第十一幕 「友達」
気兼ねなく話せる相手は大事
でもそういう相手でも気をつけなきゃいけない
「そもそも私にはそういう人は居ない。」
「なに似合わない事やってんのよ。」
ソフィアが面白く無さそうにレオン噛みついた。
「あんたはもっとバカで向こう見ずに突っ込んでいれば良いのよ。」
そう吐き捨ててボトルを煽った。
「…まぁ、なんだ。妙な気を使わせたみたいだ、すまない。」
照れてる様に大げさにレオンは頭をかいた。
「ソフィが言う事は確かなんだけれども。
レオン君はこれからはそうも言ってられない、王族としてのしがらみができるからね…。」
給仕からグラスを受け取りながらヴィクトルが言った。
「ボクが『極寒の死地』で陣頭指揮を行うのも、戦時下における
王族の威を示す重要な意味合いが有ってのことだからね。
ていうか、ボクこの中じゃ一番弱いし?」
自分は弱いのに酷いとこにいかされるんだ、王族だから!
という文句をソレを決定したであろう王の前で言外に愚痴り
王子は涼しい顔でグラスを煽る。
王もまた眉を上げて笑って見せている。
「セレナ様はともかく、お兄様より私の方が強いなんて事はありませんわ。」
すこし可笑しそうに微笑んだ。
「えっ、…アメリア様…?」
セレナがびっくりしてアメリアに非難するような目向ける。
「かの極地へたった5名で赴いて返って来たセレナ様は、間違いなく女傑の類ですわ!」
セレナを誇りに思ってるかのようにアメリアは鼻息を荒げた。
「アリー、お前とセレナ様も例外!女の子をそんなふうに言ったらダメだよ?」
と2人に目線を併せておどけて見せる。
「へい、ヴィクトル。…私は?」
目がすわってるソフィ。
「…えっ、ソフィは女の子扱いしてほしかったの?!」
わざとらしく大げさに驚いて見せる。
「あー、はいはい私が悪うございました。この身一つで
軍団一つを焼き尽くせる私はれっきとした化け物ですよぉー。」
やさぐれてボトルを煽るが、どうやら空のようだ。
「ソフィお姉様の炎と風のマナは、そこまでの領域に至っているのですか?!」
素直なアメリアは純粋に驚いている。
「ソフィア様の魔法!アメリア様は陛下の演説の時の花火をご覧になられましたか!」
「! はい!!とっっっても綺麗でした!!!」
年も近いセレナとアメリアが意気投合してソフィアのオリジナル魔法をはしゃぎながら褒めちぎる。
「あの演出は中々にニクかったよねぇ。アレ誰が考えたの?レオン…ではないよな?」
ヴィクトルがレオンを覗き込んで言う。
「ップハァ!そんな訳ないじゃないか、ヴィクトル。俺だってアレには驚いたんだ。」
緊張して喉が乾いていたのか、酒より爽やかな果汁を給仕から受け取り、一気にレオンは飲み干して言った。
「ってことはやっぱソフィの独断か。相変わらず変な魔法がスキだよね。」
ニヤニヤと笑いながら横目でソフィアを眺める王子。
「変なとは失礼ね、あの花火はアレでも3種のマナを合成して発動している上級魔法に類するユニーク魔法よ。」
フンッと鼻で笑いながら、手には次のボトルが用意されている。
何処まで呑むつもりなのだろう、この女は。と呆れた顔を向けるヴィクトル
「ということはソフィアは次の段階を目指すのに土属性の習得を選んだんだ?」
「え、何ヴィク。あんたアレの構成術式読めたの?!」
「読めたとかではなくて、土と炎の合成魔法による爆炎魔法の応用かな?って思っただけだけど。」
「…びっくりした。まぁ、言われてみれば爆発させてるんだからソレくらいの発想は魔術の基礎素養が有れば判ることかしら。」
「アレ、ドワーフ族が造る打ち上げ花火の構造を魔術だけで再現してるんだよね。多色の複数の球を構成して規模がバラバラな火輪が大小様々に咲いていたね。
ヘンな魔法と言いはしたけれども、凄い緻密な構成をしているって想像は出来る。」
「ソフィお姉様の花火魔法には枝が垂れるように重力に引かれて落ちながら煌めいている火花もありましたわ。」
「『星の環』の様に円球を囲む環が広がるものもございましたわ!わたくしアレが遠望水晶で見る星のように見えて感動いたしました!」
「時間差でパラパラと音をたてながら弾け散る物もありましたね。一つの爆発に複数の効果が入っているという事になるのでしょうか?」
「ワシは最後に上がった特大の大華が豪快で気に入ったわい。」
皆が思い思いに感想を述べてソフィアを褒めちぎっている。
「結構皆、よく見てるのねぇ…。」
開けたばかりのボトルに口を付けるのも忘れて、皆の感想に耳を傾けてるソフィは鋭い指摘にしばし酒の事を忘れていた。
そして、ふと疑問に思った事を思い出す。
「あ、そうだヴィク。」
「なんだい?ソフィ。」
「あんた、テラスで私がへべれけになってたのを知ってたけど。
何処で聞いてたのよ。」
「…別に家族と準備をしている待ち時間に窓の外から聞こえてきただけだけど?」
「ふぅん、窓ねぇ…」
「…何か?」
「別に?」
妙な雰囲気を纏わせた2人の会話でお喋りが一段落したところで。
ニコニコしながら子どもたちのやり取りをみていたエリオット王のところに先程の執事長がきて、小さく耳打ちをしていった。
「そうだったな、相わかった。」
と、言葉を発して子どもたちに声をかける。
「すまんが皆、私の本日最後の役割をこなさせてくれ。」
王がそう言うと、談笑していた彼らは何事かときょとんとする。
王はグラスを給仕に返し、壇上の中央を位置取り直す。
何かを始めるのかと察した英雄たちと王家の面々は一度の脇へとずれる。
「皆の物!今一度、一時を余にもらえぬか!」
王が声を張り上げた。
王と父を使い分ける意味は?
無いことは無いと思うんだ
「じゃないと生きづらくてしょうがない。」




