第105話 フェア
次は、フェアの確認だ。最初はただのプレーン・ピクシーだったが、果たして、進化したか?
アズランがフェアを鑑定石の上に座らせ、鑑定した。その結果、
<鑑定石>
「鑑定結果:
種族:フェアリー・シェーラー
種族特性:プレイン・フェアリーの変異種。プレイン・フェアリーと比べ、敏捷。高速で移動可能。魔法耐性が高い。
特殊:妖精の鱗粉を振り撒くことで、対象を眠らせることができる。
次の進化先:不定(進化までの行動に左右される)」
おお、フェアリーに進化した上、シェーラーとかいう変異種になった。きっと敏捷、高速がらみなんだろう。
『アズラン、良かったじゃないか。フェアがフェアリーに進化してたなら、フェアに性別ができていたんじゃないか?』
「ありがとうございます。いままで気付きませんでした。ちょっと調べてみます。
フェアちゃん、ちょっと見せてね」
鑑定石の上にちょこんと座ったフェアの股間を確認しているアズラン。何だか見てはいけないものを見ているような気持になったので、目をそむけてしまった。
「やっぱり女の子でした」
だそうです。まあ、飛んでるときに付いてるのに気づかなかったんだから女の子だろうとは思ってたよ。
『女の子でマッパはないからパンツでも作ってやったらどうだ?』
「うーん。わたしは裁縫が全くできないんです。というか、普通の女の子ならできてあたりまえのことは全くできない自信があります」
「はいはーい、わたしも一緒でーす。なんにもできませーん」
トルシェは、全く気にしてないな。楽しんでるよ。
『何でもできるより、何かできないことがある方が女は可愛いて言うしな。街に出たら、人形でも買って、そいつのパンツを引っぺがしてフェアに着せてやったらどうだ? トルシェは、魔法以外のことは少しはできた方がいいんじゃないか?』
「お風呂に入ってきまーす。アズランも一緒にお風呂入ろ」
「う、うん」
トルシェのヤツ、都合が悪くなったんで逃げちゃったよ。フェアもアズランについて行ってしまった。
どれ、風呂から出てくる二人に食事でも作っておいてやるか。できる料理は肉を焼くくらいだから俺も他人のことは言えないな。まあ、失敗してもコロに食べさせればいいわけだし、食材はたくさんあるから大丈夫。
ガントレットとヘルメットを外し、食糧庫から適当に食材を選んで、台所で手を動かしながら今日のことを振り返っている。今回、食糧庫に入って気付いたのだが、どうも使った食材は知らないうちに補充されているようだ。誰が補充してくれているのかは分からないが、便利なので気にしない。気にしない。
くりくり坊主の小僧さんになったつもりで、両手の人差し指で頭をくりくりしてしまった。
今日も一日いろんなことがあった。あの黒鎧の言っていた魔王云々。黒鎧の口ぶりからして、ヤツは魔王ではなかったようだ。魔王があの程度なわけないから当然だがな。普通の魔王は、あれから先に第二段階、第三段階変形をへて、最終形態になるはずだもの。結局、あいつは修行が足りなかったわけだ。
今回俺の肋骨辺りにいるコロも進化した。おそらくスライム種では最強のスライムになったと思う。フェアもフェアリーの変異種に進化した。フェアの場合まだまだ進化の先がありそうだ。
ところで、フェアは木の実ばかり食べているけど他には食べないのかな? 生肉なんぞ食べて、口元を血で真っ赤にしていたらちょっと引くけど、それはそれで面白いかもしれない。あとは、妖精の鱗粉か。集めてとっておけば役立ちそうだ。
フェアはアズランにちゃんとついて行ってるところを見ると、アズランに匹敵するかそれ以上のスピードと俊敏さを持っているのだろう。
今は素手のフェアだが何か武器でも持たせれば、面白そうだ。武器といってもせいぜい10センチくらいのものだろうが、それでも人の頸動脈を切り裂けば十分致命傷を与えることができる。街の鍛冶屋にでも行って作らせてみるのもありだな。
そんなことを考えているうちに、肉も焼けて、トマトを輪切りにしただけだが、トマトサラダも出来上がった。簡単なものだが、元より『闇の眷属』たるトルシェにもアズランにも食事は栄養素など関係なく、あくまで嗜好品だ。
うまいものを作ることができれば、それに越したことはないが、できないものはできないのだ。あるだけ幸せと思ってもらいたい。とか、思っていると決して料理は上達しないのだ。
全裸娘と、下着娘が風呂から上がってやって来た。
「ダークンさん、いいお湯でした」「ふー。フェアもお風呂に入って気持ちよかったみたいで、今は私のベッドで寝ています」
『簡単なものだけど、良かったら食べてくれ』
「うわー、ありがとうございます」「ありがとうございます」
「わたしたちの中でダークンさんが一番女子力高いですよね!」
俺たちの中限定ならそうだろうよ。何の自慢にもならんわな。
『アズラン、フェアだけど、パンツもいいが、何か武器を持たせたらどうだ? あの動きがあれば相当なことができそうだと思うんだが』
「そうですね。私の持っている暗器の中で良さそうなものを見繕ってみます」
『アズラン、やっぱりそういったものを持ってたんだ』
「所詮は暗器ですから、威力などはたかが知れてますけど、それでも相手の不意をつけばそれなりには使えます」
「へー、どんなのがあるの?」
「私の場合は、少し太い針のようなものを使っていました。それで、背後から延髄に突き刺して、そこに背骨からつながっている髄を抉るようにして切ってやると、たいていの相手は死んでました。相手は声も出せずに死ぬのでお勧めです。
あとは、もう少し大きな針で、普通にうしろから近づいて、左の肋骨の隙間を通して心臓を一突き。とか。
真正面から、目玉を狙って突き刺して、そのまま脳まで抉ったりとか。小型のナイフで頸動脈を切るのもいいですが、これは返り血を浴びないようになるまでひたすら訓練しました」
暗殺にもけっこうなヴァリエーションがあるらしい。返り血を浴びないためにいったいどういった訓練をしていたのか気になるが聞かないでおこう。食事中だしな。
話をふったトルシェを見ると、全く気にせず、ややレア気味の肉をナイフで器用に切って口に運んでいる。
「へー、アズランも訓練で大変だったんだ。毒とかは使わないの?」
のんきなものである。




