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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
Immature Sorcerer
88/596

020

「二時の方向! 氷の足場! 後は上に向かって、とにかく向かってぇ!!」

「りょ、了解…………!」


 やらかした。

 完っっっ全にやらかした。


 やっぱり、教わってもいないような魔法を無理矢理くっつけようなんて考えるもんじゃない。

 突貫工事で外付け増やしたようなものだから。……師匠にバレませんように。


 それに風が。風が重い。

 痛いとかそんなレベルじゃなくて、ただただ重い。

 篝さんが風の魔法か何かで中和しまくってくれてるけど、本当に重い。


 最初の勢いもなくなって、おかげでやっと止まった。

 車が蟻みたいな大きさに見える高さまで飛んで、ようやく止まった。


「は、はぁ……なんとか、止まったぁ……?」

「ひぃ、ふぅ……多分、止まってます。すみませ、あんなこと言って、戻って来たのに……」


 何が方向音痴なもんで、だよこのすっとこどっこい大馬鹿野郎。

 馬鹿だろ。絶対に馬鹿だろ。結果オーライとか、口が裂けても言えないレベル。


「別にそっちは怒ってないよぉ。……ありがとぉ、戻って来てくれて」

「け、結局篝さんに助けてもらいましたけどね……ぜぇ」

「ほんとだよぉ。無茶なことばっかりするんだからぁ」


 あんな速度を出せたことに驚きだけど、これっぽっちも嬉しくない。

 やっぱり師匠に放り投げられた時の記憶をあてにしたのが間違いだった。ジェットコースターどころじゃない。


 上空に留まってるだけでこんなに心が落ち着くなんて。

 下の怪物の事も今だけは忘れたい。


 篝さんのおかげでかなり高くまでとべたからか、怪物も全然撃って来ない。

 黒い体に乗ってるから目立ってるけど、白ローブもほとんど点みたいだった。


「で、どうします……? あのデカブツ……救援、まだ来られないみたいで……一応橘さんは動いてるみたいですけど」

「……そこまで逃げ続けるのも、ちょっと厳しそうだよねぇ?」


 厳しいどころじゃないと思う。


 今は攻撃が届かないみたいだからいいけど、いつまたアホ火力で攻撃してくるか分からないし。

 このまま飛んで逃げても、結局追い付かれr


「――うぉあぁあっ!?」


 撃ってきた、あの野郎、何のためらいもなく撃ってきやがった!


「桐葉くん!」

「了解しました!」


 今のはちゃんと見えたからよかった。

 デカい火の玉でも、見えてから十分に避けられたからなんとかなった。


(届くのかよ、結局この高さでも普通に届くのかよ! 口の中に狙撃中でも仕込んでるのかよ、あいつ!)


 でも、これ以上距離が近付くようなら次はヤバい。

 その次かもしれないけど、とにかくヤバい。


 狙い撃たれる。あんな火の玉が直撃したらきっと丸焼きにされる。

 でも。


(あんなのから逃げながら飛んだら絶対どこかにぶつかる……っ!)


 というか多分、当てに行く。

 白ローブが当てさせる。お願いしますとかなんとかほざいて、隠れたものごと吹っ飛ばしにくるに決まってる。


「……これしかないかなぁ」

「は、はい? 篝さん、何言って――……」

「いいから、いいからぁ。桐葉くんはちゃんと飛んでてぇ? ぶつかっちゃうよぉ?」

「軽いノリで言わないでくれません!?」


 実戦型飛行訓練ってか、こっちからお断りだよ!


 怪物に背中を向けたら即アウト。

 でも、距離を詰められたらもっと大変なことになる。今の距離だからなんとか避けられてるのに。

 それだって時々、翼に当たってる。翼なら当たっても構わないからいいけど、とにかくギリギリ。


(周りにほとんど人がいないからいいけどさぁ……!)


 っていうか、どうしてこんなに人がいないんだ? 足元にだって住宅はあるし、他にも誰か一人くら、い……っ!?


「多分、この辺りは全部教団と関係があるんだと思うよぉ? 勿論、人払いも使ってるみたいだけどー……ちょっとした仮拠点、みたいな?」

「こんなっ、町の中、にっ……! 堂々と立てるのは、どうなんですk、うおっ!?」

「あの人達に常識なんか求めたって意味ないしぃ」

「そりゃそうでしょうけど!」


 デカブツの移動速度はそこまでじゃないからまだ助かってる。

 助かってるけど、それでも一瞬も気を抜けない。篝さんが氷の盾を張ってくれるけど、それも全部壊される。


 篝さんと喋ってる途中にだって何発も、何発も飛んでくる。

 翼を片方丸焼きにできそうなくらいの火の玉が飛んでくる。


 一発を打ってから次の一発までにラグがあったけど、それもちょっとだけ。

 思いっきり崩されたら詰む。篝さんの盾でも防げないみたいだし、マジで詰む……!


(このやろ、また……っ!)


 …………あったまきた。


「水……滝みたいな水、池をひっくり返したくらいの水――……っ!」


 両手が塞がってたってどうにでもなる。篝さんのことを離せるわけない。

 そのために師匠からあの技術だって教わった。


(次の一発が来た時に――……!)


「――てんこもりの水で押し潰せ!!」


 ぶつけて、その勢いでこっちは離奪して――……って!?


「うっひぃ……!?」


(これ、ふっとばされ……っ!!?)


 何だよ今の。何なんだよあの衝撃!

 ぶつけて上手い具合にこっちの被害を減らそうと思ったのに余計悪化してるし!


(っていうか……このままだと落ちる!?)


 おちてる。何なら現在進行形で落ちてる。月も少しずつ遠くなってる……!


(飛べ、飛べ! いいからすぐに飛べって! 次撃たれたら間に合わないんだって、なぁ!)


 早く上まで戻らないと間に合わない。避けるための余裕がないんだって!


「大丈夫、落ち着いてぇ」

「こんな状況で落ち着けませんよ!? 今なんとか浮かせますから、篝さんはそのままお願いします!」

「……だから、大丈夫だってばぁ」

「むぐっ……!?」

「はーい、いい子、いい子ぉ……そのまま落ち着いてねぇ?」


(息が……!?)


 っていうか前! 前が見えない!

 こんな状況でどう落ち着けと!?


「それとー……桐葉くんに一つ、大変なお願いしてもいーぃ? 後でちゃぁんと、お礼もするから……ね?」

「…………ふぁい?」


 ど、どゆこと……?






(なんなのだ、あのバカげた威力は……!?)


 桐葉が起こした激流に、男はただただ驚愕していた。


 距離が離れているとはいえ、自身が授かったそれの放った火球を実質消滅させてしまったその一撃に驚愕しない筈がなかった。


(あれだけの威力を出せるだけの力を持っていながら何故……! おのれ、視界が……!)


 何より信徒の男を襲った爆発が、桐葉の一撃を一層脅威として印象付けた。


 桐葉達の姿を見失い、怪物すら数歩退かざるを得なかったのだ。

 それは信徒にとってあってはならないことであり、同時に、恐れを抱くには十分すぎる出来事だった。


(見くびっていた……! 最も警戒すべきはあの少年だったというのか! あの者はどこに……!)


 しかしながら、男の警戒は甘かった。


「――吹っ飛ばせ、《旋風》!」


 物陰に隠れていた桐葉の攻撃を全く予知する事ができなかった。

 既にその背中から翼は消えていた。


「愚かな真似を……自らその姿を晒すというのか!」


 よろめくも、たちまち男は姿勢を整える。

 男にとってそれは千載一遇のチャンスでもあったのだ。


「そんなわけないだろ!」


 しかし、桐葉は逃げた。


(……何?)


 わざわざ一度声をかけ、その上で逃げ出した。


「何を考えているのだ、お前は? 出てきたかと思えば!」

「何って、誰も別に真正面から殴り合うなんて言ってないだろ!」

「……結局はそういうことか。なんと自己中心的なことか。周囲への被害も許容するのか?」

「そっちの施設が幾つ潰れたってこっちはノーダメージなんだよ! っていうか、被害まき散らしてるやつが言うかそれ!」


 違和感は覚えていた。

 しかし男は、その正体を掴めずにいた。


『天条、貴様……何をしている?』

「あーあー、すみません。正当防衛とか、緊急避難の仲間みたいなあれ、です……よっ!」


 だからこそ攻撃を仕掛けるほかなく、桐葉は死に物狂いで走り続ける。


 左耳から響く橘の声に応える余裕も、今の桐葉にはほとんど残っていなかった。


(だからなんなんだよこの火力!? 合体する前は絶対ここまでじゃなかっただろ、掛け算ででもしてるのかよ!)


 怪物の攻撃は、桐葉にとって脅威でしかなかった。


 コンクリートを容易く破壊するその一撃の重さは、一度身を以って味わっていた。


「――焦らなくていいよぉ、桐葉くん。それと……ごめんねぇ? 待たせちゃって」


 それでもこの役を引き受けたのは、それだけの理由があったからだ。


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