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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
Uneasy Transfer
61/596

016

「んー……」


 今日もあんまり話せなかったなー……


 きっくんもいっしょに迎えの車に乗っちゃったし。

 あの眼鏡の人も知り合い? 随分打ち解けてたよね。あとで聞いてみようかな。


 天上さん、もうちょっと周りにも意識を向けてくれたらいいんだけど。

 きっくんとしか喋らないなんて思わなかったよ? まさかあそこまでなんて……


「どうしたのよ。また天条のことで悩んでるの?」

「違うから。いつもきっくんのこと考えてるわけじゃないから。……きっくんにも関係のあることだけど」

「ほらやっぱり」


 そうじゃないんだってば。


 天上さんのご家族の人を知ってるのはきっくんだけだし、天上さん本人もきっくん以外とそんなに話さないんだもん。


 きっくんってば、どうやって仲良くなったのか教えてくれないし。

 いつも会ってる兄さん繋がりみたいだけど、共通の話題があるからだって思ってた。


「天条も相変わらずね。美咲がこんなに考えてるのに。ちょっと美咲への感謝が足りないんじゃない?」

「今は仕方ないよ。天上さんのこと、どうしてもきっくん頼みになっちゃうみたいだし」

「いくらなんでもあれはやり過ぎ。……もしかして、美咲まであの子のこと考えてるわけ?」

「あ、うん。天上さんともうちょっと仲良くなれないかなって。きっくんのことは抜きにしても」


 なんか、ほっとけない。

 まるで昔の私みたいだったから。


 きっくんに会いに来たみたいだけど、折角こうして同じクラスになったんだし。

 もしかしたら、会話のつなぎ方とかよくわからないだけかもしれないし。


 ……言ったら静乃ちゃんにも『世話焼きなんだから』って呆れられそうだけど。


「そういえば天条の事もとられっぱなしだもんね」

「きっくんは関係ないって言ったよね?」

「あの態度でそれは無理があるでしょ」

「な、なんのこと?」


 知らない。私、そんなの知らない。

 静乃ちゃんってば何を見てたの?


 私の知らないきっくんの友達……はいないけど。

 静乃ちゃんとだって、二人きりで話してたからって全然――


「転校生と二人でイチャイチャしてる天条のこと見てたじゃない。いつも。目に毒だから程々にしてよ?」

「そこまで言う!?」


 してないから。絶対、絶っ対してないから!


 それにイチャイチャって……ちょっと仲良さそうにしてただけだよ。うん、少し。


「転校してきてからそんなになってないでしょ。びっくりするくらい綺麗だし、つい見ちゃうってだけで――」

「それで余計に心配になったわけね。納得」

「だ~か~ら~!!」


 は、話が通じない……!


 きっくんならどこかで納得してくれてるのに。いつもの静乃ちゃんだってそうなのに。


 こういう話題になるといつもそう。

 私だって別に、したくてしてるわけじゃないのに……むむむ……


「大体、美咲にも責任あるんだからね。二人していつまでもいつまでも……あまりにあんまりだから、何日かかるかみんな賭け始めたし」

「何が!?」

「言わせないでよ。恥ずかしい」

「恥ずかしいのは私なんだけど!」

「やっぱり分かってるんじゃない」


 そんな秘密知りたくなんてなかったよ!

 しかも本人に言う!?


 大体私ときっくんが、つ……とか、合わないとか、そんなの気にしてどうなるの!?


「もうやだぁ……誰? そんなこと始めたの……」

「……なんとなくの流れで?」

「人の人間関係で遊んで楽しい? ねぇ?」


 怒るよ。さすがに怒るよ。

 それとも逆に……ちゃえば楽になる……?


(だ、駄目だめ。そんな軽い気持ちで決めたりしたら)


 そんなのきっくんにも失礼だよ。いくらなんでも。うん、よくない。


「ごめんってば。そんなに怒んないでよ。その時はちゃんと協力するから。私も」

「あんなこと言われた後で素直に受け取れるわけないよね?」

「いいの? 完璧なデートプランだって立てられるのに」

「そういうのいいから。ほんとに。似合わないし」


 そんなお洒落な場所に行ったって落ち着けないよ。絶対。きっくんも。

 普段通りに振舞おうとして、それが裏目に出て……あ、駄目。終わりまで全部見えちゃった。


 なんていうか、今更そういうのはちょっと違う気がする……


「普段はしないからいいのよ。いつもは見えない一面が知れた、みたいな」

「ねぇ静乃ちゃん? さすがにそろそろやめよっか?」

「あら、そう? そこまで言うなら私はいいけど」

「次からはそうやってすぐに引き下がってね……」


 疲れるから。本当に疲れるだけだから。

 明日だってまだ学校あるのに……賭けの事なんて忘れなきゃ。絶対意識しちゃう。


 デートじゃないけど、二人きりで出かけることなんて今まで何回も――


「……あ、そうだ」


 もしかしたら……いけるかも?






「――と、いうわけだから、ちょっと協力してほしいんだけど」

「…………はい?」


 美咲がとうとうバグった。ウチの前で。


 拠点から帰って来たと思ったら。

 約束通り綾河家にお邪魔しようと思ったら。


 どうしたんだ急に。何があったんだ、一体。

 今日は部活が休みだからって深山が呼びに来てたじゃん。また何か言ったのか。


 あとでメールで聞いておこう。絶対ロクなことじゃない。

 ……で、なんだって?


「天上さん、まだあまりクラスメイトと話せてないでしょ?」

「俺も正直あそこまで深刻とは思わなかった」

「だよね。だからきっくんもわたしに頼もうとしたんでしょ?」

「……うん?」


 そうだけど。確かにその通りだけど。


 美咲相手にはまだ心を開いてる方。

 夏休みにも顔を合わせてた組織のメンバー相手にすらもっと冷たい反応なんだから。


 一周回って篝さんの事も信頼してるんじゃないかって思えるレベル。

 未だに名前で呼んでるところを見たことはないけど。さすがにどうなんだよ。


 だから当然、クラスメイトとのコミュニケーションなんて夢のまた夢。

 美咲と一対一で喋ってるところもほとんど見ない。


 俺が間に立てばなんて思ってたけど、永続の予定なんてなかったよ。

 段階を踏んでいくつもりだったんだよ。なんでみんな揃って俺を経由しようとするんだか。


「でも、私もまだそんなに仲良くなれてないよね?」

「……なあ美咲。それってまさか……」

「そういうこと。学校以外で会ってみようと思って。どう?」


 学校以外で会ってる相手もほぼ全滅、なんて言えなかった。


 美咲のことだからきっとめちゃくちゃ考えてくれたんだと思う。

 だからこそ余計に断りづらい。魔戦の事情なんて関係なく言い辛い。


 学校に行くって最初に行った時からまるで変わってないなんて思わないじゃん。


「それに天上さん、この辺りに住んでたわけじゃないんだよね? 町の案内になるかもって思って」

「あー……そういえば……」


 一応そういう設定だったっけ。紛らわしい。


 転校前の学校も書類上は存在してるけど実際には通ってないし。どこかでバレるかもしれないのに。

 組織もよくあんな危ない橋を渡ろうとするよ。まったく。おかげで丸投げするしかない。


 それより問題は……


(イリアが外出たことなんてほとんどないんだよな……)


 知らないと思う。街の様子なんて全然知らないと思う。


 一応、篝さんにも付き添ってもらって、明るい時間に拠点の近くを散歩したことはある。

 あるけどそれだけ。それ以外は必ず白ローブから逃げてた。


「きっくん? どうかした? やっぱり難しそう?」

「いや、まだちょっと分からない。とりあえず向こうの人に訊いてみる」


 なんて、答えは目に見えてた。

 あの夜、空から街を見下ろしたけど、人見知りが激しいし……無理だろ。無理だろ絶対。


 電車にしてもバスにしてもヤバい。

 あの白ローブだっていつ何をするか分からない。


 さすがに[アライアンス]だってそんなことまでは――


『いいだろう。ただし日程はこちらで調節させてもらう。それでも構わないのなら行かせてやれ』


 ……いいの? マジで?

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