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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
Uneasy Transfer
60/596

015

「でき、た」

「はい、正解です。よくできて――……天上さん?」


 早いよ。

 確かに解いたらもう仕事は終わりだけど。あとは先生の解説を聞くだけだし。

 それにしたって早いって。よくできてるけどさ。


「こっちです。隣に」

「あ、ああ、戻ったんですか。ならいいんです。音もしなかったのでびっくりしましたよ」


 とてとて戻ってたけどな。即行で。


 しぶしぶ付き添いなしを了承してくれたと思ったら。

 今も不満そうな顔だし。悪かったって。


 でもさすがにこんなところまで付きっきりはマズい。色々な意味で。

 橘さんや篝さんに言われなくても、そのくらい分かる。


 っていうか、付き添ってたらどんな反応が返ってきたのやら……


 ただでさえ深夜の見回りのことでもお説教されそうなのに。

 師匠が何度も連れて行くから余計に。


 そんなに気になるならあの人に首輪でもつけ解きゃいいのに。引きちぎってそうだけど。


「――と、いうわけですから――」


 さすがに師匠も毎回――というか、あれから信徒を見つけられなかった。


 できたら怖い。向こうの行動パターンを完全に把握してることになる。

 そんなの元仲間でもなけりゃできっこない。


「そのためにここがこうなるわけです。ちなみに余談ですが――」


 あの化け犬や化け猫もあれっきり。

 おかげで深夜に無駄口を叩いて徘徊する不審な二人組の出来上がり。美咲にバレたらと思うと恐ろしい。


 橘さんは一時的に活動が縮小しているだけ、とか言ってたっけ。

 そういえばあのねちっこい喋り方の男もどこにいるのか分かってないや。


 あいつだけは特に警戒しておかなきゃいけないのに。

 化け鳥だって呼び出せるんだから。いつまた何をしてくるか分かったものじゃない。


 チャイムも鳴ったし、とりあえず考えるのは止めて――……って、まだ喋ってるのかよ。終わらせようって気はないのか。


「……もう聞かなくて、いい?」

「駄目だめ。気持ちは分かるけど。とりあえず前向いた方がいいって」

「桐葉、鳴ったら終わりって、言った」

「そうだけど。確かにそうなんだけど。あの先生のあれはいつものことだし」

「あれ、嫌じゃ、ない?」

「ノーコメント」


 って、やばっ。


 美咲が。美咲の目が。

 あれは完全にロックオンした目だ。しかも、何故か俺だけ。さすがにちょっと理不尽過ぎない?


「お喋りしすぎだからだよ?」

「だから顔から全てを読み取るなって。イリアもそう思うだろ?」

「味方を増やそうとするんじゃありません」


 でも実際エスパー能力発揮してるわけだし。イリアもびっくりしてるし。


「ごめん、なさい。私が、声……」

「いいのいいの。あ、でも、席に帰るのはもうちょっと待った方がいいよ? 先生もちゃんと言ってくれるから」

「対応の差を感じる……」

「え? ちゃんと特別扱いしてるよ?」

「深山みたいなこと言うなよ。美咲まで」


 どうせあれだろ。

 された側にとっては微妙な方の特別扱いだろ。物は言いようってか。勘弁して。


「まったくもー……きっくんの悪い癖がうつってからじゃ遅いんだよ? もっとしっかりして」

「またそうやってやたら母親めいた言い方を」

「誰のせいだと思う?」

「誰だろうな?」

「はぁああああ……」


 冗談だって。

 そんなに全力で呆れのため息なんてつかなくてもいいだろ。


「まーた二股してやがるぞあいつ……」

「そう? 今のはむしろ一人に向いてそうだったけど」

「じゃなくてさ。羨ましいとかないの? なぁ」

「あるわけないよ。あ、もしかして、僕達の話も聞きたい?」

「「絶対やめろ!!」」


 おい丸聞こえだぞこら。


 師匠に連日連れ出されたせいで余計な音まで耳に入って仕方がない。

 夜は目より耳が頼りになるのもあってほぼそのままの状態が続いてる。


 ……組織に頼めば耳栓くらいは用意してくれそう。


「うわ、またやってる……いい加減になんとかしなよ、天条も。分かってるでしょ」

「そのまえに『うわ』ってなんだよ。『うわ』って。またって言ったらそっちもだろ」

「会いに行くたびに三角関係見せられる身にもなってくれる?」

「だったらまずその幻覚をなんとかするところから始めたらいいだけだろ」


 どこが三角関係なんだよ。このやり取りにいたっては何度目だよ。


「実際目の前にあるじゃない。三角関係。ねぇ?」

「にゃ、にゃいけどっ!? ないけど!!?」

「残念、今の録音しておけばよかった」

「静乃ちゃん!?」


 そういうところだって。本当に。

 美咲もああやって慌てて隙を見せるから。


 ……それにしてもまさか、本気じゃないよな。本気ではないんだよな?


 深山のこういうところだけは本当に分からない。

 真顔で平然というからなぁ……さすが女王。そろそろ親衛隊も一人二人ついてそう。


「イリアも声かけてみたら? 例によってあんな調子だし。一応知らない相手でもないわけだし」

「……分かって、る」


 ……おい。まさか。


 そこまで遠慮しなくていい相手だからってまさか。まさかだよな?

 クラスメイトと違ってあんな校舎裏で話したんだし、初日にだってあったよな?


「イリア? もしかして……」

「な、ない。違う。平気。言える」

「焦り過ぎだろ。……ほんとに言える?」

「だ、大丈夫。み……み……」


 ヤバい。これ本格的にうろ覚えのパターンだ。

 マジかイリア。本気なのか。


 確かにクラスメイトより話す機会は……いや、頻繁に来てるだろ。


 もう少しでいいから興味持ってあげて。

 深山も割とそういうの気にするタイプだから。


「……みゃ、あ?」

「さっきからこの教室、猫多いな」


 惜しい。惜しいけど全然違う。

 どこから出てきたんだよ。今の。


 ああ、深山の頬が引き攣って――


「うわ、天条そういうこと言うんだ……ないわ……」

「冗談でも録音とか口走るやつが何を言うか」

「だって私は同性だし」

「いきなり最強のカード切りやがった」

「そういう問題じゃないんだけど!? 二人ともアウトだよ!?」


 まあまあ美咲。今だけは優しくしてあげないと。

 深山さん凹んでるだけだから。いつもより攻撃的になりやすくなってるし。


 さっきだって、俺が猫を持ち出す前に表情が固まってた。

 まあ何回か顔も合わせてたし、そうなるのもちょっと分かる。


「ストップストップ。ひとまとめにしたらまた深山がダメージ受けるから。今は特に」

「え? あ……って、そうじゃなくて! それとこれとは別問題!」

「実際録音されてないからセーフだって。美咲は慌てすぎなんだよ。何か減るわけじゃないのに」

「減ってるから! 私の気力が今も減り続けてるから!」

「じゃあ休まないと。な、イリア」

「……大きな声、疲れそう」

「きっくんのせいだからね! 騙されちゃだめだよ!?」

「そんな人聞きの悪い」


 まったく。心配してる幼馴染に向かって何て言い草を。


(……そう言えば深山は?)


 いつまで黙ってるんだか。

 まさか凹んだまま教室に……


「天条に気を遣われた……一〇〇倍傷つく……」

「そのひと言で俺は今、更に傷ついたんだけどな?」

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