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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
Divine Servant
517/596

008

 ――奇妙な老人の来訪から、一夜明けて。


「……どこから話しましょうか」


 集まったチームメイトを前に、衣璃亜は小さくため息をついた。

 無論、チームメイト達への呆れではない。


 反応は三者三様。

 それでいて、衣璃亜から見ても当然と言える様子でもあった。


 質問がないかと訊ねたところで、答えが返ってくるとは思えなかった。


「……もしまだ纏まってないっつーなら……先にひとつ、いいか?」


 故に、意外だった。

 声が上がるとしたら、自身がある程度話を進めたその後だろうと衣璃亜は思っていた。


「これを聞いていいのか、分かんねーけどよ……昨日の話がマジなら、どうしてこんなコトになっちまったんだ……?」


 あらかじめ予想していたその疑問が出るまでにもしばらくかかるだろう、と。


 考える時間は充分にあった。

 それでも2人のチームメイトと担任の様子を見た後では、質問攻めにされるのもしばらく後だろうと判断せざるを得なかった。


 そうでなくとも、いつか問い詰められたであろう内容とはいえ。

 それを口にできる雰囲気とは思えなかった。


「いやっ、答えづらいならいいんだけどよ? 昨日の話がマジでもカミサマのコトなんてさっぱり分かんねーし――……」


 実際、宏太も訊ねたことを後悔したのかまくし立てる。


「構いませんよ」


 おかげで、否定の言葉を遮るようにうなずく形となってしまった。


 言い訳のようにも聞こえてしまう気遣いは、衣璃亜にとって必要のないものだった。

 強がりなどではなく、本心から。


「こうなってしまった以上、話さなければと思っていたことでしたから。……不本意ではありますが」


 アレには多少、見習わせるべきか――そんなことを考える余裕さえあった。


「ふ、不本意ならそんな、話さなくても……」

「あなた方には何の落ち度もありませんから。気にすることなどありませんよ、何も」


 そのつもりで今日ここへやって来たというのも、本当のこと。


 衣璃亜が否定してもなお三凪はどことなく不安そうな表情を浮かべていたが。

 心配されることなど何もないというのが、衣璃亜の偽らざる本音だった。


 何より。


「わたしがいいと言っているんですから気に病む必要などありませんよ。……あなた方も、気になっているのではありませんか?」


 無理に言わなくともと言うその2人が関心を持っているのは明らかだった。


「いや、それは……」

「な、なんつーか……なぁ?」


 指摘された2人は気まずそうに視線を逸らしていたが。

 咎めるつもりなど衣璃亜にはない。


 気にならない筈がないのだ。

 昨日の話を信じたとしても、信じていなくとも。


「……話が逸れましたね」


 衣璃亜がこうしてここにいる以上。


「こうなった理由に深いものなどありませんよ。私の存在が目障りだった、それだけのことです」


 どちらであったとしても、その事実は変わらないのだから。


 誰かが、息を呑んだ。

 全員がそれぞれ驚愕の表情を浮かべていたため、だれかは分からなかったが(衣璃亜にはっきり分かるのは桐葉でないということくらいである)。


 別に誰であろうと構わなかった。

 誰がそうしていたとしてもおかしくはない。


 驚愕の視線を受け止め、しかしそれに反応することなく衣璃亜は続ける。


「その時点ではまだ様子を見るに留めていたのですが……いずれは直接的な妨害に動くと思ったのでしょう。昨日のアレがこちらの組織とかかわりを持ったのも、私がこうなる前のことでしたから」


 結果的につながりは強くなったわけですがと衣璃亜が付け加えると、二葉もそれに小さく頷いた。


 どうなろうと構わない――などと思っていたわけではないものの。

 過度な干渉を行うつもりも、当初はなかった。


 感情的なものではなく、そうせざるを得ない部分もあった。

 ……実際には彼ら組織の面々も過度な干渉に強い抵抗案を抱いていたようだったが。


「向こうにとっても最悪と言えるもしもを警戒して打った先手……それが私の排除だったわけです。無力化で止めるつもりもなかったでしょうね」

「そ、そんな……」


 結果として生まれた今のこの状況は、だれにとっても予想外と言えるものだった。


 昨日の面々は主を助け出すという大義名分を掲げ(半ば強引に)干渉を強め。

 対して組織は、それを許容する代わりに自分達の要請に応えることを求めた。


「悪いことばかりとは言えませんよ。全体的に見ればの話ではありますが……現代の技術で解決できなくとも、アレを利用すればその限りではありませんから」


 たとえば、見えない襲撃者の一件のように。


 声を漏らすことこそなかったものの、この場にいる誰もが状況を理解した。

 研究中だった新技術などありはしないということも含めて。


「そもそも、私の油断が招いたことでもありますから。桐葉と巡り会うきっかけになったと考えると、否定する気にはなれませんね」


「「「…………」」」


 しかしそんな雰囲気も、たちまち吹き飛んでしまった。


「すげーなオイ……」

「て、天上さん……」


 更にどういうわけか、気の毒なものを見るような視線を向けられる。

 境遇を憐れんでいるわけでもないのに、だ。


「……その木っ端図かしい上に笑えない冗談は、置いてもらって」


 桐葉も同様に、微妙そうな表情を浮かべている。


 いま彼が言おうとしていることとは全く別の理由で。

 しばらく何か言いたげな表情をしていたが、結局桐葉がそれを言葉にすることはなく。


「イリアのことを狙ったのは、白の側にいるカミサマみたいなやつらで。……実際には、そいつに命令された連中が動いている」


 ゆっくりと、その事実を確かめる。


「そういうことになりますね。……もっとも、された側がどの程度事情を知らされているかはわかりませんが」


 そしてそれに衣璃亜が頷くと。


「じゃあ、“剣聖”ってやつもその中にいるかもしれないのか……」


 神妙な面持ちで――衣璃亜にとっても馴染みのない単語を呟いた。



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