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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
Uneasy Transfer
63/596

018

「……変じゃ、なかった?」

「メチャクチャ似合ってた。今のところ最有力候補じゃないか、あれ」

「そうそう。きっくんがここまでべた褒めするなんてめったにないし。おかげでそういうことに興味ないんじゃないかって言われてるくらいだもん」

「だから俺のセンスを当てにし……ん?」


 今、なんて?


 なんか果てしなく失礼なフレーズが聞こえたような。

 俺だって言わない。師匠が相手でもそこまでは言わない。


 一体どこのどいつだ。言い出したのは。ぶっ飛ばしてやる。


「あれ、もしかして初耳だった?」

「ああ、初耳だよ。できれば一生聞かずにいたかったよ」


 聞いたことなんてあるわけない。

 聞いてたらその時点で噂の出所突き止めに向かってた。ふざっけんなよ。おい。


 そもそも言い出しっぺは男にどういう認識持ってるんだよ。


「そうは言うけどきっくん、女の子と話す事も少なくないよね?」

「その言い方からして既に恣意的なものを感じるんだけど。そりゃ話すことだってあるだろ。美咲とか深山とか」

「他にもいるでしょ」

「あれ、とか」

「だからイリアはその呼び方やめろよう? な? あの人もそれ気にしてるから」


 イリアの前では隠してるけど物凄く気にしてるから。

 篝さん、日に日に悩むようになってるから。


「ほら、俺が言うからその後に続いて。か・が・り・さ・ん。はいっ」

「?」

「その首傾げもさすがにそろそろ無理あるからな?」


 何回会ってると思ってるんだよ。

 俺が呼んでるところだって何回も聞いてるだろ。


 嫌か。名前を呼ぶだけでそこまでいやがるのか。

 むしろ美咲のことはどうしてそんなにあっさり呼ぶんだよ。


「……篝さん?」

「…………ぅえ?」


 やっべ。


 言ってなかった。そう言えばまだ美咲には言ってなかった。


「天上さんの苗字は『天上』……姉妹じゃなさそうだし……別の……?」


 怪しまれてる。メチャクチャ怪しまれてる。

 そんなところで推理力発揮しなくていいから。名探偵になんてならなくていいから。


「違うんだよ。あの人……じゃなくて、神堂さんの知り合い。イリアのところに住み込みで働いてるみたいで」

「どうしてそんな人と仲良くなっちゃってるの……」

「……流れで?」


 全部の事情を話せばもうちょっと納得してもらえ……ないか。微妙に。

 他に説明のしようがない。その辺りの設定だけはちゃんと聞いておいてよかった。


「流れ、ねぇ……」

「それよりどういうことだよ。俺がそういうことに興味なさそう、って。俺そんな話したことあった?」

「そのくらいは自分で考えなさい」

「そんなこと言われても」

「じゃあこの話はここでおしまい」


 分かるかよ。分かるわけないだろ。

 むしろどこかの誰かさんに変な目を向けられてるくらいなのに。


 知り合い全員をそういう目で見る方が余程大問題だろ。

 鈴木を少しは見習えよ。


「それにしても、きっくんってああいうのが好みだったんだ? へー、ふーん?」

「べ、別にそういうのじゃないんだって。マジで。本当に。ちょっと目を引かれただけっていうか……まあ、そんな感じ。うん」

「思わず目がいっちゃうくらいだったんだ?」

「だからさぁ……」


 違うんだって。そうじゃないんだって。

 なんで今日はこんなに意思疎通が困難なんだよ。


「イリアが着たら似合いそうだったし。先に聞いたの美咲だろ」

「なら最初から素直にそう言えばいいのに」


 あ、駄目だ。

 これ何をいってもどんどん泥沼化するパターンだ。余計なことを言うほど自分の首を絞めるやつだ。


「そ、それより次は? 確か他の店も見てから決めるって言ってたよな?」

「話を逸らそうって魂胆が見え見えだよ?」

「あーあー、他にもいい服が見つかるといいなー」


 聞こえない。

 美咲の呆れ果てたような声なんて聞こえない。

 冷めた視線なんてこれっぽっちも痛くない。


「喧嘩、よくない」

「あはは、違う違う。きっくんとはいつもこんな感じなんだよ。ねっ?」

「それに余計なこというのは大抵俺の方だしな。あっはっは」

「分かってるなら反省しなさい」

「ハイ」


 ちょっとした冗談だったのに。

 こんなのりを続けてたら美咲のノリもいつも通りになってくれると思ってたんだけど。


 人の心って難しい。


「で、結局次は? 昼食を前倒しにするにしても早すぎるだろ。まだ」

「さっききっくん自分で言ってたでしょ。他もちょっとだけ見て回るって。天上さんなら私に合わないデザインでも着こなせるかもって思って」

「美咲も自分の服くらい見たらいいのに」


 忍者みたいなことせずに、ゆっくり。

 その方がイリアのためにもなるし。色々な意味で。


 着せ替え人形にされる時間も減る。きっと。おそらく。


「見てるよ? あんまりそっちにかかり切りだと天上さん遠慮しちゃうかもしれないし」

「違う意味で遠慮したがってそうだけどな?」

「え……もしかしてやり過ぎてた?」

「通常運転が再開したようで何よりだよ」


 やっとか。やっと落ち着いてくれたか。


 着替えの速さは流行りのアーケードゲームといい勝負。

 ダンスなんてイリアが自分から踊ることはないだろうけど。


「ごめんね。天上さん。私だけ舞い上がっちゃって。次はちゃんと気を付けるから……他の店も、行ってくれる?」

「俺からも頼む。今日はちょっと暴走しちゃっただけなんだよ。イリアとゆっくり話をするタイミングも掴めなかったみたいで」


 実際、それは間違いない。


 授業間の休み時間は微々たるものだし、昼休みは決まって脱走。

 何回か来てくれたこともあるけど、それにしたって限度がある。


「……嫌じゃ、ない」


 クラスメイトと、一対一で喋るのはまだちょっと難しい。

 でもせめて、美咲となら。そう思ってた。


「恥ずかしいけど……嫌じゃ、なかった。……楽しい」

「天上さん……!」


 でも、余計な心配だったのかも。

 本当に美咲には頭が上がらない。


 たまに、本当にたまにだけど、クラスメイトも会話に交じってくれてるくらいなんだから。


「服。見て、くれる?」

「もちろんっ! あそことかどう? それとも向こう? あっ、きっくんもちゃんとついて来てよ?」

「あの、美咲? 美咲様? どうしてついさっきオフになったばっかりの暴走スイッチがまた入って――ちょっ、強い! 力強い!」


 この状態の美咲をどう止めろと!?


 しかも何故かイリアもけっこう楽しそう。


 走ったり跳ねたりはしない。そんなにぶっ飛んだことなんて美咲はしない。外では。

 だからまだ落ち着いてると思うけど……これ絶対クリスマスモード解除されてないよ。


「さっきはちょっと強引過ぎたから、今度は天上さん……うぅん、衣璃亜ちゃんの要望を聞きながら探してみよっか。どんなのがいい?」

「……さっきの、とか」

「似てる感じのデザイン? だったら――」


 結局スピードアップしてるし。

 イリアも完全に乗ってるし。


(でもまあ、これなら――)


 ――prrr♪


(め、メール? 篝さんから? なんだってまたこんなタイミングに――)


『すぐに済むから東館二階のエレベーターの前に来て! 近くに子供服とか売ってる方!』


 ……見事に真逆なんですけど。場所。


(それに……)


 まずい。とてもまずい状況だ。


「きっくん?」

「どうか、した?」


 こんな早々に二人きりの状況を作れと!?

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