第二十六幕 「姦し重ね」
いつだった みんなで まじわった あのとき
きおくの おくそこに ずっとずっと のこってる
ああ わたしたちにも こんなときが あったんだ
「なら、きっと大丈夫。わたしはみんなを信じてる。」
「うーん……流石に6名は難易度高いですね。」
褐色の素肌を惜しげもなく晒しながらリリスが顎に手を添えて悩んでいる。
「でっけぇベッドで良かったな!どうやって寝転んだらいい?」
同じく、やや褐色の肌と茶色の虎模様のティガは尻尾を揺らしてワクワクしているって感じだ。当然真っ裸だ。
「この人数だと、さしものキングサイズだろうと……どう足掻いても密着するわね。」
私も既に脱ぎ終わって全裸。
我ながらよくぞ慣れたもんだよ。ほんと。
「なー、ローザお嬢様も早く脱いでャー?」
夢見に行きたいのか女神に会いたいのかシャルを元気にしたいのか、ミアも全裸でローザを急かす。
「あっ、あの!せ、セレナ様……こ、このような行為はふしだらではございませんか!?たとえ女同士であろうと、親密な関係でもない女性が全裸で褥を伴にするなど……!」
一人肌着と下着を着たままで狼狽えるローザ。上着を脱がすだけでも相当苦労したので今はミアに任せている。
まぁローザの言う事、一般的な視点であればまさにそう。
人族の文化においては同性同士が全裸で入眠なんて聞いたことねー。
でも禁止もされてないし?法的にも、教義的にも、宗教的にも?
まぁ問題はなかろうて。
人様には言えんけども。
「ふしだらな行為をしたらふしだらであって、裸は別にふしだらではないし、寝ることもふしだらではないわ。服を着ていても濫りに性行為を行えばふしだらだし、所構わず夫婦が性行為を始めたらそれはふしだらよ。」
最近私はこの考えで居ることにしている。
まぁ間違ってもいないだろうし、良い視点だと思う。
良い…?
いや、深くは考えるまい。
我ながらリリスに毒されてるわ。
「うぐっ……!せっ、せい……こっ!?」
そう言われてしまって立つ瀬がないローザが肌着をギュッと握りしめてさらに顔を赤くする。
「なー、ローザお嬢様はミァと一緒にお風呂にはいってたがャ。あれはふしだらなんだがャ?」
素朴な疑問を投げかけるミァ。
「そっ、それはミアの身体を洗うためで!わっ、私は決して邪な気持ちでミアを裸にしたわけでは!」
「じゃー、シャル姉たんを助けるために女神様に会いに行くだけだから、ふしだらではないのじゃないかャ?」
「ぐっ…!ぬぅ……!」
さらに追い込まれてゆくローザ。
おもろい。
いいぞミア、もっとやれ。
「し、しかし!わっ、私までその『月影の語り場』へ赴く必要性は……!!」
お、自己保身だ。
もはや成す術なしって感じでいいねぇ。
だけど。
「申し訳ないけども、ローザ。貴女には是非来てほしいわ。色んな意味で貴女には知ってほしいことがあるのだから。」
私はローザの前に立ち、真剣な眼差しで彼女を見つめながら言う。
全裸で。
しまんないな……我ながら。
「……」
黙りこくってしまうローザ、だがその顔は真剣に悩んでいて羞恥とは別の思惑が見て取れる。
「うーん、私がシャルさんを抱きかかえて中心に、その左右にミアちゃんを抱っこしたティガさんとセレナを抱っこしたローザさん。というのを想定していたんですが、ちょっと各自の負担がありますかね?」
「それだとリリスさんが一番しんどくないか?シャル姉さんは背もおっぱいもデカいから抱きかかえたりなんかしたら結構寝苦しいぜ?やっぱり小さい子を誰かが抱えつつ、横並びってのが良いと思う。……あと、やっぱ姉さんの隣にはあたしらが居たいんだが……だめか?」
「そうなんですよねぇ、私もその方が色々と良いと思うんです。シャルさんを中央に左右にティガさんとミアちゃん。ミアちゃんの後ろにはローザさんで、ティガさんの後ろにセレナを抱えた私が。っていう配置が一番いいかなーって思い始めてます。」
「お、いいじゃねぇかそれ。女神の従者は別にどこでも大丈夫だってことだよな?」
「はい、上にシーツをかけたり服を着たりしなければ私はどこでも大丈夫です。このベッドのサイズ内であれば許容範囲かと。」
「じゃ、それで行こうぜ。」
全裸で女性ばかりが6名。肌を合わせて寝る相談。
を、真剣にするリリスとティガ。
うーん。
おもろい。
「ミァはローザお嬢様にも女神さまに会ってほしいのだがャ。そしてミァ達の故郷の風景を見てほしいのだがャ!すっごい綺麗だがャ!シャル姉たんにもローザお嬢様を合わせたいのだがャ!!」
ぐいぐいと肌着を引っ張りながらミアがローザを押しまくる。
いいねいいね。
その調子。
「あたしら裸で寝るのはいつものことだからいいんだけどよ。意味あるのかコレ?」
「はい。とっても大事な理由があります。ゆめ……『月影の語り場』は色んな感覚を共有することでその実体感がまるで違います。女神の従者である私が皆さんの感覚を中継ぎするのに服とか掛物があると阻害されちゃうんです。」
「へぇー、不思議な術なんだな。全然かまわないけど。」
こっちはこっちで理解を深めとる。
ていうかリリス、未だにちょいちょいボロ出しそうになるのやめて。
心臓に悪い。
「……解りました。ご指示に従います!私も皆さんと同じくお供します!!」
覚悟を決めたローザが肌着をばっと脱ぎ捨てた。
お。ついにローザも腹をくくったね。
白く上品なデザインの下着。
しかもアレだ。魔導工学が良く判らんフィット感を生むやつ。
さすが豪商の娘。最新ファッションってわけだ。
引きこもりの箱入り娘らしく、色白でちょっとだけだらしのない体つき。
でも年相応の大人の女性らしいふくよかな体型。
彼女はさらに下着にも手を伸ばしておずおずとした仕草でそれを脱ぐ。
逆にエロいぞ。
それ。
「どうやら最後の一人も覚悟が済んだようだし。始めましょうか。」
私はそう言ってベッドへと向かう。
「あい!ローザお嬢様はミァを抱っこしてこっちだがャ!」
「じゃぁ、あたしはこっちだな。セレナとリリスさんはあたしの後ろね。」
「うぅ……失礼します。」
「よっと……おわ、ティガの筋肉見た目より凄いわね。」
「ティガさーん。私もリリスでいいですよー。」
「にはは。じゃぁそうするね、リリス。ていうかセレナの肌触り凄いな、なんだこのつるつるふにふにの。」
「ふャ……いつもの姉たんの匂いだがャ……ぐずっ……」
「ミア……よかったですね。」
「ほんとだな……いつもの匂いだ。なんだか懐かしくなっちまう……な。」
「ほらほら、ティガ。もうちょっと詰めて。」
「ちょ。セレナ押さないで!シャル姉さんに被さっちゃう。ぐすっ…」
「被さっときなさい。狭いのよ、私たちの方。」
「セレナもティガにもーちょっとくっついちゃって下さい。私も詰めますので。」
とても賑やかに。穏やかに。感慨深く。姦しき姦しさ。
各々が広々としたベッドに身を寄せてひしめき合う。
「さて。じゃぁ始めましょうか。」
リリスがそう言うと、私の背中側からスッと何かの気配が伝わってくる。
背中を通り抜け胸へと、腕を伝いティガの方へ。
ふと目を向けると、薄紫の靄がローザの方へと流れてゆく。
「目を閉じて、力を抜いて…楽にしていてください。」
リリスの声が優しく響く。
皆は言われた通り静かに目蓋を閉じる。
同時に素肌へ微かに『何か』が触れる。
「無理に眠ろうとしなくても大丈夫ですよ。
『月影の間』の誘いは静かに自然に、いつの間にか行われます。」
肩に、腕に、指先に。
耳に、頬に、鼻先に。
つま先から太ももを緩やかに撫ぜるように。
背中からうなじ、頭を優しく包むように。
「あちらで…皆で会えるのを楽しみにしてますね。」
意識が静かに暗転してゆく。
いつもながら、心地の良い魔法……ね。
ひぃ
六名のセリフ回し辛い。
だが超楽しい。
キャラの書き分けできてますか……?
ご意見ご感想ご要望お待ちしてます。
服は着てくれ。




