大好きだ。
百年戦争が終結し、ヴァルドはその才能を政治の場で生かしているようだが、帝国は確かに閉鎖的。特につがい婚姻などを、皇族自体がやっているのだから、保守帝国なのだろう。でもそこに風穴を開けようとしているヴァルドには、逆風が吹いている……。
それを思うと、助けてあげたいな、支えてあげたいな――という気持ちに自然となってしまう。
まあ、ヴァルドからしたら、私のサポートなど最も受けたくないだろうけど。
「こちらですか、ミア様の家は?」
「あ、はい。そうです。送ってくださり、ありがとうございます」
家の門の前で、ノルディクスと向き合う形になった。
あの日、父親からの知らせを受け、「後は任せた」とノルディクスに告げ、私は王都へ向かった。まさかあれがノルディクスとの唐突な別れになるとは、思っていない。しかも私との婚約の話が出て、それを心から嬉しいと思っていてくれたなんて……。
ノルディクスのことは、嫌いではない。
大好きだ。
私を支えてくれた戦友。
戦友としての絆が、彼との間にはあると思った。
「団長様。子供ってとても可愛いですよ。心がすごーく温かくなります。団長様ならきっと、素敵なパパになれると思うのです。すぐには無理かもしれません。でも時が経ち、前へ進みたいと思えたら、進んだ方がいいと思います。どうか幸せになってください」
「……ミア……様」
月明かりに照らされたノルディクスの瞳が、潤んでいるように見える。
本当は王宮に私はいない。
そこに私がいると思い、病の回復を願い、自身の結婚を諦めないで欲しいと思った。でもそれは言えないので、精一杯で伝えた言葉だったが、分かってくれたようだ。
これにはホッとした。
「ありがとうございます。ミア様もどうかお幸せに」
そう言ったノルディクスが、手の平をこちらへ向けた瞬間。
それはもう、三年間。
戦場を共にしていたから。
勝利を収め、喜びを込めたハンドシェイク。
体に染みついた習慣だった。
当たり前のようにノルディクスと、そのハンドシェイクを交わし、笑顔で見送った後――。
家の扉を開け、室内の明かりを浴びた時に「え」と思う。
どうして、ノルディクスはあのハンドシェイクを。
そこでじわじわと理解してしまう。
ノルディクスは……私が誰であるか、分かっていたのでは!?
つまり、私がミア・ソフィア・マリアーレであり、リヴィ団長であると見抜いていた……!
でもそれは当然と言えば、当然だった。
三年間。
ほぼ毎日、寝食を共に過ごしたのだ。
実の弟であるタリオよりも、ノルディクスやコスタ達、マリアーレクラウン騎士団と過ごした時間は、濃密だった。
そうか。
きっとコスタも気づいている。
気づいているが、黙っていてくれているんだ。
この村を目指した時。
サンレモニアの森にいる彼らにバレたら、困ったことになると考えてしまった。だがそんなこと、なかったのだろう。事情を話せばみんな、私がこの村へ逃げのびるのを助けてくれたはずだ。
もしあの日、あの時、帝国を経由し、この村を目指さなければ――。
私は魅了魔術を発動させることなく、ヴァルドの純潔を奪わずに済んだのだろうか?
「あ、ミア様、お帰りなさいませ」
「ただいま、ニージェ。フロストはもう、眠っているかしら?」
もしもは考えても仕方ない。
過去には戻れない。
進むことができるのは、未来だけ。
私に気づいているのに目をつむってくれた彼らのためにも。
ちゃんと私、幸せになろう!
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