第122話 大魔王『ハムザサール』3
ドラマの尺が余った状態で、俺たちは広間で次に何が起こるのかしばらく待ち受けていたのだが、いつまでたっても何も起こらない。
仕方ないので、ミイラ男の着ていた金色のローブ?と頭巾と靴、それに金色の棒を回収した。ミイラ男自体は、服を剥ぎ取る段階で崩れて粉々になってしまったので性別は確認できなかったが、ノーパンだったようだ。こいつもトルシェに通じるものがあったわけだ。もしや、マジックキャスターは下着が苦手なのか?
当然椅子のミイラの身ぐるみも剥ぎ取った。こっちのミイラの体はさっきのよりしっかりしていて崩れなかった。しかも下着を着用していた。下着姿になったミイラは着ている下着からいって、女だったのか、女装趣味の男だったのか。どちらにせよキショイのでコロにも食べさせなかった。
鏡については動かすことも外すことも出来ず、『キューブ』に収納もできなかった。
『それじゃあ、消化不十分だが撤収しよう』
ぞろぞろと、ステージの上から一段下がって広間の出口に向かって歩いていったのだが、なんだか広間の四隅で燃えていた炎の大きさが大きくなって広間全体が明るくなったような気がする。
『何だか部屋の中が明るくなったような気がするんだが』
「たしかに四隅の炎はが大きくなってます」
「何かが起こるかも」
いつものように誰かがフラグを立てると、それがすぐに回収される。
次の一歩を進めようとしたら、足が床に貼りついたようになってしまい動かすことができない。リンガレングとフェアは何事もないようだが、俺たち三人は足が動かせなくなった。
魔法耐性が相当高い俺たちが何かの魔法で足が動かせなくなってしまった。こいつはかなりデキるヤツの仕業だ。
「これは、どういった魔法なんでしょうか?」
「この状態で攻撃を受けるとかなりマズいかも」
『両手が動かせるだけ良しとしよう。さて、何が出てくるか』
しばらく待っていたのだが、足が動かせなくなっただけで何も起こらない。これはいったいどうなるんだ。尺が120分だったはずがまさかの240分になってしまったのか? これはつらい。
そこまで、尺は長くなかったようで、
『警告:高エネルギー反応』
『警告:高エネルギー反応』
『リンガレング、緊急障壁展開』
『リンガレング、第二段緊急障壁展開』
『リンガレング、第三段緊急障壁展開』
……。
いきなり、リンガレングが警告を発しはじめた。
ヤバいのが来る!
一瞬の後、広間の天井に無数の亀裂が走り、真っ白な閃光で広間が満たされた。
もちろん俺も目がくらんで何も見えないし、音も聞こえない。ただ自分はまだ意識があるということは分かった。
徐々に、白い光が薄れていき、周りの物が見えるようになった。
トルシェとアズラン、それにフェアも無事だったようだ。ただみんな目を瞑っている。もちろん最終兵器のリンガレングも健在だ。気付けば足も自由になっている。知らぬまに天井の亀裂も無くなっていた。今となっては、あの亀裂が本当に天井の亀裂だったのかは分からない。
『マスター、緊急障壁を複数展開したため、対閃光防御は間に合いませんでした。申し訳ありません、今回は6層突破されましたが、あと2層残しています。攻撃パターン分析は終了しましたので、次回は1層のみで防御可能です』
頼もしい限りだ。
『リンガレング、よくやった。ところで、今攻撃して来た敵はどこにいるかわかるか?』
『先ほどの攻撃の瞬間はこの次元に確かに存在しましたが、現在、この次元には存在しないようです。ただ、この広間にある四隅の炎で作られる影で照準をつけて先ほどの攻撃が行われたようです』
『なるほど。それで炎が大きくなったんだ。だけど、どうして足が動かなくなったのかな?』
『魔法とは異なる精神干渉の一種ではないでしょうか。今の攻撃でマスターたちの意識が変化したため干渉が不能となったのでしょう』
『催眠術のようなものか。相手は経験豊富そうな魔法使い、それはあり得るな』
「あービックリしたー」「生きててよかったー」
ここで、やっと二人も再起動したようだ。
『リンガレングが敵の攻撃を防いでくれた』
「そうみたいですね。ヤツが攻撃できないよう、四隅の炎を消しちゃいましょうか?」
『それは止めておけ。ヤツは攻撃する一瞬だけ現れるそうだ。ヤツの攻撃は次回もリンガレングが防げるそうだからもう一度ヤツに攻撃させて、そこを何とか叩いてしまおう』
「わかりました。でもどうやれば?」
『俺にも分からん。
リンガレング、ヤツをたおす方法はないのか?』
『先ほどの攻撃は、「終末回路」の「神の怒り」と同系統でした。ただ、ダンジョン内での使用のため威力はかなり落ちていますし、残留放射能なども微量なようです』
あれで、威力は抑えられていたのか。
『攻撃起点は攻撃者と推定されますので、この次元に存在した瞬間を狙い狙撃します』
『大丈夫か?』
『次回、こちらが撃破される可能性はありませんが、敵を撃破する可能性は五分五分というところです』
『十分こちらに有利だな。照準の話が本当ならば、おそらくヤツの攻撃可能範囲はこの広間の中だけだ。俺たちがこの広間を出る前に必ず攻撃が来る。それじゃあ、気を引き締めて出口に向かっていくぞ』
「了解」「了解」
リンガレングにはどこに現れるのか分からないヤツを狙撃しやすいよう一番後ろを歩かせ、俺たちは出口に向かってゆっくり歩き始めた。今は、四隅の炎は最初の大きさに戻っているようだ。
リンガレングが守ってくれると分かっていても、こういう場面では誰しも緊張してしまうようだ。あのトルシェでさえ真面目な顔をしている。
いや、そうでもないようだ。何がおかしいのかなにやらニヘラ笑いをしている。俺のコロちゃんコーティングの姿でも思い出したのか? 真面目なアズランの方を見るとこちらも真っ赤な顔をしていた。解せぬ。
部屋の隅の炎がまた大きくなったなか、出口まであと5メートルまで来たところで、
『警告:高エネルギー反応』
『リンガレング、緊急障壁展開』
『リンガレング、第二段緊急障壁展開』
『リンガレング、サーチアンドデストロイモード移行』
来る!
『タリホー! ターゲットロック、射撃開始』
言葉が終わらぬうちに、リンガレングの八個の赤い眼から赤いビームが発せられた。そのビームが命中したのは、なんと、ステージの真ん中にあった椅子だった。ビームを受けた椅子が粉々になって吹き飛んだ。
俺たちはリンガレングの警告に従って、ヤツの攻撃に備え身構えていたが、結局ヤツの第二撃は来なかった。
『やったか?』
まずい、ついついこういった時のNGワードを口にしてしまった。




