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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
Immature Sorcerer
77/596

009

「…………貴様の運勢は一体どうなっているんだ?」

「そんなの俺が知りたいですよ」


 言ったな。

 よりにもよって人が一番気にしてることを言いやがったな。


「念のために言っておきますけど、俺だって好きであんなのばっかり引き寄せてるわけじゃないですからね? なんなら引き取ってくれてもいいんですよ?」

「そんな馬鹿を言えるだけの余裕があれば十分だ」

「そりゃ昨日は空から怖い怖い隕石が降ってきたおかげでなんとかなりましたからね」


 人型で、一発で何でもかんでも破壊・粉砕していくとびきり危険な隕石が降ってきたおかげで。


「あれってやっぱり、橘さんが頼んだからですか? 昨日は師匠、拠点にいませんでしたよね?」

「昨日『も』だ、たわけ。貴様ら状況を伝えたら勝手に向かったにすぎん」

「わぁなんて弟子思い。感動して涙が出そう」


 実際、師匠のおかげで本当に助かった。

 さっきの話が本当なら、篝さんがいてくれても簡単には倒せなかっただろうし。


 なんなんだよ。強化ガラス並みの強度って。

 あんな風に動き回る強化ガラスがどこにいるんだよ。砲弾か。


「天条貴様、その台詞を神堂本人の前で言えるのか?」

「いいですけど、俺の断末魔は高くつきますよ?」

「あんな風に安売りされたものを買うバカなどおらん」

「あはは、なに言ってるんですか橘さん。そういう橘さんもそうやっていつも喧嘩のたたき売りやってるじゃないですか」

「……ハンドルから手を離さなくとも貴様に罰を与える手段など山のようにある。今からそれを教えてやろう」

「できるだけ安全運転でお願いしますね」


 なんて、お願いなんかしなくてもこの人のことだからそんなに危ないことはしないと思うけど。


 駐車場に着くまでいつもと何も変わらなかった。

 師匠みたいに即お仕置き、なんてことも橘さんはしてこない。


(えっと、確か今朝のメニューは――)


 イリアも食堂で食べられるようになってくれたらいいんだけど。

 さすがに片っ端から持って行くことなんてできないから。


 篝さんと交代するまで知らなかった。

 朝食もプチバイキングやってるとかなんて贅沢な――って。


(……お、ナイスタイミング)


 噂をすれば。

 篝さんもこっちに向かってる。ほとんど全力疾走みたいな勢いで。


 昨日家に帰ってからメールもしたけど、こうして直接会うとやっぱり安心する。

 篝さん、あの後も報告書とかまとめてくれたみたいだし。


(でもなんか、ちょっと慌ててるような……?)


 篝さん、全力疾走みたいなっていうか実際に全力疾走してない?

 しかも明らかにこっちに向かって。速度緩めて。


 なんていうか、切羽詰まったような表情――


「――桐葉くん助けてぇ!!」


 …………は?


「か、篝さん? 一体どうしたんですか? 何がなんだか……」

「いいから匿ってぇ! 私にはもう止められないんだよぉ……」

「さっきから不穏な単語ばっかり聞こえるのは俺の耳か頭がおかしくなっただけですかね?」


 どういうこと。何が一体どうなってるの。

 なんで篝さんは人のことを盾にしようとしてるんですかね。


「違うの。全部本当のことなのぉ……うぅ、どうしてこんなことに……」

「いやそれ俺の台詞ですから。……あの、割と本格的に動きづらいんですけど。さすがに片手だけでも離してれません?」

「む、無理。無理なんだよぉ……」


 何があったし。


 昨日化け物がバケモノになったときもここまで慌ててませんでしたよね、篝さん。

 いきなり恋愛経験がどうとか言い出す余裕もあったのに。


 というか、橘さんどこ行った? また逃げやがったなあの野郎。巻き込まれたくないからって。


「あ、あそこ……あそこにいるんだよぉ……桐葉くん、なんとかしてぇ……」

「あそこって言われても別になにもいませんよ? Gとか言いませんよね?」

「そういう怖いのじゃないんだってばぁ!」


 じゃあどんなだよ。

 Gよりもヤバくて危険な何かなんて想像もつかない。まあ、見れば分かるんだろうk


「がるるる…………!」


 ……なんか綺麗な怖いオオカミがいるんだけど。じゃなくて。


「い、イリア? そんな怖い顔して何かあった? とりあえず話だけでも聞きt」


「どいて」


 …………あれ?


 知ってる。このマジでヤバいオーラのことならよく知ってる。

 それこそ昔から何度も聞いてきたのと同じ声なんだから、間違えようがない。


 美咲の怒りメーターが上限を突破する度に聞いてきた、底冷えするような声。あれと一緒だ。全く一緒。


「い、いや……退けって言われてもこの先駐車場。脱走ダメ。な、部屋に戻ろう?」

「平気。そんなこと、しない」


 だと思ったよ。

 どうしろと。こんな状況を一体俺にどうしろと。俺が言っても駄目な時はまるでダメなのに。


「……あれがそこにいること、分かってる。だから、どいて」

「だから『あれ』呼びするんじゃありません。あとその殺気、ちょっと抑えて?」

「いいから、どいて」


 取り付く島もないんだけど。

 投げ出したい。今すぐにでも投げ出したいこの状況。


 俺、何か悪いことした? 橘さんに指示されて現場に向かっただけなのに。

 今朝のメールだっていつもとそんなに変わらなかったのに。何があった、マジで。


「(……篝さん?)」

「(その、実はねぇ? 話の流れでつい昨日のことも喋っちゃって、それでぇ……)」

「(……あの話だけでここまで凶暴化します? 普通)」

「(怒ったからこうなってるんだよぉ……!)」


 そうなんだろう。状況的にそれ以外ありえないのは分かる。


(いや、でも……えぇ? そんなことある?)


 おかしい。いくらなんでもそれはおかしい。

 篝さんにキレる理由になってない。


 別に篝さんに無理矢理連れ出だれたわけじゃないのに。どうしてそんな。

 篝さん半分涙目なんだけど。何したんだよ。


 逆に、何か他にも原因があるような気がした。というか、そうとしか思えない。


 だっておかしい。文句を言うならせめて橘さんだろ。

 人様の迷惑も考えずに化け物を解き放つあの悪趣味白ずくめ軍団だろ。


「……庇うの?」

「待って。ちょっと待ってって。少し落ち着いて話し合わない? 多分だけどさ、誤解があると思うんだよ、俺」

「ない」


 聞いて。俺の話もちょっとは聞いて。


 どうしちゃったんだよ。分からなくなる一方だよ。

 いつもなら聞く耳くらいは持ってくれるのに。


「でも、昨日化け物が出たのは篝さんのせいじゃないじゃん? アイツらが嫌いなのは分かるけど、篝さんに当たっても」

「…………ぅ」

「へ?」

「だから、違う」


 やっぱり。じゃなくて。


(え? マジで違った? どういうこと? 俺何も知らないんだけど)


「…………プリン」

「うん?」


 それなら昨日、コンビニに寄って買ったけど。イリアが起きた後で食べられるようにと思って。

 あれなら冷蔵庫に入れて、メールで場所を教えておいたような……


「あれ、勝手に食べた。……桐葉が買ってくれたのに」

「ふぇ……?」

「篝さん……」


 そりゃキレるわ。ぶちギレるのも致し方なしだわ。


 美咲に教えてもらったからお願いしたもの。

 イリアにとっての重要度は……滅茶苦茶高い。


「ち、違うよぉ!? 衣璃亜ちゃんの部屋の冷蔵庫の中なんて……!」

「あの部屋の冷蔵庫、ちょっと様子を見てもらってたんです。だから本体に付箋も張っておいたんですけど……ありませんでした? ピンクのやつ」

「…………ぇ」


 ……なんて間の悪い。


「…………怒った」

「ご、ごめんってばぁ!!」


 何か一つでも違っていれば、きっとこんなことにはならなかっただろうなぁ……


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