日々が流れていく
ヴァルドがいる日々が流れていく。
今のところ、私とフロストの正体はバレていない。
そして冬晴れの午後のこと。
「こんなに用意してもらって。助かるよ」
ヴァルドが用意した魔術アイテムを木箱で受け取ると、ミーチル村長は、ご機嫌で帰っていく。木箱を持つ護衛の戦士が村長の後に続く。
「ミア様、アルク様。お野菜の調達に行ってきます」
村長たちの後を追うように、ニージェも家を出て行こうとすると、フロストを抱いたソルレンが続く。
「フロストと散歩をしてくる。今日も天気が良く温かいから。いつも通り、オムツもちゃんと用意してある」
夜間勤務から帰宅し、昼過ぎまで寝ていたソルレン。
目覚めるとすぐに遅めのランチをとり、そしてフロストを連れ、散歩に行くのが日課になっていた。
散歩をするのは、太陽光を浴び、ちゃんと目覚めるためだ。昼夜逆転してしまうと、夜、眠りにくくなる。それを防ぐのが一番の目的ではあるが。
フロストが外に出るのを楽しみにしている。それはソルレンも分かっていた。よって午後の散歩が、最近の習慣になっていた。
「ではこれを持っていくといい」
そう声を掛けたのはヴァルドだ。
彼の手には、いつの間にか犬のぬいぐるみがある。
「これは触り心地がいい。泣き出した時に持たせると、涙も引っ込むだろう。そしてフロストの体温が下がると、このぬいぐるみが温かくなる。体温が上がれば、ぬいぐるみは元の状態に戻る」
ただのぬいぐるみではない。魔術アイテムだ!
「殿下、ありがとうございます!」
ヴァルドが作り出した、前世にもない便利そうな魔術アイテム。ソルレンが恭しく受け取った。その様子を見るにつけ、ソルレンはヴァルドの率いたロイヤル騎士団の一員だったのだろうと、やはり思えてしまう。
そういえばソルレンとヴァルド、騎士団の話、したことあるのかしら?
でもロイヤル騎士団は、騎士の数がとても多かった。
ソルレンがヴァルドを団長として認識していたとしても。
ヴァルドはソルレンが騎士の一人だったこと、覚えていない……?
あ、でもソルレンは、帝国の人間らしい髪色と瞳の持ち主で、あの体型。しかもこの村で戦士をしている。ヴァルドはすぐにソルレンが元騎士だと分かったと思う。そして自身の騎士団に、ソルレンが所属していたのではないかと、気が付いている可能性が高い。
「ミア」
不意にヴァルドに名を呼ばれ、顔をあげると。
そのすべすべの手が、頬に添えられている。
これには驚き、ドキドキしながらヴァルドの顔を見上げてしまう。
美しいアイリス色の瞳に、私が映っている。
ただそれだけで、甘美な気持ちになってしまう。
「洗濯物を取り込むか?」
私は何を期待し、ドキドキしたのだろう。
洗濯物というロマンスの対極にありそうな日常のワードが飛び出し、私の気持ちは一気にクールダウンした。
「そうですね。そろそろ取り込みます」
そう冷静に答えたものの。
そこで気が付いてしまう。
今、私、ヴァルドと一つ屋根の下、二人きりだと!
これまで周囲には誰かしらがいて、こんな風に二人きりになったことはなかった。
これは……ドキドキしてもいいと思う!
そう思ったが……。
肩を動かすので、洗濯物の取り込みは私がやっている。
ヴァルドは私が取り込んだ洗濯物をソファに運び、きっちり折り畳んでいた。
その景色はどう見ても、ドキドキからは程遠い。
どちらかというと、実に家庭的で平和だった。
日常の一コマ。
全ての洗濯物の取り込みが終わり、シーツなどをいれた籠を手に、ヴァルドが座るソファの方へ向かう。立ったまま枕カバーを畳みながら、思わずヴァルドに声をかけていた。
「……皇太子という立場の方が、洗濯物を畳んでいるなんて、なんだかシュールです」
私の言葉にヴァルドは、ブロンドの髪をサラリと揺らし、顔を上げる。























































