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闇の眷属、俺。-進化の階梯を駆けあがれ-  作者: 山口遊子


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第70話 コロちゃんキター!


 あっけない。ただ一言、あっけない。


 Bランクのパーティーが全滅することもあるというシルバー・ファングの群れ。現に目の前ではBランクのパーティーの連中の半分喰われてしまったむくろが転がっている。それが、俺が駆けつけるまでもなく一瞬で全滅してしまった。


 俺が心配しても仕方がないが、迷宮都市はこんなことで大丈夫なのか?


『こいつらで、シルバー・ファングはおしまいなのかな?』


「最近現れたという話ですからこの群れだけ5層に迷い込んだのかもしれませんね」


『全然、遊べなかったな』


「普段シルバー・ファングといえば、10層くらいにいるモンスターのようですから。わたしたちの実力からいって、20層くらいまで潜らないとまともな敵は出てきそうにありませんね」


「すごい。私たちすご過ぎませんか?」


『普通だろ? なんなら、アズランの何とかいうアサシン組織、叩き潰しに行ってもいいぞ。皆殺しにしてしまえば、アズランをはめたとかいうヤツも自動的に殺すことになるだろ?』


「それ、いいですねー。アズラン、そうしない? っちゃおうよ」


「まあ、私もいくらかは世話になったところもある組織ですから皆殺しにしなくてもいいかな」


『そうか? その気になったら言ってくれ。俺とトルシェはいつでもいけるからな』


「はあ。わかりました」



 床に転がっていた銀の冒険者カードが目に付いたので、ひとつ拾い上げて、


『そういえば、死んだ冒険者の冒険者カードを届けるとかそんな決まりはないのか?』


「え? それは、何のために?」


『冒険者が死んじゃったことをギルドが把握するため』


「把握してどうするんですか?」


『さあ。要はそんなことはしてないってことだな』


「そんな決まりは聞いたことはありません」


『なるほどな。それで、これからどうする? やることなくなったな』


 俺は手に持った銀の冒険者カードをそこらに投げ捨てた。


「困りましたね」


『そうだ、ここの喰い残しをコロに食べさせてみるか? どうせ、そのうちダンジョンに飲み込まれるならコロに食べさせた方が良いからな』


「何かコロに変化がありませんかね。進化するとか」


『そうなればうれしいのだが、どうだろうな。やってみればわかるか。意外とスライムが捕食(ほしょく)で強くなるって()()があるかもしれないしな』


 床に置いた鉄箱の蓋を開けて、


『コロ。出てきて、そこらに転がっている死骸を食べてみろ』


 ちゃんと俺のいうことが分かるようで、ゆっくりと箱から出てきたコロがシルバー・ファングたちに食い散らかされた、かつてBクラスのパーティーだったらしい残骸に這い進んでそれを食べ始めた。


 2、30分でダンジョンの中に吸い込まれてしまう死骸だが、ものの5分ほどでコロは自分の体の数十倍、いやそれ以上の死骸を食べつくしてしまった。


 食べ終わったコロは自分で鉄箱の中に入ってしまったのだが、出て来た時より明らかに動きが早くなっている。しかも、あれだけのものを食べたのにもかかわらず、丸いけれども、まるで大きさが変わっていない。


 コロが死骸を食べている間、進化したのかどうかは確証はないが、動きがあれだけよくなっているところを見ると、多分進化したはずだ。ご主人さまの俺だからわかる。


 俺の隣にいたアズランが目を輝かせて、コロが死骸を捕食する姿を見つめていたのだが、


「これが、スライム。欲しい……」とボソリとアズランが一言。


『フフフ。ペットとしては最高だろ?』


「ダークンさん。コロちゃん、すごいですね」


 こっちは、相変わらずの能天気(のうてんき)声のトルシェ。


『トルシェにもコロの良さがわかったみたいだな。これで本当になにもすることがなくなったから、新拠点に戻って一休みでもするか? コロの進化も確かめたいしな』


「そうしましょう」


「私が鉄箱を持ちます」とアズラン。


『いや、アズランが持ったら邪魔になっちゃうだろ。重いし大きさ的にも』



 新拠点への帰りは、道を覚えているというアズランが先頭に立ってくれたので何事もなく下り階段までたどり着くことができた。途中で出会ったモンスターはトルシェがかなり遠くから瞬殺していた。その中には冒険者がいたかもしれないが、確認してはいないので何とも言えない。


 碁盤の目を過ぎて最後の階段を駆け下りるように下りて拠点の階層に戻った。


 ふだんトルシェが300段ある階段をぴょんぴょん上り下りする気持ちがなんとなくわかった。かな?



 通路に湧いたスライムをプッチしながら新拠点に戻り、さっそく大広間の鑑定石の上にコロを乗っけて進化しているのかどうか確認した。


『二人ともよーっく聞いてくれよ。それでは、注目の鑑定結果は~。ジャカジャン!』


<鑑定石>

「鑑定結果:

種族:ブラック・グラトニー(幼体)

種族特性:捕食力が非常に高い。あらゆるものを捕食の対象とする。

死ぬと猛毒の黒い液体になる。

黒い瘴気(しょうき)をまき散らす。その瘴気は触れたものに幻覚、催眠、毒症状、麻痺(まひ)、石化、即死などの状態異常を引き起こす。

触手を伸ばすことができる。触手ももちろんあらゆるものを捕食できる。

次の進化先:ブラック・グラトニー(成体(せいたい))」


 進化してた! それもえらいのに進化したようだ。石化、即死ってとんでもないぞ。これこそ、テイムの醍醐味だいごみ


 あらゆるものを捕食の対象とするとあったが、コロちゃんは頭がいいらしく、ちゃんと鑑定石は食べていない。いい子だ。


 俺ほどのテイマーはそうそういまい。


 まてよ、テイマー? ちょっと違うよな。調教師? もっと違う。そうだ! これからは、ぐっとシックに名伯楽(はくらく)おのれのことを呼ぶとしよう。フフフ。時代が俺を呼んでいる。『名伯楽(はくらく)、ダークン』いい。実にいい。


「また、カッコいいのがキター! 次は、成体に進化か。そしたら相当強くなりそうですね!」


『それはそうだ、俺のコロちゃんだからな、ワハハハ(カタカタカタカタ)


 何も言わず、じっとコロちゃんを見つめるアズランの目が怖い。


『アズランは、スライムじゃなくて別のかわいいモンスターを俺みたいにテイムしたらどうだ?』


「スライム以上に、かわいいモンスターっているんですか?」


『さあ。俺は知らん。トルシェ、何か知ってるか?』


「そうですねー。モンスターとは言わないかもしれませんが、ピクシーってどうでしょう?」


『ほう、ピクシーっているんだ?』


「わたしも見たことはありませんし、どこにいるかもわかりませんけど、きっと見つけてテイムしたらかわいいと思いますよ」


「ピクシーですか。ピクシーもいいかも。それなら鳥かごを用意しとかないと」


『俺のいたところではな、むかし、鉱山の中の人の行き来のない坑道に入るとき鳥かごに鳥を入れて入ってたそうだ』


「それは、またどうして?」


『鳥は、有毒ガスやらなにやらにすごく弱いんだと。人より先に鳥が死ぬから、鳥が死んだらすぐに引き返すんだそうだ』


「ダークンさん、まさか私のピクシーをそんなことに使いませんよね?」


『アズラン、まだ捕まえてもいないピクシーを私のピクシーとか言うなよ。それに俺たちにはガスなんて効かないんじゃないか』


「よかったー。それじゃあ、いつピクシーを捕まえてもいいように鳥かごを買いに行きましょうよ」


『行くのはいいが、どこに売ってるんだ? トルシェ、知ってるか?』


「雑貨屋をみて、そこになかったら、家具屋かどこかで作ってもらうんでしょうか」


「街に行けばきっと売ってますよ。早く行きましょう」



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