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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
Fateful Encounter
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006


『五月□日、水曜日


 昨日は美咲と遅くまで一緒だったから実験はできなかった。


 なので今日から魔法練習の記録と、そのついでに一言二言このノートに書いて行こうと思う。

 次あの眼鏡に会ったら今度は本当に記憶を消されるかもしれないし。


 このノートまで消されたらもうどうしようもない。さすがに諦める。


 で、ここから実験結果。

 初日は失敗も失敗。大失敗。

 硬くなるどころかただ無駄に疲れただけだった。


 その辺の裏紙使ったのが失敗だったかな。

 一昨日押し付けられた変な木の板はぼんやりと光ってた気がしたけどそれもなかった。

 あのときパクっておけばよかったかも。どうせ回収されてたと思うけど。


 明日はとりあえず丸めてみたり、紙の形状を変えてみよう。

 他に何かいい方法でもあればこんなこと考えなくて済むんだけどなぁ。


 あ、そうそう。

 こいつもちゃんとどこかに隠しておかないと。誰に見つかってもただじゃすまないだろうし』


 最初に試してみたのは予定通り、対象を硬くするっていう魔法だった。


 結果は惨敗。何をしたらいいのかもあまりよく分からなくて、疲れが溜まればその度に眠っていた。

 紙が少し、本当に少しだけ硬くなったような気もしたけど、それだけ。


 力任せに握ってたせいで手は痛くなるわ、握ってるだけなのに謎に疲れるわでもう散々。


 正直、辞めようかちょっとだけ迷った。


 本当はやるべきじゃない。それは頭で分かってた。

 それこそ結果的に美咲を巻き込むかもしれないし、どんな影響が出るか分からない。


 でも、怖かった。

 もしかしたらまたあの化け犬が襲ってくるかもしれないんじゃないかって。


 眼鏡も対策みたいなものは何も教えてくれなかったから、どうしたらいいのか分からなかった。

 いっそあの場で記憶を消されてたら楽だったのにって、ちょっと思った。


『五月△日、日曜日


 実験結果。微妙。

 とりあえず進展はなし。


 やっぱりこの方法自体、練習には向いてないんじゃないかって思う。


 初日とほとんど何も変わってない。やっと微妙に光ったかなってレベル。

 肝心の硬さは何も変わってない。紙はペラペラのままだし木の枝は簡単に折れるし。

 魔力っていうのがどんなものかもまだよく分かってない。


 ああでも、すこしだけ疲れにくくなった。気がする。なんとなくだけど。


 誰かに確認してもらいたいけど、そんなこと頼めるわけがないよなぁ……

 まさか魔法の練習のアドバイスなんてもらうわけにもいかないし。


 マンガ描き始めたんだけど、とかなんとか言っとけば意外と誤魔化せる? 見せろって言われたら詰みそうだけど』


 あの化け犬が出てきても戦えるわけじゃないし、記録もすぐに頭打ち。

 駄目元で木の枝とか、簡単に手に入りそうなもので他にも色々試してみた。


 それでも結果が変わるわけじゃなくて、むしろなんか下手になった感じさえした。

 形状の問題とかその時は色々考えたけど、結局原因も何も分からなかった。


 疲れるまでの時間は大雑把にメモしたけど、対して参考にもならない。

 初日が二回だったことを考えれば二十回って記録もそれなりに見えるけど、多分腕立て伏せくらいの感覚だと思う。


 できる人からしたらなんてことないレベル。

 これでやっとスタートラインに立てたかもってくらい。


 あの、魔力の判定? みたいなのもできるわけないし本当にどうやって確かめたらいいんだろう。

 ……足も鍛えようかな。


『五月◇日、水曜日


 無理。

 やっぱりあの硬化魔法(仮)、話にならない。


 ビニール袋でもほとんど変わらないなんて思わなかった。

 シーツも、枕も、皆同じ。かといって元から硬いものじゃ違いが分からない。


 シャー芯が少し折れにくくなったような気がしなくもないレベルってどんなだよ。やる気あるのかよ。


 そりゃ『F-』扱いもされるわ。他の人はどうだか知らないけど。

 あの眼鏡みたいな炎の魔法とか夢のまた夢。また襲われたりしたらそれこそヤバい。


 何か別の方法を考えないと。次もあの眼鏡が来てくれるかどうかなんて分からないんだから』


 一週間経つ頃にはもうほとんど確信に変わった。

 このまま続けても何の意味もないって。


 でも、書き出したのは正解だったと思ってる。おかげで少し、落ち着いて考えられた気がした。


 硬くする魔法は駄目。

 逆に考えれば、他の魔法ならまだ話は変わるかもしれないってこと。


 諦めの悪いやつだって自分でも思う。

 でもその頃にはもう、退くに退けなくなってた。


 魔法の練習を始めた頃から、登下校の間はずっと黒犬の姿を探してた。

 学校にいる間もどんな方法があるか考えてはその度に美咲にシャーペンでわき腹を突かれた。


 多分美咲には怪しまれてたけど、あの日ぶっ倒れたのが不安だからって言って納得してもらってた。

 実際、原因はあの日の出来事みたいなものだから嘘じゃない。


 誘拐事件の噂もあまり減らなかった。

 でもやっぱり具体的な情報はほとんど入って来なくて。

 それどころか、見つかった人はほとんど何も覚えてないってことが改めて分かったくらい。


 おかげで気付けた。記憶消去の魔法の存在に。

 もしかしたら魔法じゃないかもしれないけど、それができる何かは絶対ある。


 でも余計に分からなくなった。

 そんなものがあるならなんで俺には使わなかったのかって。


 だって記憶が残ってるってことは、そういうこと。

 効果がなかったなんてそれこそない。あり得ない。

 俺にそんな都合のいい免疫みたいなものなんてないんだから。


 色々考えたけど答えなんて分からないし、すぐに止めた。

 その時は他の事で頭がいっぱいだった。


『五月×日、月曜日


 なんで気付かなかったんだろう。

 光の魔法だ。


 光の魔法なんて呼べるほど大層なものじゃないけど、光らせてやればよかったんだ。


 不気味なくらい実験は上手く行った。

 紙でも枝でも枕でも、手にもって『光れ』って念じてやるだけで簡単に電灯に変わった。


 最高。完璧。こんな方法があるなら最初から知りたかった。

 なんであの眼鏡もこっちで確かめなかったんだってくらい。


 しかも、頭の中に浮かべるイメージを少し変えてやると光り方もそのまま変わった。

 持続時間も硬化魔法とは比べ物にならないし、何回やってもほとんど疲れない。


 加減を間違えるなんてバカやらかさなきゃ、何回でもやれそう』


 胸のつかえが取れたような気さえした。


 当時の俺にとってはとにかく衝撃的で、嬉しい発見だった。


 だから若干、調子に乗ったのはあると思う。

 ものを光らせるんじゃなくて、光をそのまま空中に出せないかって思った。


 この前の眼鏡の炎みたいな攻撃はできなくてもいいけど、これならって。


 今の自分の限界も試したかったんだと思う。

 じゃなきゃ初回からありったけの魔力を込めて盛大に光らせてやろうなんて思わない。


 目論見自体は成功した。

 手の中に発光体を作り出すことはできた。

 目を固く閉じてたのにそれでもハッキリ分かるくらい強烈な光を放ってた。


 大きさもかなりのものができてたと思う。

 何か記録に残したわけじゃないけどそれは間違いない。


 そう、そこまではよかった。


「――何か……言い訳は?」

「……これっぽっちもございません」


 結果、美咲鬼が久し振りに出てきたんだけど。

 ピクリとも動かない笑顔。ドスの効いた声。


 二度と見たくないと思ってた、美咲の冗談抜きのマジギレモード。


 知らないに決まってるじゃん。

 魔力が空になったら自分でも分からない内にぶっ倒れるなんて。


 いや、そんな簡単そうなこともまるで想像もできなかった俺が悪いんだけどさ?

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