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闇の眷属、俺。-進化の階梯を駆けあがれ-  作者: 山口遊子


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第17話 冒険者たち4、謎の上位種? 裏切り


 4時間ほどの休憩を終えたトルシェたちは、それから歩き続け2時間ほどで5層への階段にたどり着いた。


 その間、(つの)ウサギや、大コウモリ、大ネズミといった比較的低位のモンスターと出会ったが、難なくそれらをたおして道を急ぐことが出来た。


 そのまま階段を下りた先は、一度トルシェが遭難(そうなん)しかかった5層だ。


 群れで襲って来るウルフ系のモンスターが特にやっかいな階層で、トルシェの前のパーティーもファングウルフの群れにつけ(ねら)われ、群れをたおし終わった時にはトルシェ以外全員命を落としている。


「先日5層の北東部に新たな通路が見つかった。その先を調査するのが、今回のわれわれの仕事だ」


 ここまで来てやっと、どこに何をしに行くのか明かされた。


 トルシェ自身は5層を探検する実力がないと自分では思っているのだが、『暁の刃』の5人となら無事に5層で新たに見つかった通路の先の調査も簡単に達成できるのではと楽観(らくかん)していた。



「ふう」


 5層の北東部にあるという新たに発見された通路に向かう途中、これまでファングウルフの群れに3度襲撃(しゅうげき)を受けている。


 3度ともなんとか撃退に成功しているが、こちらもけがはまだないものの、疲労が溜まってきている。トルシェ自身も、肩で息をしているし、20本用意して来た矢も回収はしているが、すでに12本ほど何らかの形で失っている。


 トルシェにとってありがたいことに、リーダーのマーシーがギルドからもらった地図を取り出して方向を確かめながら目的の通路に向かって進んでいるため、これまでと比べ戦闘以外でも進む速度は鈍っている。


「あそこだ」


 マーシーの指さす先には、人が一人何とか通れる程度の横穴が開いていた。5層はかなり薄暗くはあったがそれでも支障なく戦闘できる程度の明るさはあったのだが、目の前の横穴は真っ暗に見えるため、メンバーの一人がカンテラを取り出してそれに火をつけた。


「ボルマン、おまえが先頭を歩け」


 カンテラをともした男はボルマンという名前だったようだ。


 カンテラを持ったボルマンが先に立ち、狭い横穴の中に入って行った。


「トルシェは俺の前を行け、俺が殿しんがりをつとめる」


 名前の分からない男の後について、トルシェが横穴に入り、その後に続いてリーダーのマーシーが最後に横穴に入っていった。先頭を歩くボルマンが持ったカンテラに照らされた部分だけが明るい。


 一行は足元も含めて随分(ずいぶん)暗くて狭い通路を、肩を通路の壁に何度かぶつけながら200メートルほど進み、その先に通路の出口を見つけた。


 横穴を出た先は、正面、左右に通路が伸びていた。どの通路も洞窟(どうくつ)といった感じではなく、人の手で切りそろえられたような通路だった。


 その通路の壁にところどころ松明たいまつともっている。松明たいまつの近くは明るいがそこから離れたところは壁の石の暗さのせいか、逆にかなり暗い。


「ここは右側に進んでみよう。何が出てくるかわからない。気を抜くな」


 右手に続く通路を進んで行くと、2、3分ごとに左手に分岐している通路が現れる。さらに進んでいくと、通路は突き当りで、そこから通路は左に折れていた。曲がり角でその先を確認して進んで行く。


 今度も2、3分ごとに左手に分岐した通路が見える。どうもここは、格子(こうし)状に通路が張り(めぐ)らされた場所らしい。


「待て。前に何かいる。気をつけろ」


 マーシーの注意を促す声で、後に続く面々が武器を構えた。トルシェもやや横に移動し、短弓に弓を軽くつがえて前方に目を()らした。


 100メートルほど先に、見た目はゴブリンの二匹組がいるようだ。


 ゴブリンは1層から3層くらいでたまに見かけるモンスターで、たいていは冒険者の姿を見るとどこかへ逃げていき、めったに戦闘になることはないのだが、前方のゴブリンは逃げるどころか、こちらに向かってきている。


 二匹がたいまつの前を横切った時、その姿がはっきり見えた。濃い緑がかった肌をしたゴブリンでトルシェは今まで見たことのないゴブリンだった。二匹は背をかがめこちらに向けて駆けてくる。


「まずい。ただのゴブリンじゃない。おそらく上位種だ」


 マーシーがまずいというほどのモンスターなのか? そういった疑問が湧いた。


「あいつら速いぞ。逃げられない。闘うしかない」


 二人の盾役が腰を落とし盾を構えた。『暁の刃』には魔術師はいないようで、あとは、槍使い二人とヒーラーだ。遠距離攻撃ができる者はいない。マーシーは槍使いの一人だ。


 あと10メートルほどに迫った緑色のゴブリンにトルシェが短弓を射た。胴体を狙った矢はそのゴブリンが持つこん棒の一振りで払われてしまった。この暗さの中、この距離で矢を簡単に払いのけるゴブリン。想像以上に強い。


 トルシェが矢を射た方ではない、もう一匹のゴブリンが手に持ったこん棒を振り上げ、盾役の一人が持つ盾に棍棒をたたきつけた。


 鈍い音が通路に響き、盾役は耐えきれず一歩後ずさる。その手に持つ盾は大きくへこんでいた。もう1、2撃いまの攻撃を受ければ盾は壊れてしまうだろう。


 そのゴブリンは、盾の隙間から繰り出された槍を軽くいなし、引き際の槍にこん棒をたたきつける余裕(よゆう)と速さを持っていた。


 二本目の矢を弓につがえたトルシェは、ゴブリンの足を狙うことにした。狙いは厳しいが、このゴブリンでも足元を狙った矢をこん棒ではたき落とすことは難しいと思ったからだ。


 矢はうまい具合にゴブリンの死角(しかく)を突いたようで、ゴブリンの左足に吸い込まれて行き、ふくらはぎに突き立った。


 矢を受けたゴブリンは、いったん引いて自分の足からトルシェの射た矢を引き抜き、そのままトルシェに投げつけて来た。


 トルシェが弓で射た矢よりも速い矢が返され、それがトルシェの右手をかすってそのまま後ろの方に飛んでいった。わずかに右腕から血が流れた。それと同時に、右腕に痛みが走り、徐々に右腕の感覚がなくなり始めた。


「だめだ、こいつら強すぎる。もたない。逃げるぞ」


 マーシーがそういったとたん、トルシェの左足に激痛(げきつう)が走った。


「悪く思うな、こういう時のためにおまえを雇ったんだ。ここに残ってちゃんと仕事をしてくれ」


 マーシーがトルシェの左足に突き立てた槍を引き抜き、ついでとばかり、トルシェを前方に蹴り飛ばした。





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