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闇の眷属、俺。-進化の階梯を駆けあがれ-  作者: 山口遊子


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第45話 その先へ、そして……


 なんとかゴーレムをたおすことができた。


 相性の問題もあるのだろうが、先の『炎の巨人』と比べて、今回のゴーレムの方がそうとう手ごわい相手だった。


 しかも、落とし穴に落としただけなので実際にたおしたのかどうかはわからない。妙なところで出くわしたくないものだ。


 運よく勝てたのはわれらが(しゅ)のご加護(かご)に違いない。俺はご神体(しんたい)さまの置かれた方向に目星をつけて『二礼、二拍手、一礼』の礼拝をおこなった。


 むろんトルシェもちゃんと礼拝をした。今回礼拝の最後に一礼した時、なにかこう、胸の辺りがククッと来たような? そんな気がしたのだが、気のせいかもしれない。



 俺たちは、ゴーレムが現れた通路の先を確認するため、そちらに引き返すことにした。


 そうやって歩いていると、ボコボコにへこんだりひずんでいた俺の防具が勝手に元の無傷な状態に戻ってきた。


 鎧の中で、カラカラ音を立てていた俺の部品もどこかにくっ付いたのか、音がしなくなっている。


 これまで、これほど痛い目に遭ったことがなかったから実感なかったが、鑑定で見たヘルメットの『自己修復』、これはすごいわ。


 メンテフリーどころか壊れたものが直るんだものな。鎧自体は鑑定していないが、おそらく『自己修復』がついているのだろう。


 先ほど戦った場所まで戻ると、トルシェが初撃で放った特大『ファイア・ボール』でえぐられた箇所は、元の通路に戻りかけていた。便利なものだ。道路工事にこの技術を応用できれば重宝(ちょうほう)しそうだ。


 さて、あれだけの力を持ったゴーレムだ。ゴーレムがいたこの先にはきっとすごいものが隠されているに違いない。


 そう思ってその先にしばらく進んだところ、通路の右手に5メーター四方の窪みというか小部屋があった。小部屋の入り口の床の色が幅50センチくらいで石の目というか模様が周りの石と異なっている。そのうえ、その色違いの個所の両側にそれぞれ5ミリほどの隙間すきまがあった。


 こいつはきっと石でできた扉で、ずっと向こうのスイッチを踏んだことで、石で出来た扉が床まで下がって、小部屋の中にいたゴーレムが外に出てきたのだろう。


 ただの予想だし大した意味はないが、こういった仕掛けがこのダンジョンの中にあることは覚えておこう。


 とりあえず小部屋の中に入ってみたが、見た目の通り何もなかった。こんなところにずっとあのゴーレムがいたのか。


 よく考えると、スイッチの場所と、こことの間に、落とし穴があったのがせぬ。向こうのスイッチを押したまま放っておいたら、俺たちが何もしなくてもあのゴーレムは勝手にあの落とし穴に落ちた気がする。ということは、あのスイッチは、こことは関係なかった可能性も出てくる。


 何もなかった部屋を出て、また通路を先に進んで行く。


 その先の通路にいたのもムカデばかりで、かわったものは今のところ見つかっていない。


 そういえば、ムカデはスライムと違って結構重さがありそうだが、スイッチを踏まないのだろうか? そこも謎だ。


『ムカデばかりだな』


『そうですね。そろそろ飽きてきました』


 そういったトルシェはリュックの中から水袋を取り出し一口飲んだ。


『まあな。とりあえず、この通路を行けるところまで行ってみるとしよう。下り階段があるものなら見つけたいしな』


『了解です』




 そういうことで、二人してさらに先に進んで行く。


『おい、トルシェ。そこの床、また何かの仕掛けみたいだぞ。大きさからいって落とし穴じゃなさそうだからまた何かのスイッチじゃないか』


『どうします? 踏んでみますか?』


『そうだな、さっきのスイッチも奥の方で音がしただけだったしよくわからないが、押さないわけにはいかないだろう。それじゃあ、さっきみたいに俺が踏んでみるからトルシェは後ろにさがって隅の方で用心していてくれ』


『ダークンさん、気を付けてくださいね』


『ありがとう、気を付ける』


 カチッ。


 またあのスイッチの入る音がして、今度は俺のすぐ後ろ、トルシェとの間の左右の壁が石をすり合わせる鈍い音を立てながら横に動き始めた、このままだとその壁で通路が(ふさ)がってしまい、トルシェと離れ離れ(はなればなれ)になってしまう。


『トルシェ、急いでこっちに来い』


『あわわわわ』


 大慌(おおあわ)てで、トルシェが俺の方に走り込んできた。


『フー、怖かったー』


 そこまで泡を吹いて急ぐほどの速さで壁は動いてないだろ。まだ開いてるじゃないか。


 試しに、もう一度スイッチになっていた床を踏んでみたら、


 カチッ。


 再度スイッチの入る音がして、今度は壁が反対方向に動き始めて元の場所に戻ってしまった。


 何も急ぐ必要はなかったようだ。こういう時はお互い気まずいので何か他の話題を話そう。


 と言っても、今の壁くらいしか話す話題がない。


『別にそんなに急ぐことなかったみたいだな』


『そうみたいですね』


 どことなく気まずい風が吹いたような、吹かなかったような。


『とにかく気を引き締めていこう』


『はい』



 そのまま、しばらく進んで行ったのだが、


『おい、今後ろの方で音がしたと思うんだが、トルシェ、聞こえなかったか? ほら今も』


『聞こえました』


『後ろに何かいると挟み撃ちされる可能性もあるから確かめてみよう』



 少し引き返して、目に入ったのは、あのゴーレムだった。さっきのゴーレムと全く同じゴーレムなのかは不明だが見た目はあのゴーレムだ。そいつがこっちに向かって歩いて来る。


 まずいな。どうする俺? そうだ!


『トルシェ、あいつをハメ技でたおすぞ』


『ハメ技?』


『そうだ。ヤツをさっきの左右から閉じて来た壁で押しつぶしてやろう。行くぞ』


『壁よりあのゴーレムの方が硬そうですが?』


『うーん、だが今はそれしか思いつけない。やるだけやってみよう』


『はい』



 スイッチになっている床まで急いで戻り、ゴーレムが罠の壁までやってきたらタイミングを見て床のスイッチを踏み、左右の閉じる壁でヤツを押しつぶす。いけるはずだ。


 少しずつゴーレムが近づいてくる。額を見ると、あの模様だか字がない。先ほど落とし穴に落っこちたゴーレムの可能性が高くなった。どこからともなく舞い戻ってきたようだ。


 よーし、そのままこっちに来い。よし、今だ!


 少し浮き上がっていた床の上に軽く置いていた右足に体重を乗せて押し込んだ。


 カチッ。


 ゴゴゴ、と石が()れながら左右の壁が動き始めた。ゴーレムはそんなことにはお構いなしにまっすぐ歩いて来る。


 やった、ハメたぞ。左右から押し出してきた壁に挟まれてゴーレムがそれ以上前に進むことが出来なくなった。ちょうど動く壁の真ん中あたりで立ち往生(おうじょう)している。なかなかいい場所にはめることができた。


 ゴゴン、ゴゴン、ゴゴン、バリ、バリバリ、…… ゴーレムを押しつぶそうと石の壁が音をたてて閉じようとするのだがゴーレムを押しつぶすことができず、石の破片が飛び散り始めた。


 こいつは硬すぎる。やはりだめだったか。そうだ!


『トルシェ、あのゴーレムの体を思いっきり冷やすことはできないか?』


『やってみます』


 両手を前に突き出して、トルシェが、


『「フリーズ!」、いっけー!』


 トルシェの前に伸ばした両掌りょうてから青白い無数の光の粒々がゴーレムに向かって放たれた。


 それを受けたゴーレムの表面が白く変色し始め、その範囲が急速に広がっていった。そして、


 バキッ、バキッ、ボキ…… 


 とうとう、ゴーレムの体に亀裂(きれつ)が入り始めた。


 いける。


 もう一度、床のスイッチを押して左右の壁がゴーレムを押す力を少し緩めてやったら、ゴーレムは半歩ほど前に進み、壁がまだ(いた)んでいないところまできた。そこで、もう一度スイッチを押して左右の壁がゴーレムを押しつぶすのを待つ。こんどは、石の破片は飛び散っていない。


 バキッ、バキッ、バキ! バキーン、ガシャ、ガシャガシャ……


 やったな。


 壁が20センチほどの間隔を残して停止してしまった。


 もう一度、スイッチの床を踏んで、壁を開く。


 ゴゴ、ゴゴゴゴ……


 床の上にはバラバラになったゴーレムの破片と両手のひらでおおえるくらいの大きさの水晶っぽい玉が一つ転がっていた。



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