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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
Uneasy Transfer
54/596

009

「と、まあ見事に予想通りの展開でしたよ。この調子だと一週間は続くんじゃないですかね?」


 冗談抜きで。真面目に。


 拠点に帰って心底安心した。まだ家に着いたわけじゃないのに。

 でもイリアは仕方ない。ここが家みたいなものだし、疲れもあっただろうし。


 ……あの軽さで本当に大丈夫なのか、ちょっと心配もあるけど。


「あ、あと、一応クラスメイトも気は遣ってくれそうなので、本気で怯えるようなことはひとまずないかなって感じです」


 騒がしくするのも悪い。よかった。隣の部屋が空いてて。

 狭い上にパイプ椅子と即席テーブルしかない部屋でも、まあ仕方ない。


 イリアのところには篝さんがいるし。カメラも回ってるし。万全。


(……っていうか、こんなにくっきり映ってたのかよ)


 よく見える。って言うか見えすぎ。


 こんなのプライバシー皆無じゃん。

 音までばっちり拾ってるし。こんなところでハイテク発揮しなくていいのに。


「それだけあれば馴染むだろう。想定の範囲内だ。いくらでもやりようはある」

「だといいんですけど……その辺はやっぱり、イリア次第かと」

「呆けている場合か。貴様の役目だろう。天条」

「……また酷なこと言ってくれちゃいますね?」


 確かにそうだけど。元からそのつもりだったけど。


 一応今日の話は一通り伝えた筈なんだけどな。できるだけ。

 イリアが一瞬で囲まれたこととか、怖がってたこととか。

 あと、俺に矛先が向けられたことも。


 正直使えそうな方法なんてごく一部だと思うんだけど。

 なんとなく、時間が経てば少しは慣れてくれそうな気がするけど……ねぇ?


「現状気を許されているのは貴様だけだ。となれば、貴様がやるのは当然の事。何か不満があるなら言ってみろ」

「ないですよ。不安はありますけど。だからイリアに美咲のことも教えたんです。ただ……」

「話しかけるわけがない。その程度、貴様も理解している筈だ」


 今日会話できなかったのはむしろ、美咲が囲まれたせいなんだけど。

 案の定、深山も参戦してたし。ほんとあいつも自由に生きてるよな。

 そろそろ美咲から恨みのこもったメールが送られたりして。


 でも悪いことばっかりじゃない。


 イリアも美咲のことは『覚えた』って言ってた。

 さすがは美咲様。イリアが相手でも変わらないのか。


(……まあ、篝さんには申し訳ないけど)


 色々な意味で。

 普段あれだけ色々やってくれてるのに。


 いい人なのにな。間違いなく。なのにちょっと不憫っていうか。


(って、この足音……)


 しかもこのバカみたいな存在感。該当者はただ一人。


「まーたグダグダやってんのかテメェら。もっと他にやることあるだろうが」

「その言葉はそのまま貴様に返してやる」

「今はイリアのことが最優先だと思うんですけど」


 来たよ。やっぱり。

 いつも顔を見せたり失踪したり。どこで寝泊まりしてるんだか。


 明日からのトレーニングならちゃんと、橘さんの監修つきで予定立てた。なのに何を今さら。

 言われなくたってサボりませんよ。自分のためだし。あとが怖いし。


「だからだろうが。あのガキも今は寝てんだろ? だったら来い。五秒以内」

「わぁ優しいー」


 いつもなら三秒なのに。


 それにしても珍しい。わざわざ呼びに来るなんて。どういう風の吹き回し?

 しかも今、イリアのことが最優先って部分は否定しなかったよな?


「待て神堂。貴様何を考えている? 迂闊な行動は……」

「バカ。んな悠長なこと言ってどうすんだ。いいから来いっつの」

「師匠はせっかちすぎじゃないですかね?」

「テメェも口答えすんな。オラ、行くぞ」

「は、はぁ……?」


 一体どこまで?

 聞いたところで、師匠が素直に答えてくれるわけがなかった。






「ぉおおおおお……!?」


 風が。また風が。

 人のバランスなんて考えてもくれない風が。


 こっちはこんな高さ飛んでるのに。配慮してくれよ。


(あーあー、人がアリみたいだな、おい。その辺に知り合いもいたりして)


 でも今は、空から町を見下ろす余裕もあった。

 一応練習の成果はあるみたい。


 高すぎないように、速すぎないように。

 でもしっかりと、どこまでも遠く。


「無駄に翼デカくしてんじゃねぇよバカ。それじゃ見つけろっつってる様なもんだろうが。連中のことぶちのめせるわけでもねぇのに」

「いや、今はまだこのくらいの大きさじゃないと安定しないんで、ぇあああっ!?」


 だから風止めろって!


 バランスが。バランスが崩れる。

 ジェットコースターって生易しかったんだってくらいの暴れ方はやめて。死ぬ。


「その大きさだと安定がなんだって?」

「今のは風強かっただけでしょうが!?」


 どうしろと。仕方ないじゃん。

 なんとか落ちずに保ったんだからまだマシでしょうが。


 ……よかった。ほんとに。落ちなくて。


「大体、まだ慣れきってないのにいきなりこの高さ飛べとか無茶言い出したの師匠じゃないですか。しかもこんな時間に。どこ向かってるんですかこれ?」

「そんな言い訳並べて逃げたらできるモンもできねぇよ。最初から今のオマエに空中戦なんて期待してねぇし」

「言い方。もうちょっと言い方ないんですか、師匠? そんな調子だからプログラムの参加者から逃げられるんじゃ……」

「根性ねぇ方が悪い」


 なんて横暴な。


 あんまりだろ。いくらなんでもあんまりだろ。

 そういう言い方するから残りそうな人まで逃げるのでは……?


 本当に何やらかしたんだろう。このデタラメ人間。


 俺のとき……も、まあ、確かに色々あれだったけど。継続中だけども。


「大体こっちはジジィに言われて時間割いてやったってのにいい度胸じゃねぇか。やる気もねぇくせに」

「何人かはいたんじゃないですかね? で、無茶苦茶っぷりに恐れをなした、とか」

「ハッ、そんなヌルい考えでやっていけるかよ」


 だーかーらー……言っても無駄か。


 大体誰だよジジィって。

 なに考えてるんだよジジィさん。組織のメンバー病院送りにしたいの?


 篝さんみたいなパターンだってあるだろうし……


「じゃあ次は俺みたいなやつ集めたらどうです? こんな優等生、探しても中々いませんよ?」

「寝言は寝て言えすっとこどっこい。ロクに魔法も覚えられてねぇくせに」

「真正面から正論で殴るのやめてくれません?」


 分かってますよ。覚えますよ。

 ちゃんとしっかり覚えりゃいいんでしょ。こんちくしょう。


 そんなホイホイ使えるわけがない。


(……あっ)


 思い出した。そうだ、魔法だ。


「そういえば。術式のこと、どうして教えてくれなかったんですか? 割と必須技能っぽいんですけど」

「使ってきゃその内覚えるもんだろうがアホンダラ」

「そんなノリで押しきられても」


 んなわけあるか。


 師匠みたいに誰もが説明書読まないタイプだと思うなよ?


「なに勘違いしてるのか知らねぇけどな、オマエのあれだって一応は術式だろうが。決まった形なんてねぇんだよ」

「……『そんな大雑把なものなの?』って聞かれましたよ? 俺」


 実際大雑把だったし。やりやすいけど。

 師匠もそんな睨まなくても。


「チッ、この前いきなり長くなった思ったら誰か余計な入れ知恵しやがったな……」

「余計なって。篝さん心配して言ってくれただけだと思いますよ?」

「だとしてもだ。誰がなに言おうと無視しとけ。《火炎》も《凍結》も一言で発動させて当たり前の魔法なんだから気付きゃしねぇよ」

「橘さんみたいに?」

「ありゃ《火焔》だ。似てるけど別物……ってなんでオマエにそんなこと教えてやらなきゃなんねぇんだか」

「いや、あなた師匠ですよね? 教える側ですよね?」


 やっぱりこんな調子でやったんだろ。どうせ。橘さんも苦労してそうだなぁ……


「テメェが勝手に言ってるだけだろうが。それより構えろよ? いやがった」

「いや、何が。一番大事なとこ省かないでくださいよ」


 なんて、自分で見て確かめろとか言うんだろ。知ってますよ。


(ったく、こんなところに何が――)


 師匠の興味はとにかく分かりづらい。

 共通してるといったら――


「……げっ」


 いるよ。めちゃめちゃいるよ。

 忘れたくても忘れられない白ずくめがわんさかと。


「ンだよ。気付いたのかよ。折角特別メニューも上乗せしてやろうと思ってたのに」

「ほんとそういうところですよ鬼畜師匠」

「ふざけてンじゃねぇよ。いいから行くぞ」


 ……へ?

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