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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
Uneasy Transfer
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017

「ひ、ぅ……」


 やっぱりか。

 やっぱりこうなるのか。どうしてもこうなるのか。


(昨日、自信満々に『余裕』っていった時点でそんな気はしてたけど……)


 教室に入るだけでも警戒心マックスなイリアに、ここはやっぱり厳しかったんじゃあ……


 別に誰も気にしてないって言ったって、それで改善できるわけがない。

 あまりに警戒してるから、逆に人目を集めてるくらいのもの。


「大丈夫大丈夫。ここに天上さんのことを狙ってる人なんていないから。ね?」

「……よそにはいるんだけどな」

「きっくん? どうかした?」

「いや、なんでもない」


 あーあー、集まってるよ。

 いつも拠点でお世話になってる方々の姿があちこちにあるよ。本当にごめんなさい。


 イリアは気付いて……ないな。この反応。

 篝さんとか橘さんじゃなきゃ分からないのか。それでも怪しいけど。


 こんな大事にするくらいなら橘さんも断ればいいのに。

 なんでここに大勢派遣してるんだよ。他の守りはどうするんだよ。


 ガラ空きでもおかしくないレベル。

 日程を調整したって橘さんは言ってたけど……やっぱり不安。

 不安と言えばもう一つ。


「ところで美咲。この場所をチョイスした理由だけ聞いてもいい? 何もこんなザ・人混みなんて場所を選ばなくても」


 どこに連れて行かれるのかと思ったら。

 電車に乗る前も『楽しい場所』なんてアバウトなこと言うだけだったし。

 自信満々に任せてって言ってたのに。


(イリアにそういう冗談は通じないって言ったのになぁ……)


 まさか俺への説教で忘れたわけじゃないだろうし。『私もだからね!?』って。


 この町唯一の大型商業施設に連れて来るなら先にそう言ってくれよ。

 電車の中だって俺と美咲で挟まなかったら危なかったのに。


 デカすぎて、かえって人ごみにならないかもしれないけど。

 中心の駅からバスで更に二〇分。

 西館と東館に分かれたショッピングセンター。


 けど逆に、ここ以外本当に何もない。……まあ、別にこの町が嫌なわけではないけど。


「でもきっくん、お城とかは次回にしようって言ってたよね?」

「ああ、だから買い物……そりゃここしかないか。田舎町め」

「忌々しそうに言うことじゃないからね?」


 だって事実だし。

 他は単線の鉄道に三〇分以上揺られて隣町まで行かなきゃいけないし。


 一駅であれだけビビってたんだから、どうなるかなんて目に見えてる。

 組織もうちの近くの駅じゃなくてここに直接送ってくれたらよかったのに。


「一応お昼の時間は後ろ倒しにする予定だし、ゲームセンターは奥にしかないし……大丈夫だと思うよ?」

「言ってくれたら予行演習くらい付き合ったのに」

「先に静野ちゃんとやったからいいよ。……聞きたい事もあったし」

「美咲さん?」


 怖い恐い。

 本当に何があったんだよ。深山も何も言わないし。


 まさか深山相手に鬼モードになったんじゃあ……クリスマスと違って記憶残るだろ。今回。

 一、二週間もあればトラウマも払拭できるだろうけど。


 いつも自業自得とか言ってくれるわけだし、本人にもそれが返ったってことか。


「きっくんは気にしなくていいの。ここならこの前言ってたグッズも多いし、天上さんもきっと欲しいの見つかるよ。……ねっ?」

「まあお金の心配もなさそうだしな」

「わ、男前。……で、お金はどこから?」

「向こうの人から預かってるんだよ。買うものもあるだろうって」

「なんでそんな信頼されてるの……」

「……俺の人柄?」

「そういう冗談はいいから」


 ひどっ。

 何も一蹴しなくても。俺だって全く信頼されてないわけじゃないんだぞ。


「ちなみにどこから? その辺りももう決めてくれてるんだろ?」

「もっちろん! こっちこっち!」

「いや、なんでそんなテンション高k――速いって!?」


 せめて行き先くらいは教えてくれてもいいと思うんだけどな。俺。






(な、長い……)


 何が『すぐ終わる』だよ。既に授業が一つ終わりそうな勢いだよ。

 いつもならこんなにかけないだろ。美咲も。


 確かによく通る。

 昔から美咲も気に入っていて、来たら必ず入る店。

 かわいい服も多いし、おすすめだって言うのは分かる。


 けどここまで時間をかけるなんて聞いてない。

 先に予定表出してくれよ。脳内にあるやつでいいから。


 しかもまだ一店舗目だろ。そこまで粘るか。

 広い店ならまだ分かるけど。見るだけなら五分も掛からないような。


 これがまだ続くとか正気か……?


「あ、これなんかどう? それともこっち?」

「ぁ、ぅ……」


 しかも美咲様ときたら、いつだったかの分身術まで使っておられる。

 目にも留まらぬ動きでイリアに似合いそうな服を次々と集めていらっしゃる。


 当のイリアは試着室に押し込んだまま、選んだ服を押し付けるように渡してた。


 運動神経いいとかいうレベルじゃないだろもう。いや、今に始まったことじゃないけどさ。

 体育の成績はそこまでいいわけじゃないのに。どうなってるんだ。


 イリアは最早美咲の着せ替え人形状態。

 顔が真っ赤になってるから。ほんとやめてあげて。


「……ぅ……」


 ごめん、無理。

 そんな捨てられた子犬みたいな目で見られても今回だけはさすがに無理。


 助けられないから。こうなったらさすがに助けられないから。

 今だけはちょっと諦めて。化け犬みたいに殴っていい相手じゃないから。


「あ、きっくんはどう思う? 何かアイデアとかない?」

「もうちょっとペースダウンしたら? とか」

「そうじゃなくて。服だよ。服」


 分かってるっての。


 ファッションセンスが皆無なことくらい知ってるだろ。

 流行とかも全く分からない。


 いつも最低限問題のない範囲でテキトーに選んでるだけだし。


「でもほら、男子の意見も大事じゃない?」

「そんなわけない。……もう一回言うけど、あんまりやり過ぎないでくれよ?」

「分かってる分かってるー」


 絶対聞いてない。


 駄目だ。完全に暴走スイッチ入ってる。

 中一のハロウィンに露出の高い魔女服着た時と同じテンションだ。


 普段からちゃんとガス抜きしないから。……俺の責任でもあるのか。


 大体、俺に訊かなくたっていいじゃん。

 これからデートに行くわけじゃないんだから。今がそれみたいなもんだろ。


 こんな風に見張られてなかったら気も楽だっただろうけど、なかったら今度は命の危険と隣り合わせ。

 本当にロクなことをしない。さっさと内部崩壊とかしてくれないかな。あの連中。


「んー……じゃあ、これとこれだったら?」

「だからそういう――って……」


 白のワンピースと……なんて言ったらいいんだろう?

 とにかく、町でいかにも誰かが来てそうな感じの着合わせ。

 なんなら電車の中で見たぞ。その服。今年の流行りか?


 そりゃまあ、どっちかって聞かれたら……じゃなくて。


「………………どっちでもいいんじゃ?」

「分かった、右の白ワンピね?」

「お、おい……!?」


 またバレた!?


「だって今、一瞬こっちを見てたよね?」

「……黙秘権を行使ます」

「目をそらしてももう遅いから。そんなこと言った時点でバレバレだから」


 もうやだ。このエスパー幼馴染。


 確かにちょっと……いや、ほんの少しだけ見てたかもしれないけど。

 テンションがバグってるんだからその鋭さだけは控えめにしてくれよ。

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