第29話 探索再開
ドラゴンの残った片目を探すという大きな目標が出来た。
動き回っていればそのうち手掛かりが見つかるだろうというくらいの軽い気持ちでいるのだが、わが眷属はそうでもないらしい。
『ダークンさん、どこに行きます? ダークンさんのまだ行ったことのない場所がいいですよね!』
『ね!』って言われてもなー。行ったことのないところは、おそらく危険なんだよ。
『それじゃ、元の通路の反対側にも通路がつながっているからそこに行ってみるか? たぶんだがその通路はぐるっと回って、俺たちの拠点の方に回ってると思うんだがな』
『とにかく、行ってみましょう。さあさあ、早く行きましょうよ』
『分かった、分かった』
『返事は一回でお願いします』
『はい、はい』
『もう』
そう言って、トルシェがすたすた先に立って、通路への出口向かって歩き始めてしまった。慌てて後を追い、そこからは並んで通路を歩いていった。もちろん、スライムは見つけ次第殺している。
しばらく歩いていると予想通り、左へ曲がる曲がり角に出た。その手前で、通路の先にゴブリンなどいないことを確認してから角を曲がり、その先を歩いていく。
やはり、あの上り階段がその先の右手に見えてきた。
『一周したみたいだな』
『どうします?』
『上に上がってみるか? 上は、おまえが倒れていた階層だ。俺もまだあの階層は少ししか回ってないんだ』
『嫌なことを思い出させないでくださいよ。でも、ダークンさんがまだ少ししか回ってないところなら行ってみましょう』
そういうことで、階段を上ることにした。上をみると、階段がどこまでも続いているように見える。
『この階段、嫌になるほど長いよな。一体何段あるんだろ? 300段くらいありそうだが、数える気にもならない』
『ダークンさん、ここも「大迷宮」の中なので、おそらく300段だと思います』
『「大迷宮」だと、300段なのか?』
『はい、今まで分かっている「大迷宮」の階層をつなぐ階段はどれも300段だったそうです』
『そうなんだ。だれがこの迷宮を作ったのかは知らないが、ずいぶん迷惑な話だな』
『もしかしたら、われわれの「常闇の女神」さまかもしれませんよ』
『こら、その名を口にするな! バチが当たっても知らんぞ。しかし、その可能性もあるかもな』
ちょっと前にでっちあげた神さまがこのダンジョンを造ったという可能性は、完全、究極、アブソルートリーゼロだが、雰囲気を出すためだけに、トルシェのばかげた言い分に『可能性もあるかもな』などと言う、自分でもなにを言っているのかわからない言葉をつぶやいてうなずいてやった。
こんな階段をえんえんと上っていると、疲れたわけでもないのに、会話もなくなり、だまってただ足を動かしているだけになった。
そして、とうとう最後の300段。
上り切って振り返ると、やはり、黒い靄が渦巻いている。
『やっぱりあれは瘴気だよな?』
『そうですよね。「闇の眷属」ってある意味最強ですね。何かあればあそこに帰ってじっとしていれば誰もあの中に入って行けませんから』
『まあ、そういう考え方もあるな』
『そうだ、ダークンさん、ご神体を拝んでおきましょう』
『トルシェ、よく気付いてくれたくれた。トルシェに言われなければ忘れるところだった。ご神体さまはあっちの方角だよな?』
『いえ、そっちじゃなくて、あっちの方じゃないですか?』
『そんなことないだろ。まあ方向は適当でいいや。気は心。ちゃんと拝めばいいんだよ』
『そんな適当でいいんですか?』
『さっきも言ったろ。気は心って。それじゃあ、行くぞ。一礼、二礼』
カン(パン)、カン(パン)
『一礼。よーし。これでまた「名前を口に出すことが憚られる神さま」の徳が上がったはずだ。いずれご神体さまに魂が宿る。その日は近いぞ!』
『われわれの「名前を口に出すことが憚られる神さま」はちょっと長くて言いづらくありませんか?』
『それもそうか、それなら、これからは、「わが主」と言うことにしよう』
『かなり短くなりましたね「わが主」』
『まーな。よし、それじゃあ、探検を始めるぞ。
それで、おそらくこの階層は碁盤の目のようになっている。碁盤の目って分かるよな?』
『分かります』
『通路と通路の交わっている場所に近づくと、手前からじゃ左右の通路が見えないぶん危険だ。気配を感じられたらいいんだがな。だから、まず最初は、ぐるりと周りを一周してみようと思うんだがどうだ?』
『そうしましょう』
今度は左に進むことにして、トルシェと話をしながら歩いている。
『おそらく、ゴブリンが出てくるからな。まあ、あいつらはザコだからたおしても腰布くらいしか役に立つもの持ってないしな』
『ザコって、まさか、あの緑色のゴブリンのことを言ってるんじゃないですよね』
『俺は、緑のゴブリンしか見たことないぞ』
『あれは、おそらく、変異種か上位種だと思います。通常のゴブリンは薄汚い灰色の皮膚をしていて、めったに冒険者を襲うことはないモンスターなんです』
『そうなのか? ずいぶん弱っちーと思ったがな』
『ようは、ダークンさんは、俺TUEEEがしたかったわけね』
『そんなんじゃない。ただあいつらは弱いと感じただけだ。トルシェ、どうしておまえが、俺TUEEEなんて言葉を知っているんだ?』
『さあ、天啓? というより、わたしとダークンさんとの魂のつながり? とか』
『ほんとかよ。だが、そんなこともあるかもしれないな。今こうして口に出さずにしゃべってるのも、いわば、魂のつながりってことだろ?』
『スケルトンのダークンさんと魂のつながりってちょっと怖いです』
『そんなことを言っても、おまえは俺の眷属じゃないか?』
『そうでした、わたしは「わが主」のしもべ「闇の眷属」のダークンさんの眷属、ダーク・エルフのトルシェでした。下っ端も下っ端でした』
『おい、ちょっと待て、向こうの方から、話声が聞こえる』




