表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

86/135

第86話 ラッキースケベ


「"ラケットが握れないならバドミントンもダメか……あと、体育館でできるスポーツって言ったら何があるかな……"」


 俺は考えながら卓球台を片付け始めた。

 単純に運動神経が悪いだけなら教えられる自信も少しはあったのだが、非力が理由だとなかなか難しい。

 一緒に筋トレしよう! なんて言ったらもう二度と運動なんてやりたがらないだろうし。

 リリアちゃんが満足してくれそうなスポーツ……。


 俺は頭を悩ませながら卓球台をキャスターで押して運ぶ。


「"ほら、山本。卓球のネット、畳んでおいたわよ"」


「"ありがとう、リリアちゃん"」


 背後から聞こえた声に、俺は右手を差し出した。


 考え事をしながら卓球台を運んでいたせいで、ちゃんとリリアちゃんの位置を確認せずに手を出してしまったのが失敗だった。

 リリアちゃんは俺が想像していたよりもすぐそばにいたようで……


 ――ふにっ


 俺の指先には何だかとても柔らかい感触があった。


 振り向くと、その指先は卓球のネットを差し出すリリアちゃんの胸に触れており……

 リリアちゃんは顔を真っ赤にしてワナワナと震えていた。


「"キャァァァーー!!"」


 スパーン!


 悲鳴と共に、リリアちゃんのスナップを利かせた右手の平が爽快な音を立てて俺の頬にめり込む。


 直後にリリアちゃんはハッとした表情をした。


「"ご、ごめんなさい、つい反射的に! 事故だし、あ、あんたにだったら別に――"」


「"これだっ!"」


 俺は思わず叫んだ。


 リリアちゃんは意味が分からずに首をかしげる。


「"リリアちゃん、今みたいに手首のスナップを利かせれば強い力が出せるんだよ!"」


「"……はぁ"」


「"バレーボール! スパイクやサーブは肘や手首のスナップで打てるんだ! ボールも比較的軽いし!"」


 非力なリリアちゃんでもできそうなスポーツを思いついた俺は嬉しくて笑顔でリリアちゃんと向かい合う。


「"今のビンタ凄く良かったから、感覚を忘れないようにもっと俺の頬をはたいてみて!"」


「"えぇ!? な、なに言ってるのよ、そんなのできないわよ!"」


「"大丈夫、全然痛くないから! コツを掴めるまではたいて!"」


「"そ、そこまで言うなら……痛かったら言ってね?"」


「"思いっきりね!"」


 そして、リリアちゃんは先ほどと同じように手首のスナップを効かせて俺の頬をはたく。

 狭い体育倉庫の中で爽快な音が響いた。


 ――バシィーン!

 ――バシィーン!


 大丈夫だ、やっぱりリリアちゃんは筋が良い。

 これくらい力強くはたけるならバレーボールも上手く飛ばせるはずだ。


「"いいよリリアちゃん! 次は腕全体を鞭のように使って!"」


「"あはは、な、なんだか楽しくなってきたわ……ダメ……クセになりそう……!"」


「"その調子! もっと強く、俺の頬をぶって!"」


 ――ドサッ。


 何度かビンタを受けていると、体育倉庫の入り口で何かが落ちる音がした。

 俺とリリアちゃんは振り向く。


 そこには、手に持っていた小包を落とした様子の柏木さんがいた。

 柏木さんは動揺を隠しきれないような表情をしている。


「"……す、すまん。差し入れにブラウニーを持って来たんだが、邪魔をしたな……。倉庫から音がしたから……。ま、まさかお楽しみ中だったとは……"」


「"……お楽しみ?"」


 言われて、今の自分の状態を客観的に考える。

 どう見ても、体育倉庫で小学生女児にブルマを着せて何度もビンタされて喜ぶ変態である。


 柏木さんは顔を赤くして、咳ばらいをする。


「"し、しかし、山本はMなのか……困ったな、私もどちらかというと――"」


「"違います! 誤解ですって、柏木さんー!"」


 柏木さんへの弁明には時間がかかり、この日の運動はこれで終わってしまったのだった。


『クラスで陰キャの俺が実は大人気バンドのボーカルな件』もよろしくお願いいたしますー!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓のタイトルをクリックすると他作品のページに飛べます↓
連載版始めました!
下のタイトルを押すと読みにいけます!
『【連載開始!】ライブ直前に怪我をしたアイドルの代わりにステージに立ったら、マネージャーの俺の方が大人気になってしまった件』
作品のブックマーク・☆評価お願いします!
<(_ _)>ペコッ
小説家になろう年間1位!
下のタイトルを押すと読みにいけます!
『クラスで陰キャの俺が実は大人気バンドのボーカルな件』
漫画も発売中!

    
新刊!7月25日発売!予約受付中!
『山本君の青春リベンジ!』
  ▼▼▼ 画像をクリックすると、書籍情報に飛びます! ▼▼▼  
表紙絵
  ▲▲▲ 画像をクリックすると、書籍情報に飛びます! ▲▲▲  
新刊!次巻は8月発売!
『【漫画】ギルド追放された雑用係の下剋上~超万能な生活スキルで世界最強~』
  ▼▼▼ 画像をクリックすると、漫画を読めます! ▼▼▼  
表紙絵
  ▲▲▲ 画像をクリックすると、漫画を読めます! ▲▲▲  
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ