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闇の眷属、俺。-進化の階梯を駆けあがれ-  作者: 山口遊子


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第36話 大迷宮


 目に入った緑のゴブリンたちをトルシェが穿孔光弾せんこうこうだん薙ぎ払(なぎはら)っていく。そのため俺には全く出番がない。


『なあ、トルシェ』


『はい、何でしょう?』


『おまえ、黙って穿孔光弾せんこうこうだん()ってるけど、そういう魔法って呪文とかいらないものなのか?』


『普通は呪文が必要ですが、さっき始めたばかりの穿孔光弾せんこうこうだんにはそもそも呪文がありません』


『え? そんなのでいいのか。「ファイア・ボール」のときも呪文を唱えてなかったよな』


『そういえば、そうでした。「ファイア・ボール」って叫んだら、できちゃったんで、呪文を唱えるのを忘れてました。テヘ』


 ここで『テヘ』が来ちゃったよ。使い方を間違ってるような気がするが、どうなんだろう? 『闇の眷属』がカッコカワイイ路線を突っ走っていいのだろうか? まあ、いまさらか。



『見えてきました。あそこにある孔が、向こうの「大迷宮」につながっているんです』


『あの孔か。俺も一度前を通りがかったとき、何かな? とは思ったが、向こうにフラフラ探検しに行かなくてよかった。スケルトン姿の俺が、向こうに行ってたら、間違いなく冒険者連中に袋叩(ふくろだた)きに遭っていたろうからな。いまならこの鎧のおかげで、人間に見えるだろうから、いきなり襲われることもなさそうだ』



 孔の前までやってきて、ざっと入り口から中をのぞいたトルシェが、


『わたしがこの孔に最初に入った時は、明かりがないと足元も見えないほどすごく暗く感じたんですが、いまだと全然気になりませんね。さすがは「闇の眷属」、ダーク・エルフ』


『狭そうだから、俺が先に行く』


『了解しました』



『大迷宮』本体に続く孔の中。トルシェの言うように暗さを意識することもなく通れるようだ。


『狭くはあるが、何も問題なく通れるな』


 

 孔を通り抜け『大迷宮』側に出てみると、そこは俺がいた石組みされたようなダンジョンではなく、自然の洞窟のような感じだった。しかも、暗がりに慣れていた俺には結構明るい。


『ここが「大迷宮」の本体か。ずいぶんと明るいな』


『そうですねー。わたしもこの明るさには驚きです。

 上り階段までの道はだいたいわかりますから、わたしが先を歩きます。ダークンさんはわたしに付いて来てください』


『はいよ。任せた。それで、ここは「大迷宮」のどこら(あた)りになるんだ?』


『えーと、「大迷宮」の5層の北東のどこからしいです。実際、「大迷宮」はどうして「大迷宮」っていうのかというと、『大迷宮』が見つかって120年、1層でさえまだどこまで広がっているのか確認されてないからなんです』


『そうなんだ。それじゃあ、深さはどのくらいあるんだ?』


『現在、最深部を目指しているのが、ちょっと前に説明した、Sランク相当の2パーティーです。いまのところ、14層を探索中で、15層への階段を探しているって先日聞いたことがあります』


『結構浅いのな。でもそれだと、どこまで深いのかはさっぱりなわけだ』


『そういうことになります』


『お、コウモリだ。トルシェ先生、やっちゃってください』


『「穿孔光弾(せんこうこうだん)!」 いっけー』


 トルシェが腕を突き出して、一なぎ。それで、5、6匹いたコウモリが煙を残して消えてしまった。完全にオーバー・キル。


 まあ、コウモリを拾ったところで何になるわけでもないので構わないが、これから階層を上がるにつれて、ますます敵が弱くなっていきそうだが、どうする?


『トルシェ。「穿孔光弾」は、ここでもやりすぎみたいだから、もっと抑えた魔法でいかないか?』


『それでしたら、「穿孔光針(せんこうこうしん)」、ピアシング・ライト・ニードルはどうでしょう?』


『い、いつの間にそんな魔法を?』


『今思いついただけです。それじゃあ、あそこに見える、大ネズミ、いっちゃいます。「穿孔光針」』


 右手のひらを広げて突き出した先から無数の光の糸が大ネズミに向かって伸びた、と思ったら、大ネズミが消えて、洞窟の床の上に赤黒い塊ができあがり、そこから湯気が上がっていた。貫通した光の糸がその先で洞窟の壁を大きくえぐっている。


『針って言ってたけど、糸じゃないか。それに数は一本じゃなかったのか?』


『一本? そんなのみみっちいじゃないですか』


『だけど、威力を落とさないと、あれじゃあ、やりすぎだろ』


 湯気を上げてた赤黒い塊が、じゅるりとずれて、床に広がった。


『そういえば、そうでした。すっかり頭の中から飛んでました。……あれ、向こうに見えるのは、冒険者のパーティーみたいですよ。ダークンさんどうします。っちゃいます?』


 そう言いながら、右手を伸ばして、先をいく冒険者のパーティーの方に向けている。


 トルシェの以前の性格を知らないから何とも言えないが、こいつは相当きてるぞ。うかうかしていると、『闇の眷属』の序列(じょれつ)第1位を奪われかねない。俺もしっかりせねば。


『ここでっちゃったら、後で面倒になるかもしれないだろ。それに、俺たちは『闇の眷属』かもしれないが、犯罪者じゃあないんだ』


 ちょっと俺、今いいこと言ったんじゃないか?


『ダークンさん、堅いですねー。ミンチにすれば後腐(あとくさ)れなんてありませんよ。まあ、ダークンさんがそう言うんなら、見逃しますか。ここから「穿孔光弾」なり「穿孔光針」を撃ち込めば一撃なのにもったいない、もったいない』


 トルシェのヤツもったいないお化け始めちゃったよ。こいつの手綱(たづな)をちゃんと引き締めてないと、何かやらかしそうで、こっちが怖くなるぞ。


 洞窟の先方に見えていた冒険者が見えなくなったので、また、トルシェの先導で上り階段に向かって行った。



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