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リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
Soaring Chick
45/596

023

「結局、あの天使がなんだったの? なんかわけわかんないくらいお礼言ってたけど」

「んー……宇宙誕生の謎が解けた、みたいな?」

「お願いだからもうちょっと身近な例にして」


 いくらなんでも言えるわけない。空を飛ぶ方法が見つかりましたなんて。

 まして実際にその方法で飛べました、なんて。


 頭の中身が空の上に飛んで逝ったんじゃないかって、ガチの目で心配されるに決まってる。


「そのくらい填まるアイデアだったんだって。さすが大天使ミサキエル。天啓で導いてくれるなんて恐れ入った」

「……それなら一回、天使らしく説教してみよっか?」

「ごめんなさい調子乗りました」


 こわい怖い恐いコワい。


 何する気だよ。天使らしい説教って何する気だよ本当に。

 言うんじゃなかった。余計なことなんて言うんじゃなかった。


「もー……昨日はいきなり遅くなるって言うし、帰ってきたと思ったらやたら疲れてるし……それなのに次の朝にはこれって……あーあ、心配して損した」

「いや、それはまあ……なんでなんだろうな?」

「私が聞いてるんだけど!?」


 意外と飛んだから疲れたって感じはしないんだよな。

 いやまあ、あの化け犬とか化け鳥クライミングで死ぬほど疲れさせられたから何も変わらないか。


 やりたくない。未来永劫、あんなの二度とやりたくない。

 橘さんからは篝さんには話すなって言われたし。ごもっともだ。


(帰った後もメール送ってくれたくらいだしなー……)


 いつもならそこまですることはほとんどないのに。


 橘さんの予想通り篝さんからは反対された。今日はここで休んだ方がいいって。

 結局帰ることになったけど、昨日は荷物まで持ってくれて。


(……確かにちょっといき過ぎてる気はしなくもないかも)


 まあさすがに何か理由はあるんだろうな。


 そう言えば橘さん前に驚いてたよな。篝さんの俺達への態度に。

 俺はむしろ、橘さんが言ったような姿が想像できないくらいなんだけど。


 いつ落ちるか分からない状況で化け鳥の身体をよじ登った、なんて知った日には本当に卒倒するかもしれない。


 あの橘さんでさえ珍しく驚いてたから。

 あれで二言目に『馬鹿者』が飛んでこなかったらなあ……


 でもしょうがないじゃん。他にどうしようもなかったんだから。

 飛行魔法だって覚えられてないのに。本当よくやったよ、我ながら。


「いやでも、本当に感謝はしてるんだよ。朝までこうして我が家に来てくださったわけだし? いつもお世話になっております」

「本気でそう思ってるならそのとってつけたような敬語やめて?」

「ハイ」


 うん、やっぱり美味い。

 自分で作ったときと比べてどうしてここまで違うんだろうな。使ってる食材は同じ筈なのに。


 母さんも父さんも起きないのはいつものこと。

 昨日は俺より遅く帰ってきたくらいだし。起こしちゃ悪い。


「分かってるのかな本当に……こんな調子じゃ夏休みの宿題も手を付けてないとかありそうで嫌なんだけど……」

「まさか。終わらせたに決まってるだろ。あんなめんどくさいもの」

「……また初日にまとめてやったんじゃないよね?」

「ないない、やってない。俺がそんなやつに見える?」

「見えるから言ったんだけど。前科何犯だと思ってるの、きっくん?」

「さあ?」


 さすがにそんなことまで覚えてない。

 今までの休みは大体そうしてたからそれで計算できないこともないけどめんどくさい。


「で、結局宿題は? 均等に割り振ったりなんてしてないんでしょ。どうせ」

「そりゃまあ、配られたその日に終わらせたし」


 いやぁよかった。今年は早く配ってくれて。自由研究も小学校で終わりだったし。


「計画性! あれそういう仕様じゃないから! 一学期の復習とかそういう大事な役目もあるから!」

「あんな学校の言い分なんか真に受けなくても……」

「どうしてそこできっくんに心配そうな顔されなきゃいけないのかな!」

「真面目過ぎる幼馴染が心配だから」

「きっくんが大雑把なだけでしょ!」


 じゃあ足して二で割れば完璧、なんて言える雰囲気じゃなかった。


「まあまあ美咲、落ち着いて。ちゃんと日記はその日につけるようにしてたから」

「日記ってそういもの……ん? してた?」

「……まあ、その日の内に書けないこともあったし」

「出して」

「? ……あ、そういう……えーっと、一、二、三、四――」

「お金じゃなくて! ……ちょっと待って。なんでそんなに入ってるの?」

「……お祭りの軍資金?」


 実際にはここまで使うことなんてないだろうけど。

 二人分だし、このくらい余裕があった方がいいんだと思う。多分。


「おばさんってば変なところで甘いんだから……」

「そこはほら、しっかり者の幼馴染様がいらっしゃるから」

「……うん?」

「うん」


 お金を渡してくれたときにちょっとばかり失礼なことを言ってくれやがったけど、そんなの気にしない。

 あんなのに囲まれたら嫌でも耐性つくわ。


「や、この前誘ったじゃん? で、オーケー出したじゃん?」

「だって毎年行くって決めて……ちょっと待って? じゃあ、これ……」

「そ、二人分。俺と美咲の」

「えぇ……?」


 分かるよ。その気持ち分かるよ美咲。

 俺も最初は小遣いの前借りで交渉するつもりだったし。






「――飛べっ!」


 ………………これでもダメ?


「んー……出ないね? どう? イリアちゃんは見えた?」

「…………みえ、た」

「見えてないってー」


 だと思ったよ。知ってる。

 イリアもそんな、気を使わなくたっていいのに。師匠みたいになってもらっても困るけど。


「どうしてだろうねぇ? あの時はちゃんと発動してたんでしょー?」

「じゃなきゃ今頃、地面に真っ赤な花が咲いてましたよ。よく助かったなって自分でも思ってます」

「縁起でもないこと言っちゃダメだよぉ。悪い子にはお仕置きしちゃうぞー?」


 篝さんのお仕置きだったら受けても動けなくなるなんてことはないんだろうな。どこかの誰かさんと違って。


 なんて、さすがにこれ以上言うつもりもないけど。

 本気で心配してくれてたって、俺にもなんとなく分かるくらいだったから。


「アドバイスしてあげたいけど、翼は使わないんだよねぇ……桐葉くん、あの時と違うことなぁい?」

「違うって言われても……あ、橘さんが言ったバンジージャンプ使って――」

「ダーメ。さっきから言ってるでしょぉ?」

「ですよね」


 さすがにやりたくない。

 師匠にだけは気付かれないようにしないと。また落とされたら敵わない。


「イリアちゃんといっしょでも出なかったしぃ、やっぱりその時の感覚を思い出しながらやるしかないのかなー……」


 そんなことを言われても。

 もうほとんどヤケクソみたいな勢いで『飛べ』って思い浮かべてた。


 昨日ほとんど練習できなかったせいか? でも、昨日の時点でもう翼は出せなくなってたしなぁ……


「また飛行魔法の練習か、天条」

「そうするしかないんですよ。出なくなったんですから。翼」

「翼、翼と……呼び名も決まっとらんのか」

「橘さんは魔法をペットか何かとお思いで?」

「……貴様はまずその思ったことをすぐ口にする癖を直せ」

「一昨日の橘さんも大概でしたけどね」


 子供の頃からとかなんとか。って、そうじゃなくて。


「まさか橘さん、魔法に名前つけろとか言うんじゃないですよね? ないんですか。他に。何か」

「飛行魔法は本人の思念の影響を受けやすい。貴様がつけろ。貴様の魔法だ」


 魔法の名前なんて考えたこともないんだけど。


「んん……翼……飛ぶための翼……」


 どこまでも高く? いやでも、それ言い出すとキリがないし――


「……《飛翼ひよく》?」

「……何?」

「だから《飛翼》ですよ。飛ぶ翼。分かりやすいでしょ?」

「…………そうか」


 なんだその反応。

 言い出したのはそっちでしょうが。


「桐葉くん桐葉くん、考えなおそぉ? いっしょに考えるからー……」

「え、そんなに駄目ですかコレ。シンプルイズベストって思ったんですけど」

「確かにシンプルではあるんだけどね?」


 篝さんまで。ということは、もしかしてイリアも……


「?」

「久し振りに見たなその反応」


 なんだか安心してしまった。

 もういいや。気にしても仕方ない。そもそも《火炎》とかあるじゃん。


「なーに集まってゴチャゴチャやってんだ。橘まで」

「天条の飛行魔法の呼び名を決めていたところだ。名前があれば少しは扱いやすくなるだろうと思ってな」

「ハッ、それでまたオマエが《果なき大空そらへ》とかなんとか言ったのかよ」


「――ぶふっ!!」


 なんだそれ。なんだそれ。

 あれだ。佐藤とかが喜びそうなやつだ。


「だ、駄目だよぉ桐葉くん、笑っちゃ……ふふふっ!」

「わ、分かってます……ぷぷ……し、師匠? 何食べたらそんなアイデア――」

「ハァ? 俺が言うわけねぇだろ。橘のアイデアだぞこれ」


 ……え?


「あの、師匠? それってどういう……」

「どうもこうもあるか。昔こいつが作ろうとしたときに真っ先にアイデアがそれってだけだ」


 ……マジか。マジですか。


 ちょっと信じられない。……本当に?


「……黙れ」

「結局長いってんで、結局別案になったんだよ。今じゃすっかり橘の黒歴史だ」

「黙れ……!」

「かなり考えたみてぇだから笑ってるとそのうちコイツ――」


「黙れと言っているだろうこの馬鹿者がァアアア!!!」


 途端に、キレた。


「ぴっ……!?」

「逃げるな神堂ォ! 貴様今日という今日は徹底的に叩きのめしてくれる!」

「やってみろよ。その前にコイツの相手でもしてやがれ、ってぇ……のっ!」

「えっ、ちょっ…………はい? はい!!?」


 あれ、なんで橘さんが目の前に? え? ……えっ!?


「まずは貴様か!!」

「違いますけど!?」

「だが笑っていただろう貴様も!」

「いやあれは誤解……ちょっ、待った、ごめ、ごめんなさい俺が悪かったです――――っ!」


 ほら出てこい《飛翼》! 名前つけたろ《飛翼》!


 じゃないとヤバイんだって! 冗談抜きで焼き鳥にされるぞこれ!



(To Be Continued...)


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