第118話 階段の先
現れた階段をアズランが先頭に立って下りていく。フェアはアズランの周りでくるくる回っている。
ここも真っ暗なわけではなくちゃんとある程度の明るさはあるようだ。この程度の明るさの方が俺には眩しくないのでありがたい。
何段あるのか分からないがその階段はどこまでも続いていた。まさか300段ということはあるまいな。
金の宝箱が結果的に下への鍵だったわけで、それ以外何のご褒美的な意味もなかったことになるが、俺たちにこれから先必要になりそうな意味のあるものが手に入るとは思えないので、気にしないようにしよう。
「せっかく金の宝箱だったのに、何の役にも立たない鍵だったなんて」
案の定一人で気にしている眷属がおりました。
階段を何段下りたのか数えていなかったので、下りきったところで何段あったのかアズランに聞いたら、やはり300段あったそうだ。つまりここはダンジョンの中で、さっきの『白銀のテレッサ』は階層主だったようだ。
階段を下りた先に広がっていたのは、切り出された灰色の石で組みあげられた通路型のダンジョンだった。いつものダンジョンと違うのは、その規模で、通路の幅は10メートル以上、高さはその倍くらいある。そこから考えると、ここから先、巨人系か飛翔系のモンスターが出てくる可能性が高い。
『アズラン、上にも注意な』
「はい」
一度アズランに『暗黒の涙』をつけてもらった『インジェクター』を持ったフェアが、アズランの頭上をかなり高いところで飛んでいる。
通路は一本道。進むしかない。
アズランを先頭に進む。10分ほどその一本道を進んで行ったのだが全く周囲に変化もなくどこまでも通路が続いている。
何となく後ろが気になって振りむくと、しばらく前にこの階層に下りてきたときの階段がすぐそこに見えた。
『二人とも後ろを見てみろ、俺たちは全然前に進んでいないようだ。階段からここまでの間のどこかにスイッチのようなものがあるかもしれないから、階段まで戻りながらよく探してみよう』
みんなで、何かないかとじっくり通路を観察していったのだが、階段にたどり着くまでに何も変わった個所を見つけることはできなかった。
『どうするかね?』
「どうしましょう?」
「何かいい手はありませんか?」
三人で一様に考え込んでみたが何も良い手を思いつけない。
『どんな感じで俺たちは先に進まないのか見てみるか?』
「どういう意味ですか?」
『俺たちは気付かぬ間に後ろに戻されてたわけだろ? それがどんな具合なのかと思ってな』
「なるほど、それじゃあ私が向こうへ歩いていきますから、ここから見ていてください」
『頼んだ』
アズランが、ゆっくり先に進んでいく。先ほど引き返したところを過ぎてもさらに先に進んで行った。
『おかしいな。アズラン、一度戻って来てくれるか?』
「はーい」
アズランがあっという間に戻ってきた。
『先まで歩いて、そのときの感じは、やっぱり変わったところはなかったんだろ?』
「全然違和感はありませんでした」
『あれだと、そのまま向こうまで歩いていけそうだったものな。何が違うんだろう?』
「最初は、三人一緒で、今はアズラン一人だったことかな」
『一人だとよくて三人だとだめなのか。俺たちを分断する作戦としては素晴らしいが、俺たちには迷惑すぎる仕掛けだな。うーん。うん?』
なんとなく階段に腰を掛けて三人で話をしていたが、いま腰を掛けている下から三段目の階段だけ色が他の段と違う気がする。まさか、この階段のこの段がプレッシャープレートってことなのか? もしそうなら、三人揃って歩いていたらダメで、ここにトルシェと二人で腰をおろしていたらアズランが先に進めたことに説明がつく。
フフフ、あの名探偵が言っていたように、『真実はいつつかむっつ!』のはずだ。あれ? ちょっと違うか。
試しに、今座っている三段目に、俺の『キューブ』の中に入っていた大ムカデの炭の塊を二、三個置いて、
『おそらくこれで大丈夫なはずだ』
俺が階段の上に炭を並べているのを奇異な目で見ていたトルシェが、
「炭が三つで何かのおまじないが発動するんですか?」
『いや、おまじないじゃないが、おそらく、この階段の三段目はプレッシャープレートになってるんだ』
「プレッシャープレート?」
『重さで反応するスイッチのことだ』
そこで、先ほどの俺の素晴らしい推理を二人に開陳した。
「さすがはダークンさん」「おーー」
ずいぶん二人に感心されてしまった。まずそんなことはないと思うが、これで俺の推理が外れていたら目も当てられないな。
『行ってみよう』
時々後ろを振り返りながら、三人で通路を進んでいく。順調だ。先ほどアズランが進んだ先まで歩いてきたが、問題なく進めている。
「良かったですね。うまくいって」
ほんと、うまくいって良かったよ。




