、うん!いいよそれでも全然いい!」

 

 ディックはまたきゅっと口角をあげて身を乗り出す。私の魔法玉を観察するためだろうか、目を瞑っていた。オスカーも魔法を使いつつテーブルに頬杖をつく。


 私の言葉に、いつでもどうぞとばかりにヴィンスが魔法玉を光らせたまま差し出して来る。

 得意では無いだろうに申し訳ない、今は少し使わせて貰うしかないだろう。


 自分の魔法玉へと魔力を込めて光らせる。それからヴィンスの物と一緒ににぎりこんで、優しく抱き合って親愛をよせる人に体温を移すようにイメージしてヴィンスの魔法玉へと魔力を注ぐ。


「ッ……」

「こうして、他人の魔法玉と重複使用しないと、私の魔法玉は欠損があって……使えないみたいなんだ」

 

 一応、言葉にするが、ヴィンスの状態が心配で背中に手を添える。彼はそれほど不快に感じていないようで、少し手を握りこんでいるだけだ。頬が紅潮しているのは、私の魔力に驚いて心拍数が上がっているせいだろうか。


 なにかわかったかなと思い、ディックの方へと視線を向けると、彼は、目を瞑ったままだくだくと汗をかいて、こっちに乗り出していた体を引き、きちんと座り直した。


「それ、しまって……オスカー。僕、アレはあまりやらないことにする。いつもごめん。本当に」

「ん?なんだ?たまになら構わねぇよ?」

「構ってくれ!頼むから!」

「はぁ?」


 唐突にディックは、オスカーの胸元を掴んで、うるうるとした瞳を向けた。急だなぁと思いつつ、私は、ヴィンスの頭を撫でて自分の魔法玉をしまう。


「アレって他人の魔法玉の重複使用の事でしょう?どうして急に?」

「いや、僕にとってのソレはそんな感じじゃないから!でもそんな感じにも出来るんなら……あー知りたくなかった!」

「??」

「もういい!僕は知らないから!あと魔法玉については、それ多分、普通に学園街で売ってる簡易魔法玉の重複使用でどうにか使えると思うから!好きにしたらいいよって、あとはエリアルに聞いてよ!」

「うん、ありがとう、参考にする」


 ディックはミルクをごくごく飲んで、それから急に、背もたれがある椅子と間違えたのか、ふっと後ろに重心を倒して、そしてそのまま背後に倒れる。


 ガタン!と大きな音がして、ディックが床に激突してしまったのかと思ったが、オスカーがそうなる前に受け止めることが出来たらしく、ふぅと息をついて彼を持ち上げる。


「……魔力の使いすぎだろーな」

「魔力って無くなるとそんな事になるの?」

「ウィング次第だが、リミッターがついてない奴はこうなるぞ」

「……ディック、サーチでどんなのが見えたんだろ」

「さぁな、こいつ自身以外はわかんねぇから、気にしなくていいんじゃね?」

「そうかなぁ」


 そう言いながらオスカーは、ディックを横抱きにして魔法を使ったまま片手でコーヒーを一気に飲み干す。


「ご馳走さん、寮の部屋までこいつを運んでくる。お前たちはどうすんだ?」

「……少ししてから教室に行こうかな」

「おう、またな!」


 歩いて行く彼の背中を見送って、私は考えを巡らせる。


 今日始まったいじめなら、今日中に解決するのが吉だろう。人間感情として、長引かせると私がこの後何をしても、ここでやっていくのを認められないと思う人も出てきてしまうかもしれない。


 ……なんでこう、毎日忙しいかな……。


 本当は、平穏な学園生活を送りたいというのに。


「ヴィンス、ちょっと街に降りよう、それからさっき言っていた決闘の手続きをできるだけ早くしたいんだけど」


 私の言葉に、彼は少し驚いた表情をして、それからこくりと頷いた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ