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瞬撃

「す〜っ、シャアアアッ!」


叡嗣は、息を吸い込み叫び声をあげる。

気が狂ったわけでも、頭が変になったわけでもない。しっかりと、理由があってのことだ。


1つ、想像して欲しい。

もし、自分が誰かと向き合っていたとする。その誰かが突然叫び声をあげたらどんな反応をするだろうか。気が狂った、頭がおかしくなった、そんな風に思うだろうか。いや、そんなことを考える前にビクッとするのが普通ではないだろうか。


もう1つ、想像して欲しい。

西部劇の決闘の場面。男二人が向き合い、同時に銃を抜き撃ちする。そんな場面だ。

相手の一瞬の隙も見逃さんとする、そんな場面で突然叫び声をあげたら、きっと叫び声をあげた男の相手はビクリとするのではないだろうか。

そして、叫び声をあげた男はその隙を見逃さず、きっと銃を抜き撃ちするだろう。


叡嗣が今叫び声を上げたのは、簡単に言えば威嚇、そしてゴブリンの虚を突くためなのである。


「シッ!」


鋭く息を吐きながら、叡嗣は正面のゴブリン戦士(ウォリアー)の額に突きを放つ。

矢が放たれたような素早さで剣を突き出し、その勢いのままゴブリン戦士の額を貫き、その包囲網を突破する。


突然の奇声からの攻撃に呆気にとられるゴブリン戦士をよそに、叡嗣はゴブリン戦士の額に突き刺さっている剣を抜き、鋭く剣を振り血を払う。

叡嗣が悠々とそんな仕草をこなし終えた時、ようやく残りのゴブリン戦士達が動き始めた。


だが、遅い。


「ゲギャギャゲギャギャ!」

「グギギガゲ!」


きっと、ゴブリン達は叡嗣に対して口汚く罵りの言葉を浴びせているつもりなのだろう。

しかし、それがなにになるのか。

その罵声は、叡嗣にとってなんの痛痒もなく、ゴブリン達には自ら隙を晒すような意味のない行為だ。


「ふっ!」


また息を吐き出し、叡嗣は突撃する。

すれ違いざまにゴブリン戦士の右脇腹を、続けて別のゴブリン戦士に袈裟斬りを。

怯んだそのゴブリン戦士の顔面を蹴り飛ばし、倒れたゴブリンの胸に剣を突き立てる。


ビクリとゴブリン戦士の身体は跳ね上がり、そのままガクリと力を無くす。

それを確認すると叡嗣は剣を抜き、後ろに大きく剣を薙ぐ。

後ろから近付いていた別のゴブリン戦士は首を刎ねられ、ヨタヨタと首から下だけが数歩歩きドサリとその肢体を投げ出した。

飛んでいった首は今まさに動こうとしたゴブリン戦士の足下に落ち、ゴブリン戦士の気勢を削ぐ。


その隙に叡嗣は脇腹を切り裂かれ、蹲りながら傷を抑えるゴブリンの背後に立ち、剣を大上段に構え…………振り下ろす。

その剣はゴブリン戦士の頭蓋を割り、その小さな体躯の半分程までを断ち切った。


返り血を浴びながら、剣を引き抜き、残りの2体を叡嗣は見る。

スッと、ゴブリン戦士が一歩引いた。

叡嗣が一歩踏み出す。ゴブリン戦士が、一歩引く。


もう一度、叡嗣が一歩踏み出す。

すると、ゴブリン戦士は叡嗣に向かって剣を投げ付けると、背中を向けて走り始めた。


それを見て、叡嗣はふと考えてみる。

きっと、逃がすのではなく追って殺すべきなのだろうと。

往々にして物語だと一度逃した敵が強力になって再び現れるなんてことがある。なら、今の内にやったほうがいいのだろうと。

しかし、ゴブリン戦士は剣を投げ付け、その隙に走っていってしまった。そのスピードは中々のもので叡嗣が投げ付けられた剣を避け、打ち払ったときにはかなり遠くに行っていた。


再び考える。

ここから遠くのゴブリン戦士たちを攻撃できる、そんな手段は存在するのかと。

そこで、ふと思い出す。この世界には魔力というものがあることを。


叡嗣はスッと左手で銃の形を作る。

その銃口──人差し指の先には逃げ出したゴブリン戦士の後頭部。


「バァン」


口でそんなことを言ってみる。

その瞬間、叡嗣の指先に緋色の魔法陣が形作られそこから緋色の弾丸が放たれ、ゴブリン戦士の頭を破壊した。


純魔法《魔球》

この世界では、叡嗣の行ったことはそう言われる。

純魔法、それは純粋な魔力だけの魔法のことだ。純魔法、その特徴はそれ程難易度が高くなく、各人の魔力の色によって放たれる魔法の色が異なるということ。つまり叡嗣の魔力は緋色ということになるのだが、今はそれはどうでもいい。


本来《魔球》とは球の名の通り球体を打ち出すような魔法だ。その威力は低く、多くの用途は魔法の練習用である。

しかし、叡嗣の使った《魔球》はそれとは大きく異なる。ゴブリンの頭を破壊し、絶命に至らしめた。

そして、その形状は《魔球》とは異なり、まるで弾丸のよう。

言うなれば、叡嗣のそれは《魔球》ではなく《魔弾》。この世界にはない科学が生み出した兵器から放たれるそれだった。



正直、叡嗣はこんなことが本当にできるとは思っていなかった。できたら儲け、できなかったら仕方ない、そんなある種の賭けだったのである。

そして、叡嗣はその賭けに勝ったというわけだ。

ここで、1つ疑問に思うこともあるだろう。魔法のいろはも知らない叡嗣が、何故魔法を使えたのか。

それは簡単、イメージと【魔力操作】によるものだ。

まず、最初に叡嗣は【魔力操作】によって、魔力を撃ち出そうとした。その脳裏にあったのは世界一有名といっても過言ではないような名作漫画の体内エネルギーの【気】というものだ。その漫画ではその【気】を撃ち出す、なんて技もあった。そこで、叡嗣は思いついた。【魔力】も撃ち出せるのではないかと。

しかし、そんなことを思いついても実際にやるとなるとその撃ち出すという行為がどういったものかイメージがわかない。そこで、叡嗣は撃ち出すということに特化したものを思い浮かべた訳である。それは銃。火薬の力で鉛球を()()()()兵器だ。

それであればイメージは簡単だった。なにせ、叡嗣はゲームとはいえそれに頻繁に触れていたのだから。


もし、叡嗣がギークに魔法について訊いていればこう返ってきていただろう。

”魔法とはイメージでも使えるものです。詠唱は上手く唱えれば魔法を発動させますが、本来はそのイメージを補完するものなのです”と。

魔法系スキルレベルを上げることで魔法を覚えることもできる。詠唱を覚えることで魔法を使えるようにもなる。

だが、最終的にはイメージなのだと、もしギークが居たら教えてくれただろう。


叡嗣は偶然にも魔法の極意に触れたわけである。

そう、運良く。





叡嗣は2匹目のゴブリン戦士にも指先を向ける。


「バァン」


その言葉は今度は力に溢れていた。


『《魔法系スキル》【純魔法】を習得』


◇◆◇◆◇


叡嗣がゴブリン戦士を一蹴するのをガイは遠目で見ていた。


叡嗣がゴブリン4体を殺すのに掛かったのは凡そ45秒程度。鮮やかな剣筋に、命を容易く奪う剛剣。

それを見て、ガイは思わず溜め息を漏らす。


そのすぐ後だ。

ゴブリン戦士が叡嗣に剣を投げ付け、逃げ出したのは。


本来なら、追うべきなのだが、叡嗣は初の実戦。

見逃すのも致し方ないと思った、その時。


叡嗣が何かを手で形作り、魔法を発動したのを見た。

そして、次の瞬間にはゴブリン戦士が頭から血を吹き出し倒れるのを確認した。

もう一体も、同じように頭から血を吹き出し倒れた。


なにが起こったのか、ガイにはわからない。

だが、叡嗣の魔法がそれを起こしたことはわかった。


一瞬の攻撃。


「瞬……撃……」


ガイは気付けば、そう呟いていた。

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