そういうタイプの化け物か……。8
私がペンを握りながら考えていると、ティーポットと揃いの洒落た愛らしいカップに薔薇のような水色のハーブティーが出てくる。
「食器類を寮に運ぶことが出来なかったので……安物ですが、購入して起きました……勝手に所持金を使ってしまい申し訳ありません」
ヴィンスが謝りながら、おずおずとハーブティーを差し出す。甘いような柔らかい花の香りに、私の手にちょうど良い可愛らしいサイズのティーカップ。
どちらも自分のために用意されたとあって、じんわり手から温かさが心まで伝わってきて染みる。
「そんなのいいよ、全然。……嬉しい。ヴィンスも一緒に飲もう?」
「はい」
私のお金じゃないけれど、もはや昼の慰謝料ということで、存分にあのお小遣いは使わせてもらおうと今決意した。そしてヴィンスにも少しでも贅沢をさせてあげよう。
そして、私が落第してしまったら、ヴィンスだけでも逃がしてあげられるようにしなければ。
ハーブティーを口に運んで、ペンを走らせる。たまに昼のローレンスの言葉を思い出してブンブンと頭をふる。彼の事なんてどうでもいいんだ、どうせまた私を詰りに来るんだろう。
もはや、彼には、嘘でも惚れている振りぐらいしておいた方が、対応が楽かもしれないと思い、クラリスはやはり長年ローレンスの婚約者をやっていただけあるなと思う。
だって、昼間のあれは、私の反応を引き出そうとして、いろいろ言ってたのもあると思うが、途中から、虐めがいがないとか言いながらも、楽しそうに笑っていたのだ。あんなに満身創痍の私を見て、だ。残酷というか、子供っぽいというか、自己中というか。
考えるだけでイライラしてきた。私の前でコクコクとお茶を飲むヴィンスを見る。
急に顔をあげた私にヴィンスは少し眠たそうに首を傾げた。かわいい。あ、そうだ。
ヴィンスならいいかもしれない、私はおもむろに立ち上がって彼のそばへとよって少し屈む。
「ヴィンス、魔法使って見せて」
「はい……?」
意図はわかってないらしいが、彼は素直に魔法玉をだして光らせる。私も同じようにして魔法を使い、彼のものと一緒に握りこんで、そこに意識を強く集中する。
「ひぁっ!」
ヴィンスが目を見開いて、ビクッと体を揺らす。
……?ん?
「クレア、うっ……ふっ、あ」
……主導権が……もしかして私にある?少しなんと言うか抵抗感を感じはするが、私の中に異物がある感覚は無い。対してヴィンスは顔を赤らめ呼吸荒くして、呻く、満身創痍といった感じだ。
「やめ、ッ、くださ……っ」
「気持ち悪い?」
「ちがい、ッ……、怖くて」
瞳に涙を溜めてなんでこんな事をするのかと視線で問いかけてくる。彼は、苦しくて怖くて泣きそうな顔をしているのに、私に媚びるような視線に何故か自分はもう少しだけ、魔力を強くした。これで、ヴィンスの魔法玉を使って重複使用ができると思うのだ。
「あッ!……っ」
ヴィンスは体を震わせ、私の服をぎゅっと握る。
一応、魔法を使えたという証拠が欲しくて、立ち上がりヴィンスをそのまま抱き上げて見る。
軽々と持ち上がり、ヴィンスは私にこんな事をされたからか顔を真っ赤にして涙をポロポロこぼした。
ギョッとして魔法をとくと、ヴィンスが急に重たくなったように感じたが彼を私が落とす前に、ヴィンスは自分からどいて、少しだけ不満そうに私から視線を外した。
「ご、ごめん、ヴィンス」
「……」
「ほんとに、出来心で、つい!」
浮気をした男のような台詞を言ってしまい。これじゃ誠意が伝わら無いのではと思い黙る。




