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闇の眷属、俺。-進化の階梯を駆けあがれ-  作者: 山口遊子


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第42話 新たな探索、一層下へ


 トルシェも序列一位の俺の他意(たい)のない冗談に怒った振りはしたもののすぐに機嫌(きげん)を直したようで、


『そろそろ行きましょうか』


『トルシェ、忘れていることがあるだろう、俺も今まで忘れていたんだがな』


 ご神体さまに向かい起立。


 これで、トルシェも察したようで、そろって起立し、


 二礼、二拍手パンパン、一礼。両手にガントレットをはめ直し準備完了。


 西洋風全身鎧を着た怪人物(かいじんぶつ)が二礼二拍手一礼をしているところを第三者の目で見るとどんなものだろうかとふと思ったが、他人の目を気にする必要など微塵みじんもない。ただしゅに対する真摯しんしな気持ちが大切なのだと思い(いた)り、最後の一礼は深々と行った。


『探索、再開だ』


『はい』


 ちなみに『暗黒の聖水』が一杯に入った水袋は3個ほど俺がリュックの中に入れて持ってやっている。



『しかし、このブラック・スライム、飽きもせず湧いてますよね。これを何かに利用できればいいんですがね』


『こいつら、金物かなものは溶かせないようだから、蓋の付いたかなバケツにでも入れたら連れて歩けそうだがな』


『金バケツって金物でできたバケツってことですよね。雑貨屋に売っているのは木製のバケツしかありませんから、鍛冶屋(かじや)で作ってもらわないといけませんね。ところで、ブラック・スライムを連れ歩いてどうするんです?』


『なんだか、スライムってテイムすればカワイイかと思ってな』


『テイム?』


『そう、テイム。知らないのか? まあいいや、要は子分にするってことだな』


『それじゃあ、わたしはダークンさんにテイムされちゃったんですか?』


『おまえは俺にテイムされたわけじゃないが、結果は同じだからテイムされたと思っていても間違いじゃないな』


『ちょっとそれはイヤなような』


『冗談だよ。おまえと俺は、この指輪と、おまえのその指輪で(たましい)でつながっているんだからな』


『「魂でつながっている!」いい言葉です。グフフフ』


『分かっただろ。こんど街に行ったら、かなバケツだな』


 そう言いながらも、いつものように、スライムを容赦(ようしゃ)なくプッチしながら歩いていく。行き先は、いままで前を通っただけで、通り過ぎていた下り階段だ。


 『闇の神殿』からそんなに歩くこともなく階段の下り口にたどり着いた。


 上からのぞいた階段は、やはり黒い(かすみ)がかかっていい雰囲気(ふんいき)だ。この瘴気(しょうき)っぽいものを見ていい雰囲気だと感じるあたり、いい塩梅あんばいに俺の精神も『闇の眷属』としてちゃんと成長を続けているようだ。


 トルシェと並んで、おそらく300段ある階段を下りていく。最初、1、2、3、と数えながら下りていたのだが、トルシェに話しかけられたりしているうちに、すぐに数が分からなくなった。


 最終形態(さいしゅうけいたい)スケルトンになったからといっても、頭の中身がバージョンアップしたわけではないらしい。


 約300段を下りきったそこは、上の層と変わることはない黒い石で組まれたような通路のある階層だった。通路は一本道で階段を下りたところから左に折れてそれがまっすぐずっと続いている。そしてその通路には、てかてか黒光りした長さが2メートル、太さが太いところで20センチは有りそうなムカデがそこら中でうごめいていた。


 普通のムカデと違うのは、ちゃんと目があることで、30センチほどの触角(しょっかく)が頭の左右に伸びていて、その触角の付け根の間に2つの赤く光る眼が2列、計4個ついている。


 頭には左右に大きく張り出したあごも付いていて、何でも砕いてしまいそうな不気味さがある。


『むかしはこういったムシは全然ダメだったんですが、今は何でもないです。不思議なものです』


 トルシェは落ち着いたものだ。それに比べ文明スケルトンの俺はどうもムシは苦手にがてだ。しかも俺は接近戦しかできない。『スティンガー』を投げて一撃でたおしたとしても、まわりのムカデが寄ってきたらたまらない。


 ここは素直(すなお)に遠距離狂戦士のトルシェ君に花道(はなみち)を譲ろうではないか。


『トルシェ、頼んだ』


『はい。それじゃやっちゃいます』


 突き出した右手から、今度は真っ白に輝くムチのような物が現れた。そのムチがくねりながら通路の壁に取りついていたムカデを打ち()えた。


 ジュー。


 熱く熱した鉄板の上にバターを乗せた時のような音をたてて、ムカデが丸くなって床に落ち、そこで、部品がバラバラになってしまった。つやのあったムカデだったが安物の炭にでもなったように光沢はなくなっていた。


『今のはなんだ?』


『見たまんまの「光のムチ」、ライト・ウィップです』


『名前のまんまだな。で?』


『はい。「光のムチ」が当たった水気みずけのある対象は、水分を失って、炭になっちゃいます』


 また、凶悪なのを。ドライヤー魔法の究極(きゅうきょく)発展形なのか?


『えへへ、ダークンさんの教えてくれた火の玉操作を続けていたら、たいていの魔法は思っただけでできるような気がして、やって見たらできちゃいました』


 できちゃいました、ねえ。やっぱりこいつは魔法の天才だった。いつかは花開くべき才能の(つぼみ)を、俺がちょっとだけ押してやっただけだ。俺も今回は苦手なムシを前にして謙虚(けんきょ)になったようだ。


『それなら、どんどんムカデをやってくれ』


『はい』



 通路にはムカデの炭がそこら中に散らばって散々なことになったのだが、どうせ2、30分もしたらダンジョンに飲み込まれてなくなるのだろうから邪魔にはならないだろう。


 この炭がなにか役に立つものなら拾ってもいいが、いまのところ何の役にも立ちそうもない。一つだけ記念にとリュックの中に入れておいただけで、後は放っておいた。



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