第102話 合体、コロちゃん
コロの冷たくも、ぬめっとした感覚が内側から俺を責め立てる。これは癖になる感覚だ。
今コロは俺の骨盤から下腹部あたりにいるようだ。そこらでなにやらもぞもぞ動く。ちょっとこら、そこは、そこはダメだというに。
「ダークンさん、コロを鎧の中に入れた感じはどうです?」
『うーん。何というか。まあ、一言で言うと癖になる感覚だな』
「癖になりそうなほどスゴイんですか?」
『いや、そっち方向じゃないんだ』
「うん? そっち方向?」
『いや、何でもない』
俺もそっちがどっちなのか分からなくなってきた。
コロは俺の中にいて外の様子は少しは分かるのかな? これでコロが鎧の隙間から極細触手攻撃でもできたら面白いんだがな。
それがなくても、瘴気攻撃は俺がコロに頼めば簡単にできる。俺の体からコロのエグい瘴気が立ち上るわけか。絵面的にもかなりカッコいいんじゃないか? ここのところ、序列一位のお株を二人に持っていかれている感もあるし丁度いい。
『それじゃあ、一件落着ということで、拠点に戻るか?』
「ダークンさん、ギルドマスターがこっちにやってきます」
「無視しちゃいます? それとも殺っちゃいます?」
『いやいや、とりあえず、話があるようなら話を聞こう。会話はいつものようにトルシェに任す』
大柄なおっさんがこちらにむかってくる。俺たちもおっさんの方に歩いていく。さっきの失敗もあるので、通訳のトルシェとあまり離れないように歩いて行かなくてはいけない。
「おーい、さっきから呼んでたんだから、返事くらいしてくれよ」
「すみません。聞こえていませんでした」
適当なことを言って渉外担当のトルシェが対応する。
「まあいい。ところで、ここで何があったのか知っていれば教えてくれないか? それと、さっきまでそこにいた銀色の蜘蛛はどうした?」
どうも、俺と鎧男との熱くカッコいい戦闘も、リンガレングの圧倒的なモンスター殲滅風景も見ていないらしい。そんなもんだよな。だれに誇りたいわけでもないからな。トルシェとアズラン二人が俺を見ててくれただけで十分だもんな。気にしてなんかいないんだからね!
チェッ!
「蜘蛛はわたしたちの『キューブ』に仕舞いました。それと、見ていなかったんですか? わたしたちが、『迷宮都市』に押し寄せて来た魔王の軍勢を皆殺しにしたんです」
「蜘蛛はおまえたちの召喚モンスターだったのか。ふうん。
モンスターがどういうわけかいなくなったのは見ればわかるが、あれが魔王の軍勢だった? どこにいるんだ? 魔王さまは? 皆殺しにしたっていうモンスターの死骸もどこにもないじゃないか? いくら『金』になったからといって、浮かれてそういう冗談を言うのは感心しないぞ」
「だから、みんなわれわれが……」
「話す気がないんなら、もういい。街の危機が去った以上はもうどうでもいい。そんじゃあな。
あしたは、人を出してこの辺一帯の調査が必要だなー」
ギルドマスターのおっさんは頭をかきながらそう言い残して踵を返し、街の方に帰っていった。
『あいつ、全くわたしの言うことを聞かないんですけど。ダークンさん、頭にきたから、頭を爆発させちゃいますか?』
『まあ、あのおっさんの気持ちも分からんわけではないから、生かしておいてやれ』
『ダークンさんは優しすぎなんじゃありません?』
『よく見ろ、外壁の上に大勢人がいるだろ?』
『忘れてました。さすがはダークンさん。今度人目のないところであのおっさんに出会ったら、サクッと殺っちゃいますね。アズランもちゃんと注意しておいてね』
『任せて』
『殺るなら証拠を残さないようにほどほどにな』
『了かーい』『分かりました。得意です』
どうやったらほどほどに、殺れるのかは俺には分からんがほどほどにな。
『それじゃあ、俺たちも帰るか。コロちゃんの鉄箱はとりあえず収納しておこう』
俺たちも街に戻ろうと、外壁に向かって歩いていく。高さ三メートルほどの外壁の上には沢山の人がさっきまで立っていたはずだが、今はもうまばらだ。
今の俺たちにとって、三メートル程度飛び上がるは造作もない。
まずアズランが軽くジャンプして、外壁の上に飛び乗った。それを見ていた一般人から思わず驚きの声が上がった。三メートルも飛び上がればそれは驚くだろう。
次は、トルシェ。うまく飛び上がったように見えたが、アズランほど飛び上がれなかったようで、外壁の縁に手をかけてなんとかよじ登った。それでも見ていた連中から拍手が上がった。
最後は俺だ。10メートルほどいったん下がり、一歩一歩の歩幅を短く、少しずつ高くしながら外壁に接近し、十分近づいたところから一気に飛び上がる。
ガッシャーン。
見事に顔から足まで体の前面が外壁にぶち当たってしまった。これが、ギャグアニメだったら、見事に外壁に人型の窪みが出来て俺がはまったのだろうが、ここではそんなことはなく、
ゆっくり体がずり落ちていった。
コロ、頼む!
俺の、ナイト・ストーカーの隙間からコロが極細触手を外壁に伸ばし、俺の体が外壁をずり落ちていくのをいったん止めてくれた。そこから少しずつ体が上に上がっていき、上に伸びていた両手が外壁の縁にかかったのでそこから一気に外壁の上の通路までよじ登ることができた。
アズランとトルシェの時と違って俺の時は見物人からの反響はなにもなかった。いや、みんな他所の方を向いている? 解せぬ。




