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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
Missing Comfort
93/596

002

「――南五区、異常なし。……やっぱり何もなさそうだねぇ?」

「それが一番ですよ。平和ってことじゃないですか」


 放課後。山道を調べたけど、やっぱり何も見つからない。

 篝さんも一緒だから見落としたなんてこともないと思う。


 時期のせいか、空はもう真っ暗。いつ出てもおかしくない。

 それなのに他の部隊からも、応援要請どころか発見報告すら上がってない。


 白ローブは勿論、あの真っ黒な怪物も全く姿を見せてない。

 正直ちょっと不気味なくらいに何もなかった。


「でも、よかったです。篝さんがすぐに復帰できて。……大丈夫なんですよね?」

「大丈夫。至って健康体だよぉ? やっぱりちゃんと触って確かめてたらぁ?」

「冗談言える余裕があるなら大丈夫って橘さんに習いました」

「冗談でこんなこと言わないよぉ?」


 だったらむしろヤバいかも。正気で言うか、普通。そんなこと。……今更だけど。

 それに、熱があるかないかで判断できるような問題でもないだろうし。


 なんて、言ってみたけどやっぱりちょっと不安もあった。

 この前の魔法。《エノルムクレール》はもうなんて言えばいいのか分からないくらいすごかったから。


 雑に纏めれば、特大の雷を空から落とす魔法。

 俺はまだ練習もさせてもらえない、基礎のその先にある魔法。

 中でも《エノルムクレール》は威力に重きを置いた魔法だって篝さんが教えてくれた。


「やっぱり、この前の怪物はあっちのとっておきだったのかなぁ? あれから新しい噂もほとんど聞かないよねぇ」

「おかげで友達も安心しきってましたよ。まあ、おかげでテストは惨敗でしたけど」

「言ってくれたら勉強くらい見てあげたのに」

「俺じゃなくてですね?」


 そんなに成績ヤバそうに見えますか、俺。

 いい意味でヤバいのと悪い意味でヤバいのはいるけど。周りに。なんで毎回ほぼ満点取れるんだろうな、美咲。


 パーフェクト手前が相手だと、平均が九〇超えてもやっぱり霞む。

 深山も若干引いてたし。まあそれはべつにどっちでもいいんだけど。


「桐葉くんの友達ならいつでも歓迎だよぉ? ……訪ねて来る子もそんなにいないし」

「あそこって組織の管轄じゃなかったですっけ? 怒られますよ?」

「別にそこまでは禁止されてないよぉ?」


 ……マジで?


 人里離れた、ちょっと古めのアパート。六畳一部屋に、風呂とトイレ付。

 篝さん以外にも、組織のメンバーが集まっているのがそこだった。


 確か、一階が男性で二階が女性? だった気がする。

 行っても他のメンバーはほとんどいないから誰が住んでるのか分からない。でも、組織外の人間が住めないのは確かだった。


(こまめに改修してるって言ってたし、そもそも教団にバレる可能性だってあるし……部外者なんて立ち寄らせない方がいいだろ)


 たとえどこの誰が相手でも。

 そいつにそのつもりがなくたって、いつ狙われるかも分からないのに。


 大雑把な場所はお互い把握してるとか? 魔力の反応で。……普通にありそう。

 そういえば、結構物々しい罠とかあったような……じゃなくて。


「てっきり、他に誰も来ないのは禁止されてるだとばっかり……」

「ね、桐葉くん? 私も怒ることくらいあるんだよぉ?」


 だってマジで誰も来ないじゃん。

 まあ、交通の便が終わってるのも理由だろうけど。バスも通ってないとか正気かよ。


「ま、まあまあ。いいじゃないですか。拠点の部屋も片付いたんですから。あっちなら他に来る人も――……ごめんなさい。やっぱりなんでもないです」

「ねーぇ、桐葉くん? 最近遠慮がないどころか優しさも感じられないのはお姉ちゃんの気のせいかなぁ?」

「いやいや、まさかぁ。俺達のために時間を使ってもらってたのにいうべきじゃないって思い直しただけですよ?」

「お姉ちゃん、そんなウソつきに育てた覚えはないんだけどなー?」


 そりゃ育てられた覚えはないですし。

 生まれも育ちもお酒を飲む量がちょっと多めなあの両親の元ですし。


 別に嘘でもなんでもないのに。

 あのデカブツを倒した後で部屋に連れて行ってもらったことはあるけど、拠点にいる時間の方が多かった。


 ……それに、言いはしないけど、前々から大学の交友関係はそこまで広くないのかなーって思いそうになることはちょくちょくあった。

 それもこれも、サークルに入れないのが一番の原因なんだろうけど。


 やっぱりめちゃくちゃストレス溜めてるよ、これ。俺の余計な一言以外でも。


「ちなみに、なんですけど。いつの間にかお姉“ちゃん”に変わってるのは俺の気のせいなんですかね?」

「うん、前からそうだったよぉ?」

「本気でそう思ってるならどこかで検査受けた方がいいですよ。きっとどこかで記憶操作の魔法を喰らってますから」


 違った。絶対に違った。賭けてもいい。

 妹さんキレますよ、そんなことしてたら。もうちょっと友達増やせばいいのに。大学には行ってるんだから。


 なんて、別に俺も篝さん世代の知り合いがいるわけじゃないからなぁ……紹介できるあてもない。


『じゃれ合っている暇があるならさっさと戻れ、たわけめ』


 …………ハイ。






「――と、いうわけでぇ……これから桐葉くんには、道徳の授業を受けてもらいます」

「とてもこの部屋にそんな資料があるとは思えないんですけど」

「教科書なんて必要ないよぉ? ……不正解だったら、その時はその時だけどねぇ?」

「道徳に正解も何もないですよ」


 ――って、昔、美咲が言ってた。俺も同感。


 そもそもこんな狭い部屋でどうしろと。

 金属の棚に分厚いファイル。奥には申し訳程度のテーブルと椅子。それにホワイトボード。


 そんなことより今は探し物を終わらせないと。

 叱られる。また橘さんに叱られる。それだけは御免だ。


「そっちの棚のファイル、重いから気を付けてねぇ? 確か一〇年分くらい纏まってるからぁ」

「もうちょっとこまめに整理とかできないんですかね、ここの人達……」

「向こうの活動がちょっとだけおとなしかった時期があったんだよぉ。結局、戻っちゃったみたいだけどねぇ?」

「じゃなきゃ今あいつらが暴れてるわけないですもんね」


 そのままずっとおとなしくしておけばよかったのに。

 何もしないでいる方がよっぽど世のため人のためになるんだから。


 それに、その頃もちょっとした事件とか衝突はあったみたいだった。

 逆にそれより前の時代にはもっと酷かった頃もあるみたいだけど……一年分が一冊に収まってないっておかしいだろ。


 しかも、拠点が破壊されたせいで焼失した資料がその倍はあったって考えられてるらしい。

 正気じゃないとか、そんな言葉で言い表せるレベルじゃない。


 もしかしたら、その中にはこの前の怪物みたいなやつも混じってたんじゃないかって、橘さんも言ってた。

 嘘だと思いたいけど、今以上に滅茶苦茶に暴れてたみたいだから、ちょっと否定できそうにない。


「えっと、次はぁ……Cの棚の三から五番を取ってくれるぅ?」

「了解、しました……っ!」


 ――重っ!


 そうだろうと思ってたけど、予想もしてたけど、やっぱりキツい。

 必要なページだけ引っこ抜くと後で収拾がつかなくなるから仕方ない。

 これも必要なことなんだから。


「――それじゃあ、始めよっかぁ。この中に、あるといいんだけどー……」

「見つからなかったら延長戦ですね、また」

「だねぇ」


 自分達が使う魔法を、より高める方法。

 その手掛かりを探そうと思ったら、こいつ以上にいい資料なんてどこにもないんだから。

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